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苦手だったプロ奢ラレヤーの印象が変わるまでの話

プロ奢ラレヤーとは、人にご飯を奢られて生計を立てている人のこと。
といっても、その人物はひとりだ。ふつうの労働をせず、過去3,000人もの男女に直接奢られながら生活し、SNSでも多くのフォロワーを獲得している謎の男。


最初はちょっと苦手な男だった。

彼を初めて知ったのは、林修先生が司会のテレビ番組だったと思う。橋下徹元大阪府知事が教師役となり、イマドキの若者と討論するといったコーナーに出演者の一人として出ていた。

そこにプロ奢ラレヤーと名乗る男はいた。
ニット帽を目深に被り、長髪を肩につけ、ふてぶてしい表情を浮かべていた。

「人を食ったような態度」でググるとトップに上がってきそうな人物像。

ああ、こういうヤツがキメラアント約5000個のマユを回収し、孵化させて遊ぼうとするんだなと思った。なんか動揺とか同情とか、そういった類の感情が欠落してそうなタイプ、苦手だわ~。これが第一印象だった。

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橋下徹にしてもプロ奢ラレヤーにしても、とにかく頭の回転が速く、舌鋒が鋭い。一定レベルのそれを備えた人を、HUNTER×HUNTERでいうところの念の習得者だとするならば、あの場にいた何人かは手練れの念能力者に違いなかった。

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男との再会

それからしばらく時は経ち、たまたまたツイッターのタイムラインにプロ奢のつぶやきが流れてきた。誰かがリツイートしたのだろう。

140文字以内に集約された人生の真理を突くような内容は興味深かった。気付けば本人のアカウントへ飛び、またいくつかツイートを読んでいた。その手は止まらなくなっていた。僕は早速フォローした。

彼の発する言葉には、共感したり納得したり、いずれにしても脳を新鮮に刺激し、目から鱗が落ちる考え方や捉え方ばかりだった。自分でもうっすらと勘付いているセオリーや経験則を、誰しも持っているとはいえ、それを簡潔に言語化できる技術はまた別物である。

本来なら自分で本を何冊か読み通さなければ得られないような知識や情報が、プロ奢のツイートを読めばわずか140文字程度で手に入る。

手っ取り早く有益な真理を得たいせっかちな人にとってみれば、こんなラクなことはない。自ら何冊も本を読んで内容を噛み砕き、核となる情報をドリップして抽出するのも苦手な人は苦手だ。何よりも、自ら何千人もの人と直接会って話を聞き、インプットを積み重ねるのは普通の人はマネできない。プロ奢ラレヤーはその両方をズバ抜けた量こなしている。

そしてツイッターなりnoteなり、あるいは他のいくつかのSNSに、ほとんど無料で上げまくっている。本来タダで読めるレベルの内容ではない。

それでもまだ僕はプロ奢本体に好感を持ったわけではないし、得体の知れない不気味さについて完全に解消されたわけではなかった。

ついに著書を買うまでに

なので次に彼の著書を読もうと思った。
近所にでかい図書館があるので借りようとしたら、すでに貸出中だった。予約待ちも3人ぐらいいた。

次にブックオフに行ってみたものの、そこにも一冊もなかった。ホリエモンもひろゆきもDaiGoの本も大量にあるのに、なんでプロ奢のは無いんだよ!意外とヤツは深く支持されているのか? 危うく与沢翼の『ブチ抜く力』で妥協しかけたが、思想が違いそうなのでやめた。

結局、八重洲ブックセンターで『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』を購入。


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タイトルにもある通り、彼は「あきらめることの大切さ」を説いている。

僕もこれまでの人生、随分あきらめてきたような自負があったけれど、そんなの全然中途半端なものだったなと読みながら思った。むしろその中途半端さゆえに、無駄なコストやリスクを抱えていたのかもしれないと。

何をやりたいかよりも、何をあきらめるかの方が重要。その解像度が高い人ほどストレスフリーに生きられる。

プロ奢は、靴下を履くことや満員電車が苦痛であること、約束の時間が守れないことなどを挙げ、それらはもうあきらめていると語っていた。サラリーマン的に働くことも無理だしイヤだ。その代わりメシと住処さえあれば何とかなる。じゃあそれを人から提供してもらえばいい、という発想だ。

日本という国に生まれた時点でもだいぶラッキーという話もあった。この国のセーフティネットがある限り、そう簡単に人は死なない。プロ奢はその点を最大限のメリットとして捉え、戦略的にあきらめている。別に無謀なことをやってるわけではない。

限られた時間やスキルのなかで、何をやり、何をやらないか。

そのルールやこだわりが明確な人ほどストレスやトラブルに強く、行動や決断がスピーディなイメージはある。

ひろゆきも『1%の努力』という本でそういったことを書いていた。外野から見れば変人・アクの強い人というイメージを安易に持つものの、当人は確固たる指針のもとに動いているだけで、筋が通っている。こういったタイプの人は思考が整理されまくってるからディベートとかもめちゃくちゃ強い。

プロ奢は「やりたくないことはやりたくない」と言い切る。その一点を貫くために、それ以外はあきらめる。誓約と制約のエンペラータイムみたいなものだ。ちゃんと相応の等価交換はしてる。

あきらめることは決して悪いことじゃなく、殺されないための技術なんだという彼の言葉には結局共感してしまった。

彼の生き方を模倣するなんてムリだ。徹底の仕方が中途半端じゃなく、振り切ってるからこそレアなのだ。だから価値が生まれ、人を惹きつける。

この人に奢りたいって人が何千人といるのだから世界も正しく狂ってる。
やはり人は、自分の根底にある願望や欲求を恐れることなく体現してる人間には引き寄せられる。自分じゃ出来ないことを痛快にやってのけてる人の話を聞いてみたくなるのだろう。彼を丸ごと真似るのは無理でも、参考には大いにできる。ましてこんな複雑な時代だからこそ。

自分にとってのセーフティネットを求めて

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  • 僕もかつて出会い系アプリに傾倒し、多くの女性と対話を重ねた時期があった。さして関係性もなく、ほぼ他人みたいな距離感の人と2人きりでじっくり話してみると、想定していた以上の情報量を浴びることになる。
    自分では考えられないような背景や価値観を持つ人が大勢いることが分かる。それをイメージとして知っているだけなのと、体感しているのではえらい違いだ。

    出会い系アプリには、彼氏がいる女の子もたくさんいた。金持ちの中国人に飼われてる女の子、オーバードーズで定期的に死にかけてる女の子、川口春奈みたいに可愛いのにSEX依存症の女の子。ほんとうに色々。

世の中の表面を掬ったぐらいじゃ見えてこない事情を、多くの人が抱えている。みんな生身の実生活じゃ補い切れない何かを抱えているからこそ、時折よく知らないぐらいの人に会って話をしてみたくなるんだと思う。
きっと、どこかにあなたにとってのセーフティネットは用意されているし、たぶんどこの誰であれ、誰かにとってのセーフティネットになれる。


あきらめるとは、自分自身が心の底から「本当に大切にしたいもの」を守り抜く力です。それは決して敵などではありません。
「あきらめる」を味方につけることで、人生はむしろ、ずっと豊かなものになっていくのです。
『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より。

プロ奢は特質系の能力者

プロ奢ラレヤーのことはちょっと好きになった。

1冊目を読んだ後、早速Amazonで2冊目『嫌なこと、全部やめても生きられる』を注文し、届いてから速攻で読み終わったぐらいだから、それはもう弁明の余地がない。

彼の本やnoteを読めば読むほど、彼のツイートに触れれば触れるほど、当初勝手に抱いていたイメージよりずっと血の通ったまともな人間であることが分かる。

繰り返すが、プロ奢が発信しているあの内容がほとんどタダで読めるなんて嘘みたいにお得だ。インプットとアウトプットの量が両方尋常じゃないからこそ出来るあの芯をとらえた物言い。引き出す速度と再現性。まだ20代前半なのもけっこう衝撃的だった。

当初の僕のように、彼に偏見や警戒心を持っている人も、一度彼の書いたものを読んでみるといい。怪しいオンラインサロンや情弱ビジネスをやってる界隈なんかとはまた違った魅力がある。

個人的にはHUNTER×HUNTERを好きそうなところも好感を持っている。彼は完全に特質系。人の話を聞いては血肉となる情報を抽出し、自分のモノとする、スキルハンター(盗賊の極意)の使い手だ。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います