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ジェームス・ボンドと英露因縁の歴史

本物の初代ジェームス・ボンド

随分昔のことだが、ジェームス・ボンドの『007』どこに由来するかについて調べたことがある。これは如何にも英らしい、歴史の長い話しだった。結論から述べると、16世紀にエリザベス1世の下で活躍していたジョン・ディー(1527∼1608年)という人物が、女王向けの機密情報を『007』と署名していたとのこと。機密情報というのは、外交関連の内容で当時 西、仏との植民地支配の競争を繰り広げていた英にとってそれなりに重要なものだった。なぜ『007』なのかは良くわからないが、一説によると『00』は両目を表しており『7』は錬金術師であったディー氏のラッキーナンバーだったそうだ。何れにしてもこのジョン・ディーが英諜報機関の始まりだと言われる。

英帝国思想の父

機密情報の他に、ジョン・ディーがエリザベス1世に提供したのは新英の思想なのだ。
確かに、エリザベス1世が王座に就いたとき、英は世界の果にある欧州規模でも小さな国家に過ぎなかった。時の知識人の間で顔が広かったディー氏は、『英連邦の概要』をまとめ、そこでは英が直面している課題と解決策の提案について論じている。このインプットがやがてエリザベス1世の侵略的外交のきっかけとなっていると言われている。
ジョン・ディーについて調べているとき最も気になった点は、グスタフ・メイリンク作『西の窓の天使』にはディー氏とローマ帝国を祖先に持たない新英帝国に関する言及があり、この新英帝国の領土はアメリカ大陸を含む新英帝国は西半球からウラル山脈を含む東大陸(言い換えるお露)まで広がるとされている。ここで通称『グリーンランド』と言われている事土地がアトランティス帝国(エノキアン)の再生と考えられ、当時の英ではそれなりに知られていた。

 つまり、16世紀から既に現在のNATO(北大西洋条約機構)の設立に関する検討・議論が始まっていた。時代的に無理があるのかもしれないが、カロリング帝国から始まり、16世紀にも支持者が残っていたとされる大欧州(統一欧州)、および露帝国が(パーヴェル1世から始め)推進していた大ユーラシア思想への対抗としての位置づけなのではないかと考える。当初は、『グリーンランド』実現の手段として考えられたのは、現グリーンランド経由でのアメリカ大陸の急速な植民地化と露のイヴァン4世(雷帝)とエリザベス1世の結婚を通じての侵略なのだ。ジョン・ディーの勝手な妄想から始まっていると思われるかもしれないが、この思想が今でも生存し続けていることは否めない。

英露因縁の起源

東西思考のぶつかりも然ることながら、ジョン・ディーの強かさに感心する。
同氏は実の息子アーサー・ディー(露ではアルテーミイ・ディイと呼ばれる)を露の初代ロマノフ王族(ミハイル・ロマノフ)の医者としてお切り込むことに成功する。それどころか、ロマノフ族の期待の星とみられていたミハイル・スコピンーシュイスキー大将の毒殺に使われた毒を作ったのはほかならぬアーサー・ディーなのではないかと言う研究者もいる。

ロマノフ族には他にも医者によって毒殺される王族(アレクサンダー3世)もいた。更に興味深いのは、命を毒殺でとられたアレクサンダー3世が露帝国を率いていた時代に、露に英諜報機関の支部が設立される。しかもこの支部の主たる役割は、帝王の警備だった。その後、トロツキー(割と咋に)、フルシチョフ等も英(米)の諜報機関と密接な関係にいたことが言動や公開され始めている公開情報から見えてきている。露国内の裏切り者はさておき、英(米)諜報機関が歴的に常に露の数歩先を歩んでいたといえよう。

露の現防諜のトップ、パトルシェフ氏が2007年のインタビューで『エリザベス1世の時代から「目的は手段を正当化する」は、英諜報機関の基本スタンスはなのだ。カネ、賄賂、脅迫、免責・釈放が彼らの主な採用手口なのだ』と述べている辺りを見ても、世間一般からみて直接対立状態に無い様に見える今でも、露が英の諜報機関を強く意識していることがわかる。

終わりに:アングロサクソンと露の戦い

英帝国が形を変え、今や表部隊で鞭を振り回しているのは米で、やはりブレインの役割を担っているのは英のままだ。露のラブロフ外相が英米(加・濠等)を総称アングロサクソンといっていたのを聞いて、この話しを思い出した。実質的に世界制覇(資源の確保)を狙うアングロサクソン帝国の歴史を振り返ると、いつの時代も競合関係に立ちうる他の帝国を沈めてきたころが分かる(スペイン、ポルトガル、フランス等)。一度は露も倒し、ソ連崩壊までもっていったが露が30年程かけて立ち直っている。今後は、(比較的豊かな生活を送っている人口比率が高く、消費規模も大きい)欧州を短期間で沈め(対露制裁の影響から最も傷んでいるのは欧州なのではないか?)、その次露を狙う筈だが今の動きを見るとかなり焦っている様にも見える。この焦りがアングロサクソンにどんな影響を齎すのか、近い将来見えてくるのではないかと思っている。

今日はここまで。

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