写真の絵本は、『マドレーヌのメルシーブック』（訳は江國香織さんです）と名著『ふたりはともだち』です。

メルシーブックの方は、娘が小学校に入学した頃、本棚にひっそりと忍ばせた１冊です。先生やお友達との関わり方や女の子として身につけてほしいマナーや振る舞いなどについて、主人公のマドレーヌと一緒に学べるとても可愛らしい一冊です。娘がパン屋さんに並ぶバケットを欲しがるようになったのも、この本を読んでからです♪６年生になった今は、手に取ることはなくなった本ですが、時々、思い出したかのように読み返す姿を何度も目にしてきました。娘の学校生活にはぴったりだったのでは？と思っています。

カエルくん達の方は、２年生になった頃、これまた本棚に忍び込ませた１冊です。恥ずかしがり屋な娘に、はじめてのお友達ができた時に贈ることを決めました。もちろん、幼稚園や小学校でも《お友達》と呼べる子達はいました。ですが、それは親を介しての交流というか、仲良くなったきっかけが親同士の付き合いがあったから…という感じでした。決して、それが悪いということではありません。ただ、私を介さず、シャイな娘が自分から声を掛け、その関係を築き、『今日、お友達がね…』と話を聞かせてくれたことには、それまでとは違う深い感動があったことを覚えています。

その他にも、１０歳を記念して、女の子の身体の作りやちょっとした性教育に触れた本なども、ひっそりと本棚に忍ばせてきました。本が大好きな娘は、こちらが何も言わなくてもすぐに仲間入りした《新しい友達》に気付き、手に取って読んでいました。欲しいと言った本や自分で選んだ本ではない、《それ以外の本》が並ぶ本棚を楽しんでくれているように思います。私は忍ばせた本については、特にあれこれと言いません。もちろん、その時々によって、伝えたことがあるから本を選び、贈っているのですが、そこに余計な言葉はいらないな、と思っています。時に解説が邪魔をすることもありますからね。想いは全て、『本ちゃん、よろしくー！』と託します。母の想いが伝わっていたら、嬉しいな。

先日、バスを降り、こちら側へ歩いてくる娘を見つけました。おや？誰でしょう？女性の方と一緒にお喋りをしています。娘は交差点で、その方にお辞儀をした後、遠目に私を発見したのでしょう。少し足早に、こちらに向かってきました。『さっきの方は？』と私が聞くと『司書の先生だよ』との返事です。そうだったんだぁー！あの方が、司書のO先生だったのねー。内心、これは惜しいことをしたと思いました。何故なら、私はこの６年間、O先生の発行する《図書室だより》をとても楽しく拝読していたからです。月に一度発行されるお便りは、毎号、細部まで工夫されていて《本、そして子ども達への愛》が感じられます。きっとO先生が居て下さる図書室は、優しさに満ちた、居心地の良い場所なんだろうな～といつも想像していました。

『先生とどんなお話をしていたの？』『今読んでいる本についてだよ』多分、メロスのことでしょう。確か、メロスはもう読み終えて、今は太宰治の他の短編を読んでいるとも言っていたような…。でも、読み返したい所があるから、もう一度、メロスを読むと言っていたような…。いずれにしても、私よりずっと読書家の彼女は、先生やお友達と本の話で盛り上がっているようです。話し相手として、私では役不足…物足りのは確かなので、一緒に話せる人たちが居てくれる環境に、心から感謝しています。あんなに楽しそうな顔は家ではなかなか、見ることが出来ませんからね。

翌朝、アガサクリスティについて尋ねられた時には、ついにこんな日が来たんだなぁと感慨深いものがありました。『そして誰もいなくなった』はどんなストーリーなのか？ミステリーの女王と呼ばれた彼女はどんな人物だったのか？ドストエフスキーの『罪と罰』はどんな物語なのか？そんなことを話しながらのやや重い朝食となりました。＊無論、私にはこれらの質問にスラスラと答えるだけの知識がないので、こそっと調べを諦め、ガッツリ調べながらの朝食です…。ヘルプミー。

なんだか、こんな風に書くと、文学を語らう素敵な親子って思われる方も居るかもしれませんが、（勘違い？）少なくとも私はそれには該当しません。既に娘の読書量は私を悠に超えていますし、この先、私が追いつくことも、追い越すこともないでしょう…。本をお友達とし、そこから世代を超えて交流の機会を広げていく娘の姿を見て、頼もしくもあり、羨ましくもある私なのです。

娘は春から中学生です。さて、その頃にはどんな本を忍ばせようかと、今からワクワクと考えています。そんな時間もまた、本がくれる幸せです。

次回もどうぞ、お楽しみに。