食事のテーブルに付く3名。
 
女性が口を開く。
 
「じゃあ、皆さん召し上がって下さい」
 
「では、頂きましょう」
「はい、頂きます」
 
食事を口にする男性2名。
 
「お味、どうでしょう？」
 
「これは大変結構なお味で。
　この肉の焼き加減、いい～塩梅あんばいです。
 
　柔らかくジューシーなのに、
　外はカリッとした仕上がり。
 
　このカリッした部分が、
　絶妙なアクセントになってます。
 
　そしてこのソース。
　お肉の味をとても引き立ててますね。
 
　私はさっきから、
　食べる手が止まりませんよ。
 
　このお肉は一体どこのものですか？」
 
「カナダから取り寄せました」
「この料理は、
　目利めききのシェフのなせる技ですね」
 
「ありがとうございます」
 
「私も全くの同意見です。
　このジンジャーソースの効果で、
　箸はしがとても進みます。
　コク甘味辛味のバランスが絶妙でして、
　特にこの微かすかな甘み…蜂蜜はちみつ…。
　ソースはハニージンジャーですか！
　蜂蜜を使ったにも関わらず、
　焦こげつくことなく、
　パリッとした焼き上がり。
　本当にマーベラスお見事です！」
 
「ありがとう二人共。
　じゃあ、いつも通り食べましょう」
 
「は～い」　「は～い」
 
急に皿を手に持ち、かき込む男の子。
 
「これママ、サイコーだね！
　上品に食べるのも良いけど、
　やっぱり好きに食べるのが、
　一番美味うまいよね！」
 
ご飯に肉をのせて食べているパパ。
 
「これは絶対、ご飯で食べないと！
　このタレがご飯にしみて、
　相乗効果そうじょうこうかでご飯がとまらん！
　ママ、おかわり！」
 
「はい。
　たくさん食べるのはいいけど、
　よく噛かんでね」
 
「は～い！」
 
「ママ、僕もおかわり！」
 
我が家では週に1回、
食レポチャレンジを行っています。
 
テレビの芸能人のように、
自分の口にしているものを考え、
相手にその味や感想を伝える。
 
これを始めたのは2年前。
 
学校や会社から帰り、
無言で口に放り込む毎日。
 
栄養摂取えいようせっしゅのためだけの儀式ぎしき。
 
それが2年前までの我が家の食卓。
 
味気あじけない食卓を、
何とかしたかった…。
 
そこで思いついたのがこれでした。
 
これにより自分たちの…、
食の意識改革になればと…。
 
しばらく続けてみると、
いい方向に効果が現れました。
 
みんな料理や材料に、
興味きょうみを持つようになり、
食の会話が少しずつ増えていきました。
 
そしてたまに行く外食は、
食レポで楽しいものになりました。
 
その時は私も、
みんなと一緒にレポートしてます。
 
「ママ！
　今日の生姜しょうが焼き、
　過去一かこいち美味しいよ！」

「ありがとう」