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洗脳護身術(2017/10/30)/苫米地英人【読書ノート】

「洗脳」はあなたと無関係の出来事ではない。カルト、悪徳商法は言うにおよばず、国家、メディア、より身近な社会や教育、家庭が、知らず知らずのうちにあなたの脳に入り込んでいる。オウムなどカルト信者の脱洗脳体験、西洋哲学、東洋哲学、心理学、認知科学への深い造詣から編み出された洗脳のメソッドをイラスト入りで解説し、自らの意志と力で洗脳を抜け出し、自由をつかむ道を示す。現在の日本を改めて見つめ、一層高まる「洗脳護身術」の必要性について語る。

洗脳とは何か
苫米地博士によれば、洗脳(Brainwash)とは、元々は中国が行っていた手法を批判的に報じた新聞記者(後にCIAエージェントであることが判明)が作った言葉。英語では「Mind Control」とも言い、必ずしも悪い意味ではない。日本ではカルトの影響で否定的に捉えられがち。
洗脳の技術
洗脳は、第三者の利益のために行われることが多いが、それ自体は技術であり、その技術を使って自分自身や他人を良い方向に導くことも可能。洗脳技術は、人の心の世界モデル(Belief System)を書き換える技術。
洗脳の持続性
単に書き換えるだけでは一時的。持続性を持たせるためには、新しい「ゲシュタルト」を作り、それが自然に定着するような仕掛けが必要。
洗脳は一般に否定的に捉えられがちですが、その背後には深い理解と技術があり、それを正しく使えば自分自身や他人を良い方向に導くことも可能であるとの点が強調されている。

洗脳護身術: 自分の人生をコントロールするためのテクニック
1. 洗脳の危険性と普及

洗脳技術は社会に広がっており、悪用されるリスクが高まっています。例えば、カルト団体やビジネス、さらには政治家や国際機関もこの技術を使用しています。情報操作によって、多くの人々が無意識のうちにコントロールされています。
2. 洗脳と資本主義
資本主義や経済戦争も一種の洗脳です。多くの人が「お金がないと生きていけない」という価値観に縛られ、自分の人生を制限しています。これは、誰かが作り出した価値観によって、自分の人生がコントロールされている状態です。
3. 洗脳護身術の必要性
洗脳に負けないように、自分自身をコントロールする力を身につける必要があります。これには精神力や自己認識、そして情報の正確な理解が必要です。洗脳技術を理解し、それに対抗する力を身につけることで、自分の人生を自分の手でコントロールすることができます。
4. 精神力の鍛錬
瞑想や自己啓発、さらには無意識のコントロールなど、精神力を高める方法は多くあります。これらを日常的に行うことで、洗脳から自分を守る力を身につけることができます。
5. 洗脳護身術の普及
このような洗脳護身術を多くの人に知ってもらい、自分の人生を自分でコントロールできる人を増やすことが重要です。これによって、社会全体が健全な方向に向かうでしょう。


第一章:洗脳護身術を学ぶために

洗脳を知るうえで必要な三つの概念
内部表現とホメオ シス
三つの概念と洗脳の関係
洗脳は精神世界の格闘技
霊と洗脳護身術の共通点
洗脳護身術の土壌~変性意識の生成
精神の基礎体力を鍛える
瞑想の実践法その一「止観」
瞑想の実践法その二「遮那」
洗脳される危険性
相手の心とシンクロするホメオスタシスの力
マインドエンジニアリングの科学
認知科学と東洋哲学
両手の人差し指がくっ付く~暗示を巧みに使う
相手にイメージさせる練習法~舞台演劇
洗脳護身術家としてのモチベーションを持つ

第二章:洗脳術~呼吸を用いた変性意識の生成

変性意識と呼吸
相手に気付かれない呼吸~基本呼吸法
変性意識を生成~逆腹式呼吸
強烈な変性意識の生成
後天的共感覚の生成法
握手するだけで相手を変性意識化する。
なぜ相手の右手は空中で止まるのか?~カタレプシーの威力
目を合わせるだけのマインドエンジニアリング
六本木ヒルズ瞑想法

第三章:洗脳術~アンカーとトリガーの応用

アンカートリガー
自我を操作する
洗脳と催眠
アンカーとトリガーの埋め込み法
アンカーとトリガーを用いた高速変性意識化
醒めない催眠サイクルの生成
洗脳された記憶を消す
日常的なアンカーとトリガー~占いにはまるケース
洗脳におけるラポールの存在
洗脳と脳内情報処理

第四章:気功を用いた洗脳術

気は存在する
養成功と秘伝功
気功による変性意識の生成法
外気治療のメカニズム
気功を応用した護身術の真の力

第五章:洗脳の定義、カルト、そして宗教

旧中国共産党とCIAの洗脳
洗脳の定義
セールスや恋愛は洗脳か?
カルト宗教~オウム、貴乃花、XJAPANToshi
カルトと宗教
宗教における「あの世の論理」
あるプロテスタント牧師について
Kill と Murder の違い
宗教の倫理
危険な洗脳
洗脳を究めることが宗教を努める

第六章:洗脳されないために

脱洗脳法の難しさ
洗脳の危険性
恐怖に打ち克つ
快楽を克服する
脳世紀を迎えるに当たって

補完:洗脳護身術の最終奥義

洗脳護身術奥義1:防衛技術

洗脳とは、他者によって内部表現を操作されることを指す。したがって、洗脳を防ぐには内部表現を操作されないようにすることが重要である。その前提として、相手に内部表現へのアクセスを許さないことが最も効果的である。例えば、意識を失った状態の相手には内部表現へアクセスすることはできない。実際に、洗脳を防ぐための手法として、変性意識を生成しようとすると意識を失うように仕組まれた方法論が存在する。これは異なる視点からのアプローチであるが、同じく効果的な方法である。

しかし、現実的には洗脳術は被験者が気づかない内に内部表現を書き換えることが多い。そのため、この技術は明らかに洗脳者であると分かる相手に対する防御策としてのみ有効であると理解する必要がある。例えば、カルト信者を脱洗脳する際には、脱洗脳後にカルトメンバーからのコンタクトにより再び洗脳されないように、メンバーの言葉を無効化する仕掛け(アンカー)を脳内の認知メカニズムに仕掛けることがある。これは内部表現へのアクセスを防ぐ技術の一例である。

本節では、特殊な技術を必要とせず、誰でも他者から内部表現を操作されない方法を紹介する。具体的には、他者からのホメオスタシス同調による内部表現の書き換えに耐えられる技術である。この方法は、自己の身体を内部表現上で巨大化させることによって実現する。しかし、自分自身を巨大化させたイメージを持つことは意外と難しいため、始めは強靭で巨大な身体を持つ存在をイメージし、それに自己を重ね合わせていくことがお勧めである。このイメージには強い臨場感を持ってほしい。そうすることで、自然と介入されにくい強固なホメオスタシスを構築できるはずである。

この方法は仏教の伝統的な瞑想にも利用されている。例えば、大日如来や阿弥陀如来の姿をイメージ空間に思い浮かべ、観想された仏と一体化する「観想念仏」という技法がある。この念仏は悟りや浄土への往生を目的としているが、副作用として他者からの内部表現の書き換えに対する防御効果がある。それにより、重い病を持つ患者と内部表現を共有しても僧侶は病気にならず、霊と闘っても勝てるようになる。仏の姿を内部表現に作り上げることで、他者の内部表現と共有されても書き換えられることはない。
ただし、現代社会で仏教僧のように多くの時間を瞑想に費やすことは難しい。そのため、短時間でも効果的に実践できる方法を以下に紹介する。

  1. まず、自分自身を包み込むような巨大で力強い存在をイメージする。それは仏の姿であってもよいし、何らかの神聖な生物であってもよい。大切なのは、その存在が強く、揺るぎないものであることである。

  2. 次に、そのイメージを自己と一体化させていく作業を行う。自己とその存在を同一視することで、その強さと安定性を自己の内部表現に取り込んでいくことができる。

  3. 最後に、他者とのコミュニケーションをとる際に、そのイメージを意識する。他者からの言葉や行動に対して、そのイメージを通して受け止めることで、内部表現が書き換えられることを防ぐことができる。

この方法を実践することで、他者からの内部表現の操作を防ぐことができる。しかし、この方法は他者とのコミュニケーションを通じて内部表現が変化することを防ぐものであるため、他者からの影響を全く受けないわけではない。自己の内部表現を強固に保ちつつ、他者とのコミュニケーションを取るバランスを取ることが重要である。

洗脳護身術奥義2:解放技術

本節では、自己解放の技術について説明されている。何度も言われているように、我々は幼少の頃から、親や友人との交流における失敗などの身近な経験、学校や社会での教育、宗教や伝統に関する体験を基に、様々なアンカーとトリガーを自ら作り上げてきた。認知科学の研究によると、特に失敗や恐怖を経験した際の状況がトリガーとなり、それに伴う苦痛な感情がアンカーとして機能しているとされている。恐らく、進化の過程で我々の行動には、自らにとって望ましくない状況を無意識に避けられるような仕組みが組み込まれてきたのだろう。

例えば、熱いものに触れた際に無意識に手を引く条件反射も、アンカーとトリガーの関係で説明できる。認知科学は、人間の思考においても、単なる条件反射を超えた、より高度な抽象度のあるアンカーとトリガーの関係が存在すると考えている。これは、情報空間においてもホメオスタシスが機能していることを示唆している。

例えば、駐車違反で罰金を科された経験があれば、次に速度違反の取締り機器を見た瞬間、一瞬で心が冷えるような感覚を覚えるかもしれない。これは、「取締り」と「違反」という抽象度の高い概念においても、アンカーとトリガーの関係が成り立っていることを示している。我々は、このようなアンカーとトリガーを無意識の中に無数に持っているのである。

失敗を基にしたアンカーとトリガーは、次の失敗を回避するために無意識に埋め込まれている。通常であれば、これは望ましいことと言えるだろう。しかし、本書では逆の立場を取り、自己の内省を経ない限り、自分にとって良いとは限らないと警鐘を鳴らしている。本書を読み進めてきた読者であれば、この立場を取る理由が理解できるだろう。

日本の長い歴史の中で社会的に埋め込まれてきた価値観、「日本教」とも言える思い込みが存在する。例えば、「ご飯にお箸を突き立てると嫌な気分になる」といった風潮がそれであり、これは「正しい」とされているが、その根拠を問い直す必要がある。これらの価値観は、我々が幼児期から未成年の段階で受け入れてきたものであり、本当に自分のためになっているのか、他者の立場で再評価するべきである。

もし、再評価の結果、それが自分のためになっていないと判断されるならば、それを解放し、新たなアンカーとトリガーを作り上げる必要がある。そのためには、まず自分自身の思考のパターンを理解し、無意識の中に埋め込まれているアンカーとトリガーを意識化し、それを変化させる努力が求められる。

自己解放のプロセスにおいては、まず自己認識が求められる。それによって、自らの思考のパターンや感情の起伏を理解し、それをコントロールする力を身に付けることができる。その過程で、自らが望ましくない状況を避けるために無意識に作り上げてきたアンカーとトリガーを見直し、必要に応じて変更していくことが可能となる。

結局のところ、自己解放の過程は、自らの思考や感情を自由にし、より良い人生を送るための準備を整えることである。これにより、自らの思考や感情がコントロール可能となり、望ましくない状況から抜け出すことができるようになる。自己解放の技術を身に付けることで、より良い人生を送るための第一歩を踏み出すことができるのである。

本書では、まず自身の判断においても、アンカーとトリガーを再考し、それらの関係を断ち切るかどうかを選択する立場を取る。これが自己解放である。また、自己解放を勧めるもう一つの理由は、宗教の問題に関係している。

二十一世紀においても、多くの大人が霊を恐れている現状がある。風水が悪いと霊が入ってくると真剣に信じている人々が数多く存在し、中高生に聞いても、ほとんどの生徒が霊が実在すると考えているようだ。最近の社会風潮では、水子がいるとされ、特に若い女性が占い師から脅迫を受けている状況がある。そしてこのような恐怖から、占い師や祈祷師に何百万ものお金を支払っている人々が驚くほど多く存在する。仏壇に二千万円も投資した人の話も耳にする。

自らの目が覚め、騙されたと感じても、多くは泣き寝入りの状態で、被害届を出すこともなく、これが社会問題として表面化することは稀である。とはいえ、ほとんどの人々が本当に占い師や祈祷師を信じているため、ただただお金を巻き上げられている状態が続いている。被害が一般人が思っているよりもはるかに多いことは、現場にいるとよく理解できる。

要するに、日本は宗教的にはまだ暗黒時代にあると言える。確かに、占い師や祈祷師、シャーマンと呼ばれる人々は真っ当な宗教家ではないかもしれないが、それは宗教ではないという批判があるかもしれない。しかし、それは違う。伝統宗教が霊という概念を利用して日本人を子供の頃から脅かし続けているため、日本人は霊の概念に洗脳されているのである。仏教が葬式仏教になったのは江戸時代からであるが、それ以前から日本人は他の概念で脅かされ続けてきた。

現実には、科学者でさえも戒名に多額のお金を支払い、車にお守りをぶら下げている。景観の悪いマンションは購入しないし、カルト雑誌を購入したり新興宗教に走ったりする人々もいる。カルトに走るのは、教養のない市民だけでない。前世療法が流行っているのも、日本人がアートマンの実在や輪廻というカルト的な宗教観に洗脳されている結果である。

このようなカルト的な宗教観から、日本人は自己脱洗脳しなければならない。霊を恐れる感情から完全に解放されなければならない。アンカーとトリガーの関係を断ち切り、新しい自己を築くためには、まずアンカーを意識し、その効果を無力化する必要がある。

応用としては、トリガーを別のアンカーに繋ぎ変えることも効果的である。アンカーとは、脳内に刻まれた経験の記憶や感情、思考のパターンのことである。これに気づき、意識的にアプローチすることで、アンカーの効果を軽減できる。

具体的には、静かな場所に座り、自分が「やってはいけない」と思っていることを思い浮かべ、それがどのような状況で学ばれたのかを考える。これにより、無意識のうちに刻まれたアンカーを意識化し、その効果を弱めることができる。最終的には、社会や他人、自分自身から学んだ「やってはいけない」ことすべてのトリガーとそれに関連するアンカーを意識化し、その影響を軽減することで、自己解放へと進むことができる。

どうしても結びつけられた感情が強い場合は、その感情を少し強くしてみると良い。例えば「教祖を疑ってはいけない」というトリガーを思い浮かべる。整を疑うことで出てくる恐怖(=アンカー)が弱まらない場合、あえてその恐怖心を強めてみる。弱めることはできなくても、強めることならできるだろう。アンカーを強化できたら、後は自分のものだ。感情をコントロールできているから、改めて恐怖心を弱めてみてほしい。今度はおそらく成功する。

次に、アンカーのつなぎ替えを試みる。これは「やってはいけない」ことに別の感情や思考を結びつける作業だ。例えば「教祖を疑ってはいけない」に対して、最近食べた美味しかった料理の味を結び付けたり、友達と遊んでいるときの楽しい気分を結び付けたりする。これは自分一人でも十分にできる作業だ。

自己解放において重要なのは、カルトの「教祖を疑ってはいけない」といった明らかに洗脳的なトリガーだけでなく、日常のあらゆる「やってはいけない」を意識することだ。そうすれば、思わぬ自己束縛のアンカーとトリガーが多く隠されていることに気付くはずだ。「やってはいけない」を一通り考えたら、「やらねばならない」「守らねばならない」と思っていることも同様に考えてみることをお勧めする。

例えば、著者は幼少の頃から歯磨きは起床すぐと就寝前にすると学んでいた。両親がそうしていたのを真似ていたのだ。しかし、中学生の時にニューヨークミリタリーアカデミーの夏キャンプで、同級生たちが朝食、昼食、夕食の直後に歯磨きをしているのを見て、著者の家庭での習慣が間違っていることに気付いた。「虫歯予防という目的で歯を磨くならば、食後すぐが望ましい」という新しい知識を得たのだ。ただし、朝食までの時間の口臭予防を目的とするならば、朝の歯磨きも意味がある。しかし、夕食から数時間も経過した後の歯磨きは、虫歯予防の観点からはほとんど意味がない。残念ながら、著者はこれを一人で座って考え、自らの矛盾に気付いたわけではなかった。もし寮の同級生の歯磨きを見なければ、今でも家庭で学んだ習慣を続けていたかもしれない。

正しい歯磨きの習慣に気付いた著者はしばらくの間、朝食後まで歯を磨かないことに違和感を覚えた。これはかなり強力な洗脳がホメオスタシスレベルで働いていた証拠だ。このようにして、「やらねばならない」と思っていること、そして「怖いと思っている」ことについても考えてみてほしい。怖いと思っていることを挙げ、それぞれに結びついている恐怖の感情とその感情を感じた時の過去の状況をすべて思い出してみてほしい。
これら三つを日々行うことをお勧めする。一日たったの十分や二十分でも良い。毎日続けていれば、いずれ自己解放の感覚が得られるはずだ。

洗脳護身術奥義3:反撃技術

洗脳防衛術を身につけるためには、相手を洗脳する技術を理解する必要がある。それは、相手の仕掛けた洗脳を認識する効果だけでなく、相手に洗脳を仕掛け返すためにも効果的だからである。洗脳を仕掛け返すことは、危険に聞こえるかもしれないが、護身術とはそのような性質を持っている。柔道や空手でも、自身を守るために相手を投げ飛ばしたり、打ち負かす技術を中心にしている。もちろん、これらの技術を自己責任で、ビジネスや交渉の場で利用することは個々人の判断に委ねられている。

反撃技術には、ホメオスタシスの同調を利用する。これは複数の人間が同じ場を共有すると、自然とホメオスタシスが同調するという原理である。ホメオスタシスとは身体の正常な状態を維持する機能のことで、暑い時には発汗して体温を調節したり、心臓の拍動を変えて血液量を調節するのが代表的な例である。これはゆらぎを持ちながら周期性を持って徐々に調整されていく機能である。この機能は進化を遂げ、情報空間においてもホメオスタシス活動が展開されている。それが仮想世界の臨場感を生み出している。

1971年にシカゴ大学で行われた実験では、女子大学の寮生を対象に、生活を共にする女性の生理周期が同調する現象が確認された。その後の研究で、これはフェロモンによる匂いが情報を伝達していることが判明している。呼吸や心拍など、その他の機能での同調現象についても、伝達方法がすべて解明されているわけではないが、ホメオスタシス機能が個人間で同調性を持っていることは確かである。同じ場所に長くいると、呼吸や心拍も自然と同調していく。

洗脳の基本はホメオスタシスの同調である。人間のホメオスタシス空間は物理空間から精神空間(情報空間)まで拡がっている。女性のルームメイト同士が生理周期が同じになるように、精神的なレベルでもホメオスタシス同調が起こる。これは、一緒にいるだけで同じような思考パターンを持つようになり、強固な内部表現を持つ方の思考パターンに同調していく。また、数人が一緒にいれば、同じ思考を持つ人が多い方に同調する。これは、異なった思考を持つ一人を数百人の中に入れると、ホメオスタシスの同調で洗脳されてしまうということである。

ホメオスタシス同調が効果的に働くためには、個人間の物理的距離が近いほど、一緒にいる時間が長いほど良い。日本のような人口密度が高い国では、皆が同じ思考パターンを持つようになりやすい。これは、「以心伝心」や「腹芸」といった文化が、人口密度が高い国特有の現象である。

しかし、自然なホメオスタシスの同調に任せているだけでは、ルームメイト同士であっても同じ思考パターンになるまでに数ヶ月から数年かかる可能性がある。洗脳技術はそれを分単位、時間単位で実現する。

ホメオスタシスの同調を洗脳レベルで操るためには、まず変性意識を生成する必要がある。変性意識ではホメオスタシスの同調が促進され、集団催眠状態では皆が同じ行動や思考パターンをとりやすくなる。舞踏などでは変性意識がうまく生成され、特に合図なしに身体の動きが自然と同調することがある。これは「変性意識の強度」と「仮想世界の臨場感の強度」が関連していることを理解すれば納得がいく。また、「仮想世界の臨場感の強度」は「ホメオスタシスフィードバックの強度」と等しい。したがって、変性意識が強ければ強いほど、ホメオスタシス同調が効果的に操られる。逆に言えば、仮想世界での感覚や行動の自由度が高ければ高いほど、ホメオスタシス同調の効果が高くなる。

変性意識の生成を目的とした宗教儀式や音楽コンサート、スポーツイベントなどは、一種の「洗脳」であると言える。一緒に踊ったり歌ったりすることで、変性意識状態に入り、皆で同じ思考パターンや行動パターンを持つようになる。

変性意識状態になることで、個人の内部表現が弱まり、外からの情報に影響を受けやすくなる。それにより、洗脳されやすくなるわけである。しかし、変性意識状態にならなくても、長時間一緒にいるだけでホメオスタシス同調が起こり、洗脳が進行することがある。

洗脳を防ぐためには、自身の内部表現を強化し、外からの情報に影響を受けにくくすることが重要である。これには、自己認識を高めることが効果的である。自己認識を高める方法としては、瞑想や自己対話、日記の記録などがある。また、様々な情報を取り入れ、異なる視点を持つことも大切である。情報を一方的に受け取らず、批判的に考える能力を養うことが必要である。

結局のところ、洗脳を防ぐ最も効果的な方法は、自己認識を高め、情報を多角的に捉える能力を持つことである。それにより、ホメオスタシス同調の影響を受けにくくなり、洗脳から自身を守ることができるようになる。

ホメオスタシスの同調は通常長い時間を要するが、洗脳技術を用いると数時間で引き起こすことが可能とされている。また、ホメオスタシスの同調が長期間にわたる場合でも、それが洗脳である可能性があり、過去の歴史的事例としてナチスドイツや文化大革命下の中国が挙げられている。

ホメオスタシスの同調が起こると、相手と同じ内部表現を共有するようになるが、これが健康や精神状態に影響を与えることがある。そのため、ホメオスタシスの同調を行う際には、自己の内部表現を強化し、無敵の身体を構築する必要があるとされている。これにより、相手の病状態を書き換えても自身の健康状態は守られると説明されている。

相手とのホメオスタシスの同調は、自身が変性意識状態になり、相手の身体と物理的なホメオスタシスレベルで同調することで行うことができる。これにより、相手の変性意識状態が深まり、ホメオスタシスの同調が強化される。最終的には、相手は自己の内部表現を共有し、自己の内部表現に従うようになる。

このプロセスは武道の達人が行うテクニックにも通じるものがあり、相手の内部表現に直接作用することで、相手の行動や状態をコントロールすることが可能であるとされている。このようなテクニックは非常に高度なものであり、正しく理解し実践することが求められる。


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