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環境設定が生産性に与える影響

2月23日の日経新聞で、「職場から考える創造性(6) 最適環境を選択できるオフィス」というタイトルの記事が掲載されました。同記事を一部抜粋してみます。

~~働き方改革が叫ばれる中、働く場所であるオフィスも様変わりしつつあります。そのコンセプトの一つが「ABW」(Activity-Based Working)です。これは、活動内容に合わせて最適な環境を自由に選択できるオフィス形態です。集中したいときは集中ブース、少人数のチームでカジュアルに話をしたい時はカフェ・スペース、大人数を相手にプレゼンをする際は大会議室、というように、オフィス内に多様な空間を用意し、多様な働き方を可能にする仕組みです。

このABWの位置付けを明確にするため、オフィス形態を席の自由度と選択度の2軸で分類してみましょう。自由度は、固定席をやめ自由席化している程度、選択度は、多様な環境から適切なものを選んで仕事ができている程度です。

筆者らは、これらのオフィス形態とクリエイティビティの関係を探るため、ビジネスパーソン3000人を対象に調査しました。その結果、ABWと固定席型ABWでクリエイティビティが高い傾向がありました。従来型の固定席も、2つのABWにはやや劣るものの、遜色ないレベルでした。一方、単純フリーアドレスはこれら3つと比べかなり低くなりました。

クリエイティビティは準備→孵化(ふか)→閃(ひらめ)き→検証という段階を経て発揮され、段階によって「わいがや」が必要な時も、静かな環境が必要な時もあります。ABWは段階に応じて場所を選べますが、単純フリーアドレスではそうもいきません。

固定席を単に自由席化するのは危険かもしれません。仕事内容に適した空間を選べる選択肢を多く用意することが重要です。~~

上記はクリエイティビティのテーマに特化した検証のようですが、私たちは作業によって生産性の上がる環境、下がる環境があることは、これまでの経験から想像がつきます。上記検証によると、単純フリーアドレスはクリエイティビティを促す観点からは生産性マイナスとありますが、アイデアが煮詰まった後の企画書をまとめる作業、機械的な作業などであれば、また違った結果になるかもしれません。

ハードによる環境設定も、オフィスレイアウトのように物理的に有形のものと、無形なものがあります。例えば、先日お話をお聞きした企業様では、組織図を変更して生産性が上がったというお話でした。以前は、本部制を採用し、本部長以下部長・課長・・・といち社員まで6階層ほどありました。現在は、全部長を社長直下とし4階層まで減らしました。社長の最終決裁までのスピードを速め、報連相も直接社長まで届く形に改めたわけです。

社長個人の負担が増えるデメリットはありますが、組織全体の意志決定力・機動力の高まり、これまではなかなか社長に届けにくかった話が届きやすくなったことのメリットのほうが大きく、今のところは新しい形のほうがよいという結論だそうです。社長のみならず、全階層の社員が同じことを言っていますので、少なくとも同社様の例に限るとおそらくそうなのでしょう。

日本は他国のビジネスパーソンに比べて、テレワークで生産性が上がったという回答比率が低く、下がったという回答比率が高いことが、よく言われています。例えば、レノボの2020年世界各国調査では、「テレワークでは、オフィス勤務時よりも生産性が下がる」と回答した割合が、他の主要国がすべて10%台(米国11%、ドイツ11%、中国16%、インド6%など)なのに対して、日本だけが40%とずば抜けて高くなっています。

検証していないため憶測にすぎませんが、この要因として環境設定の面からは主に2つ考えられるのではないかと思います。ひとつは、住居環境という有形の要素の違いです。日本の家屋は一般的に狭いことで知られています。また、家事代行サービスなど家族外の人を雇って家事を任せる習慣も一般的ではありません。その結果、テレワーク用の空間の広さや5Sなどの環境づくりで他国より劣っている可能性が高いのではないかと想像します。レイアウトなどの空間づくりが生産性に与える影響が小さくないことは、上記記事の示唆するところです。

もうひとつは、組織のルールや上司・同僚とのコミュニケーションの取り方など無形の要素です。「同じ現場に居合わせて同じものを見て、起こった事象にその場で対応を考えることで成立するマネジメント」から、その会社なりのテレワーク用の有効な環境づくりに置き換えることができていないのではないかと想像します。このあたりも、他国に比べて出遅れているのかもしれません。

このテーマについて、個人でできる工夫もいくつかあると思います。例えば、在宅での仕事がよりやりやすい机や椅子に変える、自分のいる部署内でメンバー間のコミュニケーションルールを見直す、などです。椅子のひとつも買いかえれば費用がかかりますが、それで生産性が変わるなら安い投資だとも言えます。私も、これまでは自宅で子供部屋を使ってオンライン会議などに参加していましたが、あまりよくない環境だと実感しています。今年は大きく環境を作り替える計画ですので、備品含めて妥協せず投資しようと思います。

<まとめ>
生産性に影響する、有形無形の環境要素を見直す。


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