見出し画像

シリコンバレーに住んで感じた、成熟した資本主義の大きな違和感。

シリコンバレーに住んで3ヶ月が経ちました!

著書「エンジェル投資家」のジェイソン・カラカニス主催の投資家イベントに参加したり、現地の起業家とお茶したり、プロダクトデザイナ養成所Tradecraftでスタートアップにアドバイスしたりと幅広く活動中です。

そんな中感じたのはシリコンバレーのエコシステムにいる大半の人がグロース(成長)に躍起になっている事。スタートアップの成長のためならなんでもする風潮です。この記事ではそんなシリコンバレーのいきすぎたデジタル資本主義社会、そしてその先の未来について綴ります。


シリコンバレーのグロース文化

ここでは出来立てホヤホヤの会社でも有望と判断されれば数百億円の価値がつきます。

デジタル資本主義の競争に勝つため、ベンチャーキャピタルは有望と判断したスタートアップにはお金を燃料の如く注ぎ続けます。

これらのお金は会社の成長のために人材やマーケティング等に大半が注がれます。採用された彼らはシリコンバレーで確立された、LTVモデル、デザインメソッドなどのフレームワークを使いこなし、KPIを設定し、会社の成長に直接結びつく定量的な数値を上げることに専念します。

スタートアップの世界ではグロース(成長)は全ての問題を癒してくれる唯一の解決策であり、正義です。

単一的な価値観(起業家)

シリコンバレーの良い所はすぐそばに世界中から集まった多種多様な起業家がいること。気軽にビジネスの話しができます

起業家A「こんなアイディア思いついたんだけどどう思う?」

起業家B「クレバーだね!デカくなりそう!それならこういうグロース方法がいいよ。」

みたいなノリで、意見の交換やノウハウの共有が盛んです。

当初私が想像していた、世界をよりよい場所にするために活動している起業家も中にはいます。それと同時にデジタル資本主義の波に飲み込まれ、オリンピックで金メダルを手に入れるかの様に、競合に勝ちマーケットを独占する事にフォーカスが当たり過ぎている起業家も多い気がします。

シリコンバレーには様々なバックグラウンドを持った優秀で多種多様な人材がいます。しかし、彼らは世界をより良い場所にする事以上に、次のユニコーンを生み出す事の方が大事な雰囲気です(グーグルやアマゾンみたいなすでに社会的な責任がある規模感の会社は別)。

単一的な価値観(投資家)

起業家と同じく投資家も同様の価値観を持ってます。

ジェイソン・カラカニスは彼主催のイベントで投資家についてこんな発言をしていました。

投資家の中にはお金のためじゃなくて、より良い世界にしたいからあなたに投資をしたいんだと言う人がいます。そんな綺麗事は全部うそ。それは、彼らがすでに成功し一生使いきれない資産を持っているから。大半の投資家が本当に気にしているは、あなたに投資したらいくらお金が戻ってくるか。そのお金で次の豪華なジェット機を購入し、承認欲求を満たせるか。ただそれだけだ。

(ちょっと誤訳もあるかもしれませんが大体こんな感じ!)

ちなみに彼の新たな目標はシリコンバレーで歴代最高の投資家になる事らしいです。そのためにはあと最低6社ユニコーンは見つけないといけない様。大変だ!

このピッチイベントで彼が大半の起業家に質問していた事は、過去の売り上げと成長率。アイディアの良し悪しは予想できないので、売り上げと成長率が彼の基準値を満たしているかを確認。その後に創業者の人柄とバックグラウンドをチェック。売り上げを出しているプロダクトがないと基本相手にしてもらえません(過去に実績があれば別)。

起業家と同様に、投資家も成長に重きを置いています。

グロース(成長)は世界を良い方向に導いてる?

シリコンバレーからアップルやグーグルなど、世界最高のベンチャーが創出されました。同時に数々の起業家や資産家を創出し、資金やノウハウが共有され、さらに多くのメガベンチャーが生み出される好循環なエコシステムが出来上がっています。

エコシステムが成熟した結果、システム内のゲームを攻略する事に躍起になり、人類全体の幸福の向上や社会全体の最適化が疎かになっている様に感じます。

例えば、シリコンバレーに住む優秀な人材の給与は高騰しています。それと同時に、家賃や物価も高騰しております。そんな中、サンフランシスコの街中はホームレスで溢れかえっています(日本でいう表参道的な所のすぐ隣にも関わらずめっちゃいる)。とにかく街が臭いです。今あなたが想像した匂いの2倍は臭いです。アメリカでは上位20%の人間が富の80%を握っているらしいです。Twitter本社で数千万円稼ぐ人のすぐ横で沢山のホームレスが物乞いしているのを見ると不思議な気持ちになります。アメリカ社会の縮図を見ているような感覚。

今回はホームレス問題を出しましたが、世界の違う所でも歪みが出ているのでは?企業のグロースは富を一部の人間に集中させ、世界の大きな問題の解決を疎かにしているのでは?いずれリーマンショックの様に、デジタル資本主義が崩壊する未来も遠くないかもしれません。

IDEOが提唱するCircular Design

デザインの世界ではデザインファームIDEOが提唱するCircular Designと言う取り組みがあります。

現在のデザインアプローチHuman-Centered Design(人間中心デザイン)では人の行動にのみフォーカスがあたってました。個人の行動を観察し企業が利益が生めるサービスを設計するのがHCDです。

例えば、Uberの顧客体験を向上するにはHCDは最高です。人間中心デザインでUBERの乗車体験を設計すれば、利用者は増え企業に利益をもたらします。ただ、社会全体として考えた時、それが正しいとは限りません。

とある研究によるとライドシェアリングサービスは個人所有の乗用車が一台公道からなくなる度に、2.6マイル以上の交通量を増やしているそうです。移動を便利にするはずのライドシェアリングアプリは渋滞を起こす元凶になっていると。

HCDに対しIDEOが提唱するCircular Designは一企業の利益だけではなく、様々な角度から社会全体の最適解を考えるデザイン思想です。様々な組織と協業しながら、テクノロジーやビジネスをフル活用し、世界全体が良い方向に向かうために持続可能な社会コミュニティや解決策を創造するためのアプローチです。

企業の利益以上に社会全体の事を考えられる、凄く良いアプローチだなと感激しました

今後未来はどうなるの?

企業の成長に重きを置くよりも、各組織が協業しながら世界全体の問題を解決する事にフォーカスできる世の中になって欲しいなと思ってます(完全に理想論!)。

ブロックチェーンの様な技術が普及し、独占的な企業の力が分散され、一人一人が個人の利益や成長ではなく、社会への奉仕や貢献に意識が向き始めた時、新しいムーヴメントが起こるのではないでしょうか。

終わりのない企業や個人の成長に重きを置く社会ではなく、人類全体への奉仕や貢献こそが個人のハッピーに繋がる社会システムを作りたいな!

参照

スタートアップ向けメンタルコーチング

脳科学/心理学/認知科学/マインドフルネス/ポジティブ心理学/仏教の知見がつまったスタンフォード大学教授が開発したPQ(Positive Intelligence)をベースに、人生のパフォーマンスを最大化するための習慣Tipsや思考法をあなたに合わせてお届けしてます。


この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?