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【朗読】光の子ども

文月悠光
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空の赤い心臓を目指して 幼いわたしが駆けてゆく。

 *

空をぐるりと見渡して
幼い指で光をなぞった。
光は歓び、たちまち雲間を泳ぎだす。
わたしは光の子ども。
月から生まれて 太陽へ還る。
この世の宝の地図に刻まれている。

洗いたてのシーツを
風に ぱんと張ってみるとき、
そこに日は昇り 日は沈む。
発光する白い地平線に包まれ、
わたしたちは眠る。
殴るような嵐のあと 一筋ひとすじの光となって
あなたのいる丘に降り立とう。
この地に四肢をゆだねて 染みるように
溶けていくに任せるのだ。

光はうつろいながら旅をする。
空は暮れなずみ、秋の幕が上がる。
空の赤い心臓を目指して
幼いわたしが駆けてゆく。
いつか この星からこぼれ落ちても
雲の両手にすくわれて、帰ってくる。
そのとき わたしは知らせるだろう。
ひと際、懐かしい風を吹かせて
青い惑星を すみずみまで巡る。

詩「光の子ども」文月悠光

*「婦人之友」2020年9月号 ミヨシ石鹸さん広告より。
毎月、裏表紙広告欄に詩を書き下ろしています✍
写真:岩倉しおりさん

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