わたしを離さないで

自らに課せられた宿命を静かに受け入れること。あるいは、無常の風に逆らうことなく、儚い諦念とともに理不尽な死を迎え入れること。沢木耕太郎が的確に指摘したように、本作は英米映画であるにもかかわらず、じつに日本的な印象を感じさせる映画である。

臓器移植やクローン技術といったテーマが物語に独特の緊張感を与えているが、登場人物の若者たちは不当な運命に抗うこともないまま、物語は淡々と進行する。その静かな佇まいは、一見するとあまりにも非人間的な身ぶりに見えなくもないが、しかし、キャリー・マリガン演じる主人公が好意を寄せる幼馴染の男を親友に横取りされるなど、甚だ人間臭いドラマがないわけではない。けれども、それにしても親友から男を奪い返すことはなく、ただひたすらじっと耐えるだけなのである。

抵抗や闘争、あるいは反逆の欠如。すべてを受容する寛容性と困難を耐え忍ぶ忍苦の精神。このような「日本的」とされがちな特質は、欧米の風土からすれば奇特な美しさに見えるのかもしれない。しかし、現在まさに原発の危機に襲われている当事者の視点から見ると、多少の苛立ちを覚えないでもない。不幸の要因を宿命に帰着させたところで、状況は少しも改善しないばかりか、むしろ決定的な破滅を招き寄せかねないことは明らかだからだ。

この映画の若者たちも運命に抗わないわけではない。ただし、一抹の希望があっけなく途絶えてしまうと、それ以上の抵抗を展開することはなく、ただ悲痛な絶叫を繰り返すだけなのだ。ほんとうに悲しいのは、抵抗の身ぶりや拒否の意思を自ら内側に封じ込めてしまうことである。これを「美しい」なんて言うな。

初出:「artscape」2011年05月01日号
会期:2011年3月26日
会場:Bunkamura ル・シネマ

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fukuzumiren

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