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経営指標の定義(2)

前回の投稿では、ある企業様とのミーティングでテーマになった、バランスト・スコアカード(Balanced Scorecard, BSC)を話題にしました。その際に意見交換・確認したポイント4つのうち、ひとつが「1.売上は最終的な結果と考える。」であることを取り上げました。今日はその続きです。
https://note.com/fujimotomasao/n/n30d519485d42

2.自社で今必要な指標は他社とは違う。

ふたつめは、自社にとって最適な指標は他社と同じとは限らない点です。自社には自社を取り巻く環境があり、厳密には全く同じ環境は2つ存在しません。自社にしかないわけです。業界他社や一般論として設定されている経営指標が自社に合っていることもあれば、合っていないこともあります。前回取り上げた企業様のように、自社なりに最適な指標が何かを検討し定義していくことこそが、経営戦略・計画と言えます。

また、最適な指標も変わりうるものです。先日のnote「有力企業の決算情報に見る経営改革」で、トヨタグループが東日本大震災をきっかけに在庫マネジメントの方針を変えたことを取り上げました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n1ca050a49f99

つまりは、追うべき指標が以前は在庫ゼロであったのが、今では一定の在庫数量に変わっているということです。今最適と思われる指標も、環境変化に伴って変わることが前提で捉えておく必要があります。そして、その環境変化が起こっていないかどうかを検証することも、経営戦略・計画と言えるでしょう。

3.適切な指標は部門によって異なる。

以前のnoteで、ある工場の例を取り上げました。生産性を重視し、1人当たりの付加価値額として「(売上高-売上原価)/従業員数」をラインごとに指標化し評価にも結び付けることをしていました。その結果、新規案件の試作品や少量注文などの依頼を各ラインのリーダーが嫌がるなどの逆効果が起こったという話でした。
https://note.com/fujimotomasao/n/n5f39ba5fbf87

新規案件の試作品や少量注文は、対応するのに手間がかかる一方でたいして売上が稼げないため、目標指標とされる1人当たりの付加価値額が下がるからです。その結果評価が下がるならやるだけ損、という認知となって、敬遠されるようになったわけです。これでは、新規案件に挑戦していくという会社の経営方針と逆の圧力を従業員に与えてしまうことになります。

全社レベルで達成したい財務目標があったとして、それが等しく全部門に当てはまるとは限りません。その部門に合わない指標を評価と絡ませると逆効果になるわけです。

例えば、既存事業を安定した既存顧客に届けることが主な役割のA部門は、業務プロセスでイノベーションを起こしてもらうことを目標にし、全社レベル以上の生産性を実現してもらう。事業も顧客も新規のB部門には生産性は当面度外視してもらい、新規事業の上市やどれだけメディアで話題にできるかを目標として指標化する。このようなイメージで、全社単位の目標指標を分解・翻訳し、部門ごとに合ったものを設定していくことが望まれます。

4.完璧を目指し過ぎない。

このような、経営指標に基づくマネジメントをこれまで本格的に取り組んでこなかった組織が初めて導入する場合には、とかく警戒し検討に時間がかかることがありがちです。「この設定値で正確だろうか」「この指標で本当にいいのだろうか」などです。

確かに、既にみてきた1.~3.のポイントのように本質を押さえた上で設定することが大切で、しっかり検討する必要があります。一方で、どこまで考えても未来を完ぺきに予想することもできなければ、完ぺきな指標を設定することもできません。トヨタグループでさえ、在庫管理の指標が適切でなかったとして修正を加えているほどです。

完ぺきな指標を設定するのは無理があるという前提で、考え方とおおよそのターゲットとして合っていそうだと判断されれば実践に移し、毎期・期中のPDCAの中で見直しをかけていく、という向き合い方が妥当でしょう。

以上みてきた4つのポイントは、各組織で参考になる視点だと思います。

<まとめ>
自社流の追うべき指標を見出して実践し、PDCAを回しながら見直す。


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