建築の(ちょっとずれた)面白い本を紹介してみる

最近忙殺されていて思考が硬くなり気味です.ということで,変なことに思いを巡らせたいなと思いまして,キーボードを叩いてみている.

世の中には変わった本が山ほどありますが,例に漏れず建築界にも変わった本が山のようにあります.僕が読んだ建築の中でちょっと変わっているな〜,と思った本を簡単に紹介してみようと思います.

という訳で最初はこの本です.


『グッドバイ・ポストモダン』隈研吾

今や,日本人なら誰でも知っているであろう建築家・隈研吾氏が著者のこの本.1989年出版です.アメリカから帰国してきて間もない隈氏が書いた本書が何故(ちょっとずれて)面白いのか紹介していきます.


いきなり始まりが村上春樹風

僕はアメリカ・コロンビア大学の客員研究員、とはいったもののこの役職は何もする必要がないので、僕は仕方なく、今会いたいと思っている建築家に会いにいった。そうすると、バラバラに見えていたあらゆる事件が、建築がひとつのカタマリに見えてきた。僕はさしあたり、それを「80年代的なもの」と呼ぼうと思っている。これが明確に見えるようになったのは1987年10月19日にニューヨークの株価が大暴落した後で、80年代は10年続かずに終わってしまった。こんな怪しげな時代が唐突に終わってしまうのも、考えてみれば当然かもしれない。建築は芸術かもしれないが、富とも名声とも深く関わっている。80 年代の主役が富と名声だったならば、建築もまた80年代の主役であったと言える。とりわけ僕が知りたかったのは確かなただ一つの事実として、いつの時代の建築家にもまして、時代に翻弄され時代の主役であった資本に翻弄された彼ら建築家が何を考え80年代を過ごしたか、何を得て、何を失ったのか、これから何をすべきことがあるのかということだった。


僕は仕方なく、今会いたいと思っている建築家に会いにいった。

まさかの「やれやれ」系主人公...!

そして,客員研究員なのにすることがないとはなんぞや.知りたいことの真面目さとは裏腹に文章とのテンションがアンバランスすぎる...


「仕方なく会いに行った」と言って会いに行くのがゲーリーとか

第 1 章 大いなる世代
マイケル・グレイブス - ブロンズの胸像の部屋
ロバート・スターン - ゴールデン・アワー・アーキテクト
ピーター・アイゼンマン - 僕はセンターをめざす
フランク・ゲーリー - 海の家のオッサン
第 2 章 時代の申し子
KPF/ ウィリアム・ペターゼン - 笑顔と体力
ヘルムート・ヤーン - 黒と赤
アーキテクトニカ / ベルナルド・フォート・ブレシア - マイアミ・バイス
イアン・シュレーガー - ヤッピーはお客様
モルフォシス / マイケル・ロトンディ - 煮つまらない都市
第 3 章 神様、お電話ください
シーザー・ペリ - 南米の距離
フィリップ・ジョンソン - 神様は軽い

で,仕方なく誰に会いに行ったかと思えばこのメンツ...

ゲーリーは言わずもがな,今や世界を代表するスターアーキテクトです.あろうことかそんな人の節の副題が「海の家のオッサン」.攻めぎみじゃん....

シーザー・ペリもあべのハルカスの設計などに関わった組織事務所を創設者である大御所の建築家.KPFはアメリカを代表する大規模組織設計事務所,アイゼンマンやフィリップ・ジョンソンも建築界では言わずと知れた有名人です.

そんな錚々たる面々にこの緩いサブタイトル...笑


時代とは不思議なもの

こんな面々に臆面もなくインタビューに行って,こんな内容で出版できたのも80年代の環境が成せる技だったのかなとも思ったりします.

「富と名声」の80年代。かつてのベビーブーマーたちはヤッピーと名前を変えて、ロフトに住み、BMWを運転し、パスタとキッシュを常食にし、アキタケンを飼っている。アメリカのベビブーマーは日本よりずっとたくさんいるのである。なぜならアメリカには2度戦争があったから。第二次世界大戦と朝鮮戦争。1946年生まれから1964年生まれまでがヤッピーだ。おかげで、全共闘世代のベビーブーマー対柔弱で世俗的なフィフティーズという、日本的対立の構図もない。みんなが 80年代には一様に柔弱で世俗的になった。
若くてハンサムな建築家はヤッピーの憧れである。建築と不動産は80年代最高のビジネスで、建築家とディベロッパーは80年代のロックスターと呼ばれる。彼らは80年代のパラダイム「富と名声」の最も近くにいる。スター・アーキテクツになるのは少しも難しいことではない。

その時代の空気感をそのままに追体験することはできないけど,文章のリズムから匂いを嗅ぎとることはできるかもしれないと思わせる本です.


隈氏は多筆でありながら,時代の空気を敏感に嗅ぎ取り言葉にするのがとてつもなく上手い人です.

最近でも,隈氏が手がけた歌舞伎座改修に合わせて書かれた論文のタイトルが「モダニズムからヤンキーへ : アゲアゲアーバニズムとしての歌舞伎座」だったり,キャッチーなワードをつくりつつ,時代との接続を巧みになしえてしまう人です.そんな隈氏の実践は80年代から行われてきたんだなぁと考えると本書はとても重要な価値を持つ1冊であると同時に今の時代に読むからこそとても絶妙で(ちょっとずれた)面白さを持つ本になっているのではないかなぁと思います.

皆様もどこかで見かけたらぜひ一度読んでみてください!



乱文となり,恐縮です!

第2回は建築計画学者が書いた夢日記の空間分析の本をご紹介しようと思います!


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