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長期経営計画のすすめ Ⅱ.企業戦略_3.コア能力を再確認する



1. コア能力とは何か?

「わが社のコア能力(コア・コンピタンス)は●●です!」と明確に表現できる企業は非常に少ないと思われます。私はコア能力を「複数の事業に適応できる企業としての能力であり、他社との競争優位をもたらす可能性が高い能力」と定義しています。競争優位をもたらすということは、つまり競合他社が模倣しようとしても、簡単には模倣出来ない能力ということになります。

企業が保有するコア能力は様々あると思いますが、私は長期経営計画を策定する上で、企業戦略としてのコア能力は大きく4種類あると考えます。


2. 4種類のコア能力

1種類目のコア能力は技術力です。技術力という表現は幅が広いので、その中において3つに分けて考えます。1つ目は製造技術力です。トヨタ自動車をはじめ日本を代表する製造業の企業が保有するコア能力です。2つ目はIT技術力です。マイクロソフトやグーグルなどのアメリカを代表する情報通信業の企業が保有するコア能力です。3つ目はデザイン技術力です。アップルやソニーなどが代表的な企業として挙げられます。先進国を中心に社会が豊かになり、物が溢れ、価値観が多様化する中で、製造技術力としてのコア能力を保有しながらも、IT技術力やデザイン技術力をコア能力として追加していくことが求められています。

2種類目はブランド力です。製品やサービスの品質と同様、もしくはそれ以上の価値として顧客はブランドを求めることがあります。「その企業の製品を使っている自分がかっこいい」とか、「この企業のビジョンに共感するから、そのサービスを使う」など、企業や製品・サービスが顧客に与える価値やイメージがブランドです。品質の良い製品を長く供給し続ければ、自ずとブランド力が高まるというものでもなく、企業が実現したい未来や目指す世界観を主体的に創り上げ発信してていくことにより、コア能力として高まっていきます。

3種類目はグローバル展開力です。ターゲットとする顧客数は多ければ多いほど、事業をスケールさせことが可能になります。グローバルに展開するには、各国の言語や商慣習や法律、生活スタイルや価値観、文化や宗教など様々なテーマに対処することが必要となります。自国でしか事業展開していない企業にとってグローバル展開は大きなハードルであり、世界の多くの国々での事業展開の知見を豊富に保有していることはコア能力となります。

4種類目は事業開発力です。企業は外部環境の変化に対応し続けることが求められます。製品やサービスが衰退し、主力事業が撤退に追い込まれる前に、新たな事業を開発していかなければいけません。事業開発にはマーケティングや製造、販売や物流など一連の様々な取り組みに対応する能力が求められます。また、事業開発そのものは頻度が高い取り組みで無いために個人に依存することが多く、事業開発の知見が蓄積されず、失敗を繰り返す企業は多くあります。事業開発力を形式知として蓄積し、再現性を高めることは重要であり、コア能力となります。


3. 再確認と方向性

このパートでは「自社のコア能力は何なのか?」について、前述の内容を参考にしながら再確認してみてください。繰り返しになりますが、「他社との競争優位をもたらし、模倣されにくい能力」が、明確にある企業は少ないと思われます。また「競合他社に莫大な資金があれば、模倣され優位でなくなる」とも、考えられると思います。しかし他社がそうしない、そうできない理由があることも事実です。よって、ここでは今、自社が存続している理由としてのコア能力を挙げてみてください。そうすると、多くの企業においては主力事業を支えているコア能力が明らかになってくると思われますし、そのコア能力を更に高めていくという方向性が見えてくるでしょう。

更にこの後、長期経営計画を策定していく中で、実現したい未来が可視化され、それを叶える事業構成を創り上げていくには、新たなコア能力が求められるでしょう。ただし、その能力の多くは0から作るものではなく、今は競争優位をもたらすような能力では無いけれど、今後はその能力に磨きをかけコア能力にしていくという方向性になっていくでしょう。

自社がこれまで存続してきたことには必ず理由があり、その理由の中からコア能力を再確認できるはずです。そして、それはこれから策定する長期経営計画の実現にとって不可欠になることに間違いありません。


今回は以上となります。次回は「4.メガトレンドを調査する」について書くつもりです。

【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める 
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略
1. MVVを振り返る         
2. 事業構成を分析する
3.コア能力を再認識する                 ←今回

4. メガトレンドを調査する     ←次回
5.全社業績を分析する
6. 今後のMVVを決める
7. 企業ドメインを決める
8. 目指す事業ポートフォリオを決める
9. 成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11. 一次業績計画を策定する
12. 一次投資枠を設定する
13. 全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15. 企業戦略を事業戦略に展開する
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1. 過去の事業業績を分析する
2. 現在の製品ポートフォリオを可視化する
3. 外部環境を分析する
4. 企業戦略を理解する
5. ミッション・バリューの見直しを検討する
6. 事業ドメインを決める
7. 目指す製品ポートフォリオを決める
8. 成長戦略を決める
9. 売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column 経営計画の先行研究

Ⅳ 計画完成
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
Column 社員がワクワクする長期経営計画


最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。


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