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報告書DAY3

かんずめになっている。

拉致、軟禁。

三日目はこうだ。

朝またパンが出た。
出た。という感じなのである。うわぁ、出ちゃったよ。という感じなのである。
袋に入っているパンがやたらでかくて固くて、さながらゴローンである。腕をもがれた、ミロのゴローンである。本来の用途としてバターを塗る、チーズやハムを挟むなどをするはずなのだが、パン3種といつもと同じポテトサラダとキャベツの千切りとコーヒー以外には何もない。なんならフォークすらないときがある。とりあえずかぶり付ついて、7割食う。自分がクルミ割人形になったと錯覚する。或いはマシーン。パンが輪廻転生するためのイニシエーション。
拝啓
君は、ポテトサラダの水分を感じたことがありますか?
やっとメガネのオヤジが言うことがわかりました。いつか君と何処かへしけこみたい。
ps (ドーナツのような空白)
cape

労働を終え、部屋で眠る。

起きたら、身体がまだ仮病で眠っていた。
叩き起こして、どこが痛むのか説明させるために、人体解剖図鑑をさがしに行く。
人体解剖図鑑は美術コーナー(4F)、健康コーナー(4F)、医学コーナー(5F)に散らばっており、どれも求めるものではなかった。
抽象化された、ペールオレンジの皮膚とサーモンピンクの臓器と新潮文庫の伊坂幸太郎の背表紙みたいな静脈は、私の体内にはない、と身体が首を振った。
「しかし、君は実際に自分の中身をみたことがあるのか」と聞くと、
「ないけど、わかるのだ。皮膚はもっと黄みがかっているし、臓器はゴールド、動脈と静脈はそれぞれキキララみたいなファンシーな色で、カラフルに光るラメが流れている」
嘘だと思ったけど、実際に見たことがないから否定もできないので口をつぐむ。

諦めてディスクユニオンに行って、野坂昭如のアルバムを見つけて買わずに部屋へ戻った。

部屋に戻ってまた寝た。

もう劇場を見ることもしなくなった。