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「あしながおじさん」感想

 最近、寝る前に少しずつ『あしながおじさん』を読み進めていた。

 ジュディは学校生活や日常の中で手紙とともに成長していく。年が近いこともあって、自然と親近感が湧いてきた。だんだんジュディは私の友達のような存在になっていた。

 私の中で言葉にできなかった思いがある。それをジュディが言語化してくれたようだった。彼女の紡ぐ言葉は居心地が良かった。


「大学へ来た当初は自分がほかの人たちのような順当な少女時代を盗まれていたような気がして孤児院を憎んでいましたが、現在では少しもそんな気持はありません。それどころかまたとないすばらしい経験だったと思っています。世の中をかたわらから静かに眺めるのに好都合な位置を与えてもらったようなものです。」『あしながおじさん』J・ウェブスター 松本恵子 訳 新潮文庫 194頁

 大学へ来た当初、ジュディは孤児院を憎んでいたが、やがて「ジョン・グリア孤児院はすばらしい経験だった」と思うようになる。

「私は自分たちが幸福でいることを知らずにいる少女たちをたくさん知っています。ところが私は、自分の生涯の一秒一秒が幸福だということをはっきり意識しています。…私は不愉快なものは全て、興味ある経験とみなしていくつもりです」
194頁

 過去の経験があったから、今の自分の幸せに気づくことができた。ジュディは孤児院での経験に意味を見出したのだ。

「いつまでも過去のことを悔やんだり、未来を思いわずらったりしていないで、今この瞬間から最大限の喜びを捜し出すことです。」158頁

 自分の考え方次第で、どんな経験も幸せにつなげていくことができる。嫌な過去のことをいつまでも引きずるのではなく、そこから喜びを見出すことができれば、どんなことも意味があるものになる。


参考文献
『あしながおじさん』J・ウェブスター 松本恵子 訳 新潮文庫 194頁