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ヒポクラテスの誓い(2015/05/14)/中山七里【読書ノート】

「あなた、死体は好き――?」 栂野真琴は浦和医大の研修医。単位不足のため、法医学教室に入ることになった。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎の信念に触れた真琴は次第に法医学にのめりこんでいく。
彼が関心を抱く遺体には敗血症や気管支炎、肺炎といった既往症が必ずあった。「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。なぜ光崎はそこにこだわるのか―—。 凍死、事故死、病死……何の事件性もない遺体から偏屈な 老法医学者と若き女性研修医が導き出した真相とは? 死者の声なき声を聞く迫真の法医学ミステリー!

法医学の謎解き - 栂野真琴の挑戦

はじめに
浦和医大の研修医、栂野真琴は、内科教授・津久場の指示で法医学教室への研修を命じられる。ここで彼女が出会うのは、死者を深く愛する変わり者の光崎教授と准教授のキャシー。二人は生者と死者の区別をしないという異色の考えを持っていた。

事件の始まり
真琴の医師としての旅は、事件現場への突然の召喚から始まる。刑事の古手川は彼女に特定の死体を調査するよう依頼する。こうして彼女の新たな挑戦が幕を開けた。

加害者か被害者か
法医学教室に連絡してきたのは、9歳の少女・篠田凪沙。彼女の父が運転中の車が人をはねてしまったが、凪沙は父の無実を信じていた。一方、古手川は事故の可能性を疑い、捜査を開始する。

監察医の疑問
ボートレース中に事故死したレーサー・真山慎司。この死に対し、所轄の大森署は事故と断定。しかし、光崎はこの死に興味を示し、古手川に更なる調査を命じる。真琴と古手川は謎に満ちた捜査に乗り出す。

友人の死と解剖の謎
真琴の高校時代の友人・柏木裕子が肺炎で亡くなる。一見すると自然死だが、光崎は何故か裕子に興味を持ち、解剖を要求する。これには真琴も動揺を隠せず、感情的に反発する。

暴走の背景
真琴は津久場によって法医学教室へ送り込まれたことが判明。光崎の行動には、浦和医大を揺るがすような隠された真実があったのだ……

感想
この物語は、ただの死体好きと思われがちな光崎とキャシーの真の意図を徐々に明らかにしていく。真琴の視点を通じて、法医学の重要性と医師の成長が描かれる。また、この物語はエンターテイメントとしても秀逸で、日常のシーンや真琴と古手川の間の軽快なやり取りが物語に彩りを添えている。

この物語は、死と向き合い、真実を追究する法医学の世界をリアルに描きながら、人間ドラマの豊かさも見せてくれる。読者は真琴と共に成長し、最終的には解剖のシーンにさえ神聖さを感じるようになる。それは、真実への真摯な追求の旅として、深く心に残る物語である。


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