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『太陽の女神、月の男神』第二.五章
前作:『太陽の女神、月の男神』第二章
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国立プロメテウス学園の高等部に合格した私サシャ・バレットは、己が太陽神ソルの生まれ変わりだと知り段々女神として目覚める中、正体のわからない夜色の合成獣に命を狙われていた。
そして先日とうとう首謀者と思しき男が現れ、マシューやマリルー、オルフェオに始まる友人たちを人質に取られた私は彼らの目の前で攫われたのだった。
「ふっ」
怪しい紳士に攫わ
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』(長編)
伝承 世界の初めに一つの王国があった。全てを赦され全てを誇った神と精霊の国サヴェル・シウ・スール。しかし全ての精霊の王プレグライアが死すると、国は乱れ白の国と黒の国に分かれた。
そして白の国も黒の国もそれぞれが戦いにより分かれ、またその子どもたち……四つの国々もまた戦いを繰り返し一つ一つの国は小さくなっていった。
そうして、世界には八つの国が在った。
──『八つの国』(サヴェル・シウ・スールの
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−6
世界観前:
5.黒骨の騎士と夜の王
6.黒骨の騎士と白騎士ジークハルト 白騎士ジークハルト率いる中隊二百余名の兵士たちは大陸側のヴォナキア王国から離島シルベルフを目指し、海辺の寒村へ差し掛かった。
「しかしまあ、よくこんな大勢生き残ってましたね。テリドア陥落の時だいぶ死んだと思ったんですが」
魔法剣士マインラートは魔女の髪から作られた魔法封じの縄で手を縛られ、鞍上(あんじょう)の白騎士ジークハル
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−5
世界観前:
4.黒骨の騎士と豊穣の祭り
5.黒骨の騎士と夜の王 クレリアがバチッと目を覚まし、反射的に体を起こすとそこはあまりにのどかな景色であった。暖かい日差しのなか鳥が歌い、妖精たちが蝶のように舞っている。
「ここは……?」
クレリアはハッとして辺りを見回した。アレッキオ、ディミトラ、パーミラとマテオが気を失って草葉の上に転がっていたが、ハルサラーナとフォンザーの姿はなかった。
「姫さま……
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』-4
世界観前:
3.黒骨の騎士と幽霊騒ぎ
4.黒骨の騎士と豊穣の祭り「幾らなんでも情報が集まらなさすぎだよ。何年前に失くしたんだ!?」
夕暮れ時、珍しく酒場でアレッキオが声を張り上げる。フォンザーは彼の愚痴に付き合いながら懐かしい黒ビールを口にする。
「精霊にとって五十年程度なら“最近”だからな。あの泉の乙女ももう何年も泣いていたのかもしれん」
「かーっ、これだから精霊は! そこの麗しいお嬢さん!
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−3
世界観
前:
2.黒骨の騎士と泉の乙女
3.黒骨の騎士と幽霊騒ぎ 外はダラダラと雨が降り続いている。黒骨の騎士フォンザーはどんよりとした空を見上げ溜め息をついた。振り向けばはちみつ色の髪の小さな姫が、同じ大きな布張りのテントの中、支柱の近くで高く積まれたクッションや枕で囲まれたベッドの上に赤い顔をして眠っていた。
竜人たちの町ソン・サザリームから出発して二日後、ハルサラーナ姫が高い熱を出し
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−2
世界観前:
1.黒骨の騎士と薬屋のクロエ
2.黒骨の騎士と泉の乙女 ヴォナキア王国、森の小さな町ワスマからそう遠くない森小屋の周りには切り倒した丸太が何本も転がり、その表面にはキノコがたくさん生えていた。森小屋は屋根から壁まで蔦に覆われ、遠目には生い茂る樹々に隠れて小屋とは気付きにくい。黒骨の騎士フォンザーは夜通し歩いたその足で小屋へ真っ直ぐ向かうと、三回ノックをして扉を開けた。
髪ははちみつ
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−1
世界観
プロローグ 黒い鎧の騎士は走っていた。その懐に小さな乳飲み子を抱えて。鍛えられた太い手足を振り抜いて。雨のような矢を潜り、蛇のように走る炎を越えて、黒い騎士は走った。
走って、走って、黒い騎士は勢いのまま塀を駆け上がる。大砲の轟音とたくさんの悲鳴から小さな姫を守るために、彼は堀に張られた水に飛び込んだ。
1.黒骨の騎士と薬屋のクロエ 今は亡きテリドア帝国の西、ヴォナキア王国の内陸、森に
『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−世界観
伝承 世界の初めに一つの王国があった。全てを赦され全てを誇った神と精霊の国サヴェル・シウ・スール。しかし全ての精霊の王プレグライアが死すると、国は乱れ白の国と黒の国に分かれた。
そして白の国も黒の国もそれぞれが戦いにより分かれ、またその子どもたち……四つの国々もまた戦いを繰り返し一つ一つの国は小さくなっていった。
そうして、世界には八つの国が在った。
──『八つの国』(サヴェル・シウ・スールの