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『四顧溟濛評言録』

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私、雁琳が書を読み世事を鑑みる中で私かに惟うことを綴りました、中編から長編の文章を載せて参ります。「溟濛」とは薄暗く先の見えないことを指します。どこを見渡してみてもこの暗い世の中… もっと読む
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2019年4月の記事一覧

「歴史家達の闘い」についての雑感

 最近、主に歴史学周辺で「知識がない人の自由な発想」の問題が大きな論議を引き起こしているようである。一躍ベストセラーとなった『応仁の乱』(中公新書、2016年)をはじめ、多くの専門的な啓蒙書を上梓している気鋭の日本中世史研究者の呉座勇一氏(国際日本文化研究センター助教)は、百田尚樹氏や井沢元彦氏、或いは久野潤氏や八幡和郎氏といった、歴史学者ではないが歴史についての通俗書を執筆している著述家達と日夜

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人間の愚かさについての哲学的序説−「愚かさ」を理解するとはどういうことか

 人間は愚かだ−今までもしばしばそう言われてきたし、これからもしばしばそう言われ続けるであろう。然り、殆ど多くの場合、人間は愚かだ。我々は往々にして、見通しが利かず、判断を誤るし、思い込みや謬見、或いは短絡的な感情に囚われ、放埓や粗暴に走る。それは事実である。しかしこれほど先進的な文明の中に生きる我々ですら尚もそうだとすれば、人類は文明の誕生以来ずっと知恵を追い求めてきたはずであるのに、尚も愚かし

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