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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第13話

 年末年始に何の予定もなくなったので、例年どおり帰省することにした。荷造りをしているとコートのポケットからジロに渡す予定だったクリスマスプレゼントが出てきて、クローゼットの奥に放りこんだ。
 
 図書館も年末年始は閉館なので、亜紀さんはいつもの休日と同じように散歩して本屋巡りをして、借り貯めた本を読んで過ごしている。絶対に帰省というものをしないので、私がいないあいだは毎年一人でうちにいるのだと思う。亜紀さんは年末年始が嫌いだった。私も働くようになってその理由がわかった。私たちにはボーナスもないし、時給で生きている人間は年末年始で五、六日休めば手取りが何万も減ってしまう。一時的に干されているようなものだ。人によっては命にかかわる状況に陥る。亜紀さんのことだから食事を削って収入減をカバーしているに違いなく、いつも世間が正月太りで悩む時期に一人だけますます痩せていた。

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2,039字

現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。 (全20回連載予定)

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