菊畑茂久馬

国宝 一遍聖繪

《一遍聖繪》とは、時宗の宗祖、一遍上人(1239-1289)の行状を描いた鎌倉時代の絵巻。国内最古の絹本著色絵巻で、国宝に指定された名品である。今回の展覧会は、これを所蔵する時宗総本山清浄光寺の遊行寺宝物館が、その全十二巻を一般公開したもの。一巻の全長がおよそ10メートルだから、全巻を合わせると、およそ130メートル。それらが決して広いとは言えない会場に一挙に展示された。

「南無阿弥陀仏」。一遍

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九州派展──戦後の福岡で産声を上げた、奇跡の前衛集団。その歴史を再訪する

美術評論家の宮川淳(1933-1977)は、初の評論「アンフォルメル以後」(1963)において、いわゆる「アンフォルメル旋風」にあおられた当時の日本絵画の状況を、「様式概念としての現代」と「価値概念としての近代」の矛盾という論点から分析した。宮川によれば、アンフォルメルとは近代芸術におけるフォルムからマチエールへの価値転換という本質的な構造変化の現われであり、それゆえ本来的にはいまだ確立されていな

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絵画の様式論(五)

辰野登恵子の「様式」を近代の「アンラーニング(unlearning)」としてとらえうるとすれば、近代への徹底的な反逆の先で絵画を一から「ラーニング(learning)」してきたのが森山安英である。森山(1936- )と辰野(1950-2014)は世代も画風も思想もまったく異なるが、こと近代芸術をめぐる「ラーニング」と「アンラーニング」という観点においては、両者は明瞭な対照形を描き出す。

森山安英

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