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過去を捨てた女達 プロローグ

 銀座の路地裏の雑居ビルの一階の画廊店の奥の階段を降りていくと未来人Barと書かれている看板があり、その扉を開けると、まるでそこは異空間が広がる小さなバーがある。

そこに通い詰める客は、過去を抱えた女性達がほとんど。夜な夜な背負った過去を捨てにやってくる。

その女性達の相手をするバーテンダーは、少し初老の男性、まるで宇宙人のような雰囲気を醸し出している。
「いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」
女性は、初めてらしく、戸惑いながら、カウンターに座った。
「何をお飲みになりますか?」
「何があるの?」
「何でもありますよ。お話する過去の思い出のお酒でも、新しいステージに、飲んだことがないお酒でも何でも」

「じゃあ、飲んだことないお酒を」「かしこまりました」バーテンダーは、様々なお酒を入れ、シェイカーに入れ、カクテルグラスに、ゆっくりと注いでいく。七色のようにも見え、透明にも見える、不思議なカクテルに見えた。
バーテンダーは、そのカクテルをその女性の前におき、
「未来人カクテルです」

その女性は、そのカクテルを少し口にすると、驚きの表情を見せた。

「美味しい!全く新しい味がする」
その女性は、その味に感動したのか、少し興奮ぎみに、過去の話しをし始めていく。

話しが終わると、カクテルを飲み切り、行きとは違う帰りの扉に案内され、帰っていく。

最初に来た時とは全く違う表情をみせ、その女性は去っていった。ここは、過去を話し、その過去を捨てにくる女性が通うバー。一つの過去を捨てる為には、その捨てたい過去をバーテンダーに話すと、一杯お酒が無料でサービスされる。お酒のセレクトは、自由である。もちろん、何度もくるお客様もいる。過去を捨てると、スッキリした表情になり、みんな未来人になっていくような感覚になっていく。

「いらっしゃいませ。今宵はどんな過去ですか?」

マスターが声をかけた女性は、白いワンピースに、真っ赤なハイヒールが一際目立った。
そして、肩まである黒い髪も印象的だ。
アジアンビューティーのような雰囲気があった。

さあ、彼女にはどんな過去があるのか。
聞き耳を立てようとしたら、バーテンダーに追い出されてしまった。ドアの外に追い出された黒猫は、仕方なく、階段の奥の隅に毛繕いをしながら、物語を想像しながら、眠りついていた。

次回
過去を捨てる女達 1
組織という枠から自由になる

https://note.com/fumi13riki20/n/n0759c9ca29ec

さあ、あなたも要らない過去を捨ててみませんか?

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