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音律と音階の科学 新装版 ドレミ…はどのように生まれたか(2018/5/16)/小方厚【読書ノート】

なぜ音楽は音をデジタル化し、ドレミ…を使うことにしたのか?
そもそもドレミ…はどうやって決まったのか?
なぜ特定の和音は心地よいのか?
簡単な数学で、知れば知るほどおもしろい音楽の秘密をあばく!
モーツァルトからピンク・レディーまで 名曲の陰に数学あり!

科学の眼で見る音楽と楽器
本書は、科学(おもに数学と物理学)の眼から見える音楽と楽器のあらたな一面を紹介するものです。およそ10年前に発売され20回以上増刷してきた人気作が、新たな内容を加え、装いを新たに生まれ変わりました!

本書の構成
第1章 ドレミ…を視る,ドレミ…に触れる
第2章 ドレミ…はピタゴラスから始まった
第3章 音律の推移――閉じない環をめぐって
第4章 なぜドレミ…が好き?――音楽の心理と物理
第5章 コードとコード進行――和音がつくる地形を歩く
第6章 テトラコルド――自由で適当な民族音楽
第7章 楽器の個性を生かそう
第8章 音律と音階の冒険――新しい音楽を求めて

音楽と数学
音楽はドレミ…という決まった音を使います。音とは空気の振動であり、わたしたちはその振動数のちがいを音高のちがいとして聞き取ります。音楽が決まった音(周波数)を使うということは、逆に言えば、それ以外の周波数の音を使えないということです。ドとレの間に音は無限に存在する(周波数を細かく区別できれば、無限の音を扱える)のに、音楽で使えるのはド♯(あるいはレ♭)だけ……。
音楽は音をデジタル化している、とも言えます。ではそのデジタル化はどのようなルールにもとづくのでしょうか? ここに簡単な数学が登場します。ドレミ…に割り当てられた周波数を並べて数列をつくってみると、学校で習った「ある数列」が現れるのです。

ピタゴラスのおかげ!?
音楽が使う音をデジタル化したのは、紀元前6世紀に活躍したピタゴラスでした(三平方の定理あるいはピタゴラスの定理で有名な、あの方)。彼は楽器を使って音の研究をしていました。ピタゴラスが1オクターブを構成する12音(音律)を決めた実験はシンプルで、私たちも簡単に再現することができます(方法は本書で紹介)。その実験は「心地よい和音」の理解にもつながります。
もちろん、音楽や楽器の進化とともに音律は変化をくり返してきました。しかし、根本のアイデアはピタゴラスから変わることなく生き続けています。世界のあらゆる名曲がピタゴラスのおかげで誕生したのかもしれません。

なぜ完璧で美しい「ピタゴラス音律」が使われていないのか?【ピタゴラス音律】

ピタゴラス音律と音階の違い
音楽理論において、音階と音律という用語が混同されることがありますが、実は異なる概念です。音階は音楽において使用される音の並びを表すものであり、例えば「ドレミファソラシド」などの7つの音から成り立っています。一方、音律は音の高さや距離に関する規則を指し、音階の音の高さをどのように定義するかを決定します。つまり、音律は音の高さの機能を規定し、音階は実際に使用される音を示します。
音律の役割
音律は音の高さの決まりを指し、一つ前の音との高さの比率や距離を規定します。例えば、1オクターブ上の音は通常、周波数が2倍になります。しかし、音階が決まっていないと、どの音がどの高さで演奏されるかが分からなくなります。
平均律の登場
現代音楽では、音階を均等に割る方法として「平均律」が広く使用されています。この方式では、1オクターブ内に12の半音が均等に配置され、音の比率が一定となります。具体的には、音を2の12乗根(約1.0594)倍することで、1オクターブ内の各音が得られます。この方法により、音階を合理的に扱うことが可能となり、広く普及しています。
ピタゴラス音律は美しい数学的な関係性を持っていますが、実用的な面では制約がありました。そのため、現代音楽では均等に割った平均律が主流となり、音楽の演奏や作曲に広く使用されています。

平均律(テンペラメント)は、音楽の調律システムの一つで、オクターブを12の等しいステップ(半音)に分割する方法を指します。具体的には、隣接する2つの音の周波数比が常に12√2(約1.05946)に固定されています。このため、12の半音すべてが等間隔で配置されているという特徴があります。
平均律の最大の利点は、すべてのキー(全ての主要および短調)で音楽を演奏できることです。これにより、移調や多くの異なるキーでの曲の演奏が容易になりました。この調律法は、特に鍵盤楽器(ピアノ、オルガンなど)での利用に適しています。
純正律とは対照的に、平均律では完璧に調和的な和音を得ることはできませんが、その代わりに多様な音楽的表現が可能となります。バロック時代後半からクラシック、ロマン派、現代に至るまでの音楽の多くは、この平均律に基づいて作曲されています。
歴史的には、平均律が導入される前にはさまざまな調律法(不均等律)が存在していましたが、18世紀に入ると平均律が主流となり、今日に至るまで広く使われています。

ドレミ音階の基本原理
この記事では、ドレミ音階の基本原理について詳しく解説します。まず、タイトルにある「ピタゴラス音律」について説明しましょう。

ピタゴラス音律とは?
ピタゴラス音律は、紀元前5世紀に活躍した数学者ピタゴラスによって発見された音楽の仕組みです。この音律は、音の高低を周波数によって説明します。周波数は、振動が1秒間に何回繰り返されるかを示すもので、高い周波数ほど高い音を、低い周波数ほど低い音を生み出します。

音の高さと周波数の関係
音の高さは、弦の長さと周波数に反比例の関係があります。つまり、弦の長さを半分にすると、周波数は2倍になり、高い音が鳴ります。この関係を利用して、ドレミ音階の音を作成できます。たとえば、周波数を2倍すると、1オクターブ上の音になります。

音程の重要性
音楽において、特に「完全五度」は重要な音程です。完全五度は、半音7個分上の音で、美しい響きを持っています。音楽を奏でる際に、この音程を活用することが多いのです。
ピタゴラス音律は、音楽と数学の結びつきを示し、音楽の理論的な裏付けを提供します。これを知ることで、より豊かな音楽表現が可能になります。音楽の世界において、ピタゴラスの知識は貴重なものとなるでしょう。

純正律とは

純正律(ピュア・イントネーションまたはジャスト・イントネーションとも呼ばれる)は、音楽の調律システムの一つで、音の高さ(周波数)の比率が単純な整数比となるように調律されたものを指します。これにより、調和的な響きや清らかな和音が得られます。

歴史的に見て、純正律は古代ギリシャの時代から知られており、特にピタゴラスによって研究されました。ピタゴラスは、弦の長さの整数比が単純な和音を生むことを発見しました。例えば、弦の長さを半分にすると(2:1の比率で)、音の高さが1オクターブ上がることなどが確認されました。

しかし、純正律には問題点もあります。全てのキーで純正な和音を持つことは不可能で、移調すると調和が狂ってしまうことがあるため、実際の演奏においては他の調律法(例えば平均律)が使われることが多いです。平均律は、オクターブを12の等しいステップに分けることで、どのキーでも同じように音楽を演奏できるように調整されています。


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