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絵画の様式論

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#森山安英

絵画の様式論(六)

絵画の様式論(六)

「やるだけのことはやったのだ、留置場でそう思っただろう。ここまでやったのだからもう森山は自分が絵を描くことの免罪符を手にしたと言ってもよい」*1

美学校の前代表・今泉省彦は「集団蜘蛛」について回顧するなかで、裁判闘争に前後する森山安英の心情をこのように推し測った。この推察がどこまで真実を突いているのか、正確にはわからない。だが、森山の絵画を一瞥すれば、彼が今泉の言う「免罪符」を決して大上段に振り

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絵画の様式論(五)

絵画の様式論(五)

辰野登恵子の「様式」を近代の「アンラーニング(unlearning)」としてとらえうるとすれば、近代への徹底的な反逆の先で絵画を一から「ラーニング(learning)」してきたのが森山安英である。森山(1936- )と辰野(1950-2014)は世代も画風も思想もまったく異なるが、こと近代芸術をめぐる「ラーニング」と「アンラーニング」という観点においては、両者は明瞭な対照形を描き出す。

森山安英

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