先日、ある経営者様と意見交換する機会がありました。同経営者様は、クリエイターであり、自社の経営もしている方です。いろいろお聞きしたことの中で、「自社では、ブリコラージュをキーワードとして大切にしながら活動することを目指している」というお話が印象的でした。
「ブリコラージュ」の言葉について、検索すると「寄せ集めて自分で作ること」「その場の型にとらわれずに自由な形で作り上げること」などという説明が出てきます。
書籍「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50 」(山口 周 氏著)では、ブリコラージュについて次のように説明されています。(一部抜粋)
そして、エジソンは蓄音機を発明するにあたって、今日の音楽産業のようなビジネスモデルを構想していたわけではないこと。飛行機もまた、当初想定された用途とは全く異なる領域で花開いたことなどの例を挙げながら、次のように説明を続けています。
「なんかある気がする」というグレーゾーンの直感がどうやったら身につくのかは難しいところですが、、、ひとつ言えることとして、事業活動において会社が「具体的に設定された直近の目標や担当業務の達成には直結しないような遠回りの活動も、それが会社の理念に合致している限り尊重し推奨する」という考え方を組織内で伝えること、実際にそれを促す仕組みをつくることが、大切ではないかと考えます。
よく例として使われることのある、3Mの『15%カルチャー』と言われるルール(社員に勤務時間の15%を、チームを作ったり、自社の設備を使ったりして、自分自身のプロジェクトのために自由に使うように奨励)も、ブリコラージュの概念を大切にしていることの表れと言うことができるかもしれません。この取り組みをきっかけに、貼ってはがせる不思議な特性をもった接着剤が生まれて、ポストイットとして商品化されたと言われています。
同経営者様は、もともとブリコラージュの考え方で、新しい商品開発や事業を展開することを大切にされてきた方ですが、新たに依頼したマーケティングのアドバイザーもブリコラージュの考え方を推奨する方らしく、その影響も受けているというお話でした。
2月5日の日経新聞で「ワクワク働いていますか1 事業撤退、それでも表彰」というタイトルの記事が掲載されました。同記事から一部抜粋してみます。このフェイルフォワード賞の仕組みも、ブリコラージュを促す同社なりのやり方と捉えることができるのではないでしょうか。
用途市場を明確化しすぎたり投資対効果の成果の予測を強調しすぎたりすると、イノベーションが起こりにくくなる一方で、用途市場を不明確にしたままの開発は成果に結びつかないまま野放図になりかねない。このジレンマにどう対応するかに決まった解答はなく、悩ましい問いだと思います。ビジネスモデルなど、自社の置かれた環境によっても、解は変わってきます。
そのうえで、ブリコラージュという概念が大切だということ、自社に合った自社なりの良いやり方を追求する視点を、日常の活動に取り入れたほうがよいというのは言えると思います。
<まとめ>
「結果的にイノベーションになる」こともある。