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デザインは思ったよりも影響力が強い─『悲劇的なデザイン』


書籍詳細


人が触れるモノやサービスを作る全デザイナー、特に美術教育を受けた者に捧ぐ。新時代のデザイナーのためのリスクマネジメント・ガイドブック。今、デザインは社会において大きなインパクトをもった。そして明らかになってきたのは、デザインには物事を革新する良い力だけでなく、人を「殺し(第1章/第2章)」、「怒らせ(第3章)」、「悲しませ(第4章)」、「疎外感を与える(第5章)」力がある。命を奪いかねないインターフェイス、怒りをあおる失礼なテクノロジー、思いがけず悲しみを呼ぶ仕様、多様性や公正さの欠如により人を排除するプロダクト……。過ちは、どうすれば避けられるのか。本書では、実際に起こったデザインによる悲劇と悪影響を紹介し、そこから大切な教訓を引き出していく。さらにこうした事態を防ぐための具体的な方法、デザインの担う責任が大きい製品開発にかかわる専門家のインタビュー、デザインで社会をより良くする取り組みを始めている例を挙げる。


『悲劇的なデザイン』読了.
事例集的な部分は強かったが,示唆的である本には違いない.
内容については深津氏の書評がまとまっている.

デザインは図表やプロダクトをかっこよくするだけのものだと思われがちな部分があるが,実際はより本質的な部分に価値をもたらす.しかしそれを逆から考えるとデザインはひどい影響をもたらす場合もあるということだ.
例えば,自治体のHPは大概どこに必要な情報があるか分かりにくいUIになっている.仕事柄プロポーザルの情報を集めるのだが,どこにプロポーザルの情報が載っているかわからない...なんてことはざらにある(ましてやプロポーザルページがリンクエラーを起こしていることだってある!)これでは住民の大事な税金を使ってつくられる建築物に対して住民が公正な情報を得られないまま進められてしまう...なんてことも起きてしまうだろう.建築という一度建ててしまったら取り返しのつかないもので,そんなミスマッチが起きるなんて悲劇でしかない.

本書はそんなデザインの悪い側面がもたらす数々の悲劇を平易な語り口で紹介する.

私たちはそこからいかにデザインが大切で,デザイナーはいかにユーザーの気持ちを汲み取ることが必要かということを読み取ることができる.勉強になる1冊だった.


目次

序文
はじめに

第1章 イントロダクション
ジェニーを殺したインターフェイス
デザイナーの役割と責任
結論
この章のポイント

第2章 デザインは人を殺す
どうしようもないミスとどうしようもないユーザー
ケーススタディ1:セラック25
ケーススタディ2:ニューヨーク市のフェリー事故
ケーススタディ3:フォード・ピント
ケーススタディ4:エールアンテール148便
モードにかわる別の仕組み
フォルトツリー分析
結論
この章のポイント

第3章 デザインは怒りをあおる
ユーザーの気持ちを考えなくてはならない理由
失礼なテクノロジーの特徴
ダークパターン
結論
この章のポイント

第4章 デザインは悲しみを呼ぶ
ユーザーの「Dribbble化」
意図せぬ残酷さ
自責の念と屈辱感
「パワーユーザー」向け機能
悪用の余地を残す
ユーザーを悲しませない方法
結論
この章のポイント

第5章 デザインは疎外感を与える
アクセシビリティ
ダイバーシティ,インクルーシブデザイン,すべての人のためのデザイン
インジャスティス
結論
この章のポイント

第6章 ツールとテクニック
データをできる限り集める
感情の把握の仕方を学ぶ
結論
この章のポイント

第7章 私たちにできること
誰にでもできること
デザイナーにできること

第8章 手本になる組織
身体に関わるもの
感情に関わるもの
インクルージョン
ジャスティス
あなたはどうする?

企業,プロダクト,リンク
URLs
Index
著者紹介

書籍詳細

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