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天皇の行方 第四章及び第五章

著:GeArmy888



四 皇居と元首


現在の皇居は高い塀と堀に囲まれて、外界から隔離された雰囲気がある。
しかし、これは元々江戸城であったからであり、皇室の伝統ではない。
皇居が東京に移転される前には京都御所に天皇は千年以上にもお住まいで
いらっしゃった。その京都御所には、堀や石垣などはなく、あるのは
数人がかりでかかれば壊せそうな塀だけであった。しかも御所は
定められた期間に自由に参詣できる身近な信仰の場であった。このような
無防備な状態で千年以上も攻め入られたことがない王は世界中どこを
見ても例がない。

現在の宮殿は昭和四十三年に完成した。この宮殿は、
「威厳より親愛、荘重より平明」を基本理念とし、資材は一次産品以外は
すべて国産が使われた。設計には当初より一般参賀を念頭に中央バルコニー
を有する細長い「長和殿」を配置した。ここから中庭を挟んだ奥が
正殿であり、その中には「松の間」「竹の間」「梅の間」がある。
「松の間」では信任状奉呈式が行われる。
これは新任の外国の特命全権大使が天皇に信任状を渡す儀式で
外務大臣がこれに立ち会う。国際的に、大使などの着任にあたり、
派遣国の元首が発する信任状をうけとるのは、駐在国の
「元首」という事になっている。つまち、天皇が日本の元首である
ということは国際常識なのである。
さて、天皇の「徳仁」という署名と「天皇御璽」と刻まれたはんこ。こ
れらを合わせて「御名御璽」というが、この二つがなければ
日本国は動かないのである。
もちろん個々の決定に天皇が意見するわけではなく、あくまで
形式的・儀礼的ではあるが、この天皇の役割は、戦前から引き継がれた
ものである。戦前の昭和天皇も「立憲君主」であり、内閣が機能不全に
陥った「二.二六事件」と終戦時以外は自らの意思で政策を
決定したことはなく、天皇は常に内閣を承認する役割であった。
「昭和天皇の戦争責任」とは、「今上天皇の首相任命責任」と同義である。日本は現在も立憲君主国であり、天皇は日本の象徴であるとともに
れっきとした元首であると考えられる。


五 三種の神器


皇居には「宮中三殿」と称される三つの祭殿があり、天照大神を祀る
「賢所」歴代天皇、皇后、皇族を祀る、「皇霊殿」八百万の神々を祀る
「神殿」がある。この三殿の御神体は三種の神器の内の一つである
八咫鏡であった。
三種の神器とは八咫鏡と草薙剣、八尺瓊勾玉のことをいう。

皇居の神器のうち、鏡と剣は「分身」である。鏡の本体は伊勢神宮に、
剣の本体は熱田神宮にある。ここでいう分身とは蝋燭の火を分けるように
神様の分身を増やすのと同様、分身も本体に準ずる神器である。
神話の世界から伝えられてきた「三種の神器」を引き継いでいることが
天照大神の子孫である天皇の証であり、神器を持たないものは
天皇として認められない。「三種の神器」は世界最古のレガリアなの
である。
レガリアとはそれを持つことで正当な王位継承者である証となる
象徴のことであり、例えばイギリス王室には王冠、王笏、宝珠がある。
日本では天皇が亡くなると「継承の儀」が行われる。
このことから「三種の神器」は天皇の命よりも大事であることがわかる。
これは天皇崩御の際、葬儀よりも継承が優先されたことで証明されている。仮に戦時中、昭和天皇が命を落としても、「三種の神器」さえあれば「天皇」という存在は守られる。しかし「三種の神器」がなくなれば
(この呼び方は不敬にあたるので使用することは好ましくないがあえて
言うならば)ヒロヒトが生き残っても「天皇」は消滅する。
天皇消滅とはすなわち日本消滅ということである。

国民とは単に日本列島に生息する霊長類ヒト科の動物のことではない。
国の歴史を受け継いで初めて「ヒト」は「国民」となる。歴史が消滅して
しまったら「国民」もなくなるのだ。
欧米の歴史が長い国もそうでない国も、それなりのお国柄(国体)があり、
それが国民精神の支柱となって、活力となっている。
歴史から完全に切り離された国を作ろうとしたソ連や中国は既に御存知の
通り強制収容所が多数存在する虐殺国家となった。歴史とはそれぐらい
国家において重要なものなのである。

昭和天皇が終戦の際に三種の神器を守ろうとしたのは
二千年継承されてきた歴史を守ろうとしたのであり、国を守ることそのもの
であった。これを当時「国体護持」と言った。「三種の神器」が
破滅すれば日本は日本ではなくなってしまう。

天皇は「三種の神器」を守り、国家を守り、伝統を守り、国民の安寧を祈る祭祀王である。



次回、第六章「天皇は神だったのか?」第七章「天皇はカミである。」
御清覧いただきありがとうございました。

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