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社員の6割超が管理職になることに前向き

今週、日経新聞で「ワクワク働いていますか」というタイトルの連載がありました。働きがいを追求する個人と企業の取り組みを取り上げたものです。前回の投稿に引き続き、今回も同記事に関連して考えてみます。

同連載から一部抜粋してみます。以下は、2月5日の「ワクワク働いていますか1 事業撤退、それでも表彰」からです。

「新たに学ばなくてはいけないことは多いが、やりたい仕事ができて充実している」。富士通の社員、亀井美志(28)は23年からデータアナリストとして働く。自らプログラムを組んで社内に眠る無数の業務実績データを収集・分析し、業務改善策を練る。以前の仕事は営業サポートで職務内容はがらりと変わった。

活用したのは富士通が20年度に人事異動のど真ん中に置いたジョブポスティング(社内公募)制度だ。組織の論理ではなく、個人のやりがいを優先する。人手がほしい部署は求人情報を社内に公開し、その仕事に興味のある社員が手を挙げる。

国内グループ社員約8万人のうち22年度までに延べ約2万人が応募し、約7500人が異動した。魅力のない部署は人が去るばかりで補填できない。各リーダーはメンバーのやりがい向上に知恵を絞り、それが会社全体の働きがいを高める。

住友電設は21年4月に定年を65歳に引き上げ、処遇も見直した。従来も60歳定年後も就業可能だったが、60歳で給与は約30%減額になり役職も退いた。新制度では一律減額はなく、50代までと同様に昇進・昇給もある。

渡邊武志(61)は今も部次長として約90人の組織を束ねる。長年工場プラントなどの現場で管理・監督を務めた。その経験を生かして全国のプロジェクトに目配りし、売り上げ・利益の目標達成責任などを負う。「会社に必要とされている実感があり、モチベーション高く働けている」。新制度下で60歳時点の報酬は前年比10%増えた。

以下は、2月7日の「「私も管理職になりたい」 カルビー社員、6割が前向き ワクワク働いていますか(3)」からです。

2023年末、東京駅地下のカルビーのアンテナショップ「カルビープラス」。本部長の北村恵美子は帰省客らでごった返す店で目を光らせていた。繁忙期のメニューの絞り込み、動線変更――。部下である店長、須藤弓子を中心に店舗改革に取り組んできた。名物の揚げたてのポテトスナックの提供時間を従来の4分の1以下に縮めるなど、成果は着実に表れている。

北村の働きがいは150人の部下の成長だ。「人材が育てばアイデアの幅が広がり、顧客が満足できるサービスを生み出せる」。北村はやりたい仕事や働き方など部下の思いをこまめに聞き取ることを欠かさない。

カルビーでは社員の6割超が管理職になることに前向きだ。19年に始めた中堅女性社員向けのリーダー育成研修では、北村のようなやる気にあふれる管理職が仕事の醍醐味を伝える。家庭と仕事の両立に向けた手厚い支援策も社員の背中を押す。入社5年目の永吉真衣は「自分もマーケティングの管理職になって、先輩たちのようにパワフルに働きたい」と力を込める。

「部下の納得感が大事なので、仕事量が妥当なのか素直に聞いてみては」。23年末、日本たばこ産業(JT)子会社で働く宮大史は、繁忙期に部下の仕事の負荷が重くなってしまう悩みを「社外メンター」に打ち明けると、こう助言を受けた。

管理職は相談できる相手が限られ、孤独になりがちだ。社内関係者だと本音で話せないこともある。そこでJTは23年春から、新任の管理職が他社の管理職経験者に相談できるようにした。宮は「外部の人と話して気持ちが楽になった。部下と一緒に目標を達成したい」と話す。

部下の勤務管理や評価、上層部への報告、担当事業の成長――。管理職は仕事量が多く、日々会議に追われ、残業は当たり前といったイメージが強い。一般社員約1100人を対象にした日本能率協会マネジメントセンターの調査(23年4月)では、7割以上が「管理職になりたくない」と答えている。

これらの取り組み事例から、改めて3つのことを考えました。ひとつは、一人ひとりの多様性・主体性を活かすということです。

前提として、一人ひとりがどのような特徴を持っているのか、認識・把握することが必要です。それは、本人の側と企業の側、双方に言えることです。

本人の側としては、能動的なキャリア自律が必要です。従来通り企業側に人材育成やキャリア開発のサポートを期待するとしても、どのようなキャリアの進み方ができるのかの可能性・選択肢が多様になりました。自分は何者でどうなっていきたいのか、そのために何に取り組みたいのかを、ますます能動的に考える必要があります。記事中にあるように、自分発で公募ポストや社外メンターを使っていくような姿勢が大切だと思います。

企業の側としても、先入観で相手を見ずに、一人ひとりを見ることです。「この世代は~」「うちの会社の社員は~」などの先入観で見ていると、各人材の職業観、スキル、マインド、強み、弱みなどの多様性は見えてきません。

例えば、一般的には管理職になりたいと思う人が減っていると言われます。管理職になりたくないと回答する人が7割以上という上記にある調査結果は、一般的に言われている傾向として私たちの肌感覚に合っていると思います。社員の6割超が管理職になることに前向きというカルビーはこれに真っ向から反する現状で、意外感と驚きをもってこの結果を見る人も多いのではないでしょうか。

「管理職」と一括りにしているだけでは、「得体の知れない大変そうなもの」と映るだけかもしれません。管理職に期待されている役割や成果は何かの定義、会社が提供できるサポートと自助努力に委ねることの定義、職務を明確にすることなどの取り組みで、興味とやりがいを見出す人もいることを、カルビーの例は示唆していると思います。

いわゆるジョブ型と言われる評価・賃金制度などにしていくかどうかはともかく、職務の明確化と組織としてできることのサポートは、どの会社にも共通して求められることだと考えられます。

先日の投稿「シニア層の人事制度を考える」では、シニア人材の積極的な活用のために人事制度改定を行うことの必要性を取り上げました。上記記事からは、改めてそのことも感じます。

2つ目は、幹部人材が輝くことです。

連載のタイトルは「ワクワク働いていますか」です。全社員とはいかないかもしれませんが、少なくとも大半の人材が生き生きと働いていないような会社では、新しく入ってくる人材が生き生き働きこうとはしないはずです。

時々、「部下が仕事でのステップアップにあまり意欲的でない。どうすれば意欲が持てるようになるだろうか」という質問を受けることがあります。私なりの答えは、「最も効くのは、上長であるあなたが生き生きと働くことではないか」です。上記記事で取り上げられた方は、すべてその点が共通していると思います。

3つ目は、まず成果を上げることです。
これは、若手人材にとって特に当てはまる視点です。

自分なりの思い描く仕事のイメージや、希望する職務があったとして、いきなりその機会が得られるとは限りません。会社は、その会社なりの商品・サービスをお客さまに提供し喜んでいただく、それも組織として行うことを営むための場です。チャレンジや新たな試みに臨むとしても、その大原則を度外視してまでジョブアサインをすることはできません。

上記記事で冒頭の社員の方も、営業サポートの職務で成果を上げたからこそ、やりたい仕事であるデータアナリストの職務に就くことができたという面があるはずだと想像します。

「目の前のお客さま(あるいは社内顧客)の困りごとが何かを考え抜き、それに応える」というエッセンスはどの職務にも共通しています。個人として長期的なキャリアビジョンを描いてそれを目指すことも大切ながら、「今、ここ」の職務に集中し、成果を上げることもそこへの道のりの一部だと認識するのがよいと考えます。

<まとめ>
「ワクワク働いていますか」の問いに対しては、個人・組織双方にできることの余地がいろいろある。

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