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地域に根付く

日曜日。
 
早朝。
 
「おはようございます。
 お疲れ様です」
 
「あ~どうもどうも」
「おはようございます」
 
今日は半年に一度の、
地区内の道端みちばた清掃。
 
参加者は少なく、
私の同年代はいない。
 
明らかに年齢は上の方ばかりだ。
 
皆さん、定期的に、
ひざこしを伸ばしながら、
草をむしったりほうきゴミを集めてる。
 
「佐藤さんはこれ終わったら、
 でしょ?」
「ああ。
 家に帰らずこのままだな」
 
どうやら佐藤さんは、
農家の方のようだ。
 
ご近所といっても、
顔見知りなだけで、
細かいことは全く知らなかった。
 
だからいつも何を話していいか、
どんな話題が喜ばれるのか分からず、
コミュニケーションに苦労していた。
 
でも私は最近、
アニメ【百姓貴族】を見て、
農業酪農らくのうにはとても興味があった。
 
「今年は暑すぎて最悪だ」
「ほんとひどいな。
 もう50年も農家してきたけど、
 こんなの始めてだ」
 
「そうなんですか?」
 
私は会話に入りたくて、
質問してみた。
 
とんでもない猛暑が、
 続いたかと思ったら、
 とんでもない量の雨だろ。
 こっちは調整が大変なんだ。
 しかもこう暑いと仕事がキツイ
「外仕事ですからね」
 
佐藤さんは農家の苦労を、
色々話して下さった。
 
「そんなご苦労もあるんですね。
 テレビではブランド化で、
 成功してる方とかよく見かけるので、
 てっきりもうかってるのかと
 
佐藤さんの表情が変わった。
 
「んなことあるか!」
 
どうやら私は、
触れてはいけないものに…そう!
 
逆鱗げきりんに触れてしまったようだ。
 
そこからはとある団体への口撃が、
千葉繁声優さんさん並のトーンで繰り出され、
相槌あいづちを打つ間もなく、
不満罵詈雑言ばりぞうごんが、
朝の静かな住宅街にひびき渡った。
 
他の農家の方も参戦し、
気が付けば誰も掃除などしてなかった。
 
言いたいことを、
言い尽くした佐藤さんたち。
 
そしてまた何事もなかったように、
草むしりや枯れ葉集めにいそしむ。
 
「この草むしりも、
 の方でやってくれればいいんだよ。
 なあ?」
「そうなんだよ。
 こっちは税金払ってんだから
 
まださっきのテンションを、
引きずってる。
 
これはまた、
不平不満が再燃してしまう。
 
「そうですよね」
 
私は同調しながらも、
この流れを止めなければと思った。
 
そして…
 
「この植え込みも…
 ビッ◯モーターにお任せしたら、
 キレイにしてくれると思うんですけどね」

「……!」 「……!」 「……!」

おかげで、
私は地域の人と打ち解けた。
 
ありがとう、ビッ◯モーターさん。
 
そして…
 
思い切って除草会社を、
立ち上げてはどうでしょう?
 
信頼度は折り紙付きです。


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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お疲れ様でした。