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【35年後に街や暮らしはどうなっているのだろう】

1.高齢化の進展

35年返済の住宅ローンを借りて住まいを買うと、ローンを完済した頃に街や暮らしはどのように変化しているのでしょうか。総務省の人口推計によれば、我が国の総人口(10月1日現在)は、2005年に戦後初めて減少し、その後に2010年に1億2807万人でピークとなって、2011年以降はずっと減少し続けています。2023年10月1日現在の確定値は1億2453万人で前年と比較すると59万5千人減少しています。一方、65歳以上の高齢者人口は、1950年以降ずっと増加し続けていましたが、2023年9月15日現在では3623万人で、前年と比較すると1万人減少しましたが、高齢化率は29.1%と前年から0.1%上昇し、過去最高となりました。

2.地方財政が逼迫(ひっぱく)

この数字が今後どうなっていくのかは、同じく総務省の「我が国における総人口の長期的推移」によると、2050年の人口は9,515万人となり、高齢化率は39.6%になる見込みです。2040年に日本の人口は、およそ1億1100万人と、今より1500万人あまり減少し、全国のおよそ4分の1の自治体で、人口はいまの半分程度になるそうです。高齢者人口がピークを迎える一方で、若い労働者の絶対数は減り続け、労働力不足が更に深刻化し、社会保障費や老朽化したインフラの修繕費などで、行政の支出は増大します。逆に収入は人口減少による所得総額や地価の下落の影響で税収が落ち込むので、地方財政は一層厳しくなると予測しています。

3.地方自治体の圏域連携

そうした状況を見据えてAIやロボットなどの導入を前提とした『スマート自治体』や複数の市町村による『圏域での連携』などが提案されています。人口減少社会では、地域の中心都市でさえも、都市機能が維持できなくなってしまうからです。人口が減り、自治体の力が弱くなれば、今の様にそれぞれの市町村が単独で、全ての行政サービスを提供することは難しくなってしまいます。そうなると中心市と周辺の複数の市町村からなる『圏域』を単位として、行政を進める手法をスタンダード(標準)とせざるを得ません。地理的条件などで圏域に入れない地域などは、都道府県が直接補完・支援することになります。

4.コンパクトシティ

都市的土地利用の郊外への拡大を抑制し、同時に中心市街地の活性化を図り、生活に必要な諸機能が近接した、効率的で持続可能な都市を目指した都市政策である、コンパクトシティ政策に向けて、既に舵を取った自治体も少なくありません。都市再生特別措置法、中心市街地活性化法などの立法やその後の改正も進んでおり、立地適正化計画が策定され、居住誘導区域の指定も各地で行われているのですが、公共交通の整備を軸にした富山市や熊本市、コペンハーゲンや総合病院の移転を軸にした花巻市のような成功例ばかりではありません。再開発ビルを建設した青森市のような失敗例もあり、ポートランドが1970年代末から住民参加で行っている丁寧な街づくりに学ぶべきでしょう。不動産業者と建設業者はその中心となって、住みやすい街の未来像を提案してほしいと思います。

5.立地適正化計画

高齢者は介護費や医療費など社会福祉に頼る部分が大きくなりますが、これらを支えるのは現役世代です。少子高齢化に伴って全国の自治体にかかる財政的負担が大きくなっています。それに加えて戦後から高度経済成長時代にかけて築造されたインフラ(道路鉄道などの交通施設、電気・水道・ガスなどの供給施設)が更新時期を迎えようとしています。福祉予算で財政が逼迫している状況で、現在と同じようなレベルでインフラ維持を行うことは困難なので、今までのように過疎地域も含めて満遍なくインフラを高度な水準に保つのではなく、「コンパクトな街づくり」というコンセプトのもとで、個人住宅、オフィス、公共施設、医療施設、商業施設などを一定のエリア内に結集させて、集中的にインフラ投資を行うことが計画されています。それが立地適正化計画で、インフラの維持というハード面だけでなく、公共交通のあり方なども見直して、都市全体の構造を作り直そうというソフト面も含まれています。簡単に言えば、人口が減ってしまうので、居住・活動エリアを一部の地域に限定して、限られた予算を効率的に使いましょうという計画です。これまでも各自治体での取り組みで、コンパクトシティというコンセプトが取り入れられていましたが、立地適正化計画は都市計画法に基づいて、「市町村マスタープラン」の一部として位置づけられており、都市全体の将来像に向けて、地域や住民を誘導していくことを目的としています。ですから立地適正化計画の対象となる地域は、概ね都市計画区域と重なっています。

6.居住誘導区域

立地適正化計画では、自治体内のエリアを今後も住宅地として発展させていく「居住誘導区域」、あるいは居住誘導区域の中でも特に都市機能の集中を目指す「都市機能誘導区域」などと、居住や都市機能の誘導対象とならない「居住誘導区域外」に分けていきます。2023年12月31日現在で札幌市や新潟市、仙台市など全国で703の自治体が計画へ着手、そのうち537の自治体が計画を作成・公表しています。そして東京都でも八王子市、福生市、調布市、狛江市など10の自治体が取り組みを始めました。
居住誘導区域は今後も居住に適したエリアであるとして、居住環境の改善や公共交通の確保が重点的に行われる区域であって、区域内への居住を誘導する地域です。医療機関や学校などの公共施設が優先的に配置されます。

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