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11/28 CEVチャンピオンズリーグ ピアチェンツァ対ハルクバンク [試合分析レポート⑥]

メイン画像:Libertà記事

11月にヨーロッパチャンピオンズリーグが開幕しました。
参加チームは以下の31チームで、ヨーロッパ各国リーグの上位チームです。

(画像:cev.eu)

注目なのは、ポーランドだとレゾヴィアザクサジャストルゼブスキ
イタリアだとルーベピアチェンツァ
あと今一番熱いリーグと言われているトルコリーグからはハルクバンクジラート
というところでしょうか。
各国リーグ戦を観るには、それぞれの放送を契約する必要があるので難しいですが、CEVはYouTubeの放送が低価格で観れるのでありがたいです。

さて今回は、そのチャンピオンズリーグからピアチェンツァ対ハルクバンクの試合を分析していきます。

目次はこちら☟


試合分析は他にも次のマガジンに掲載しています。

対戦チーム

スタメン

Gas Sales Bluenergy Piacenza

(画像:Volleybox)

ピアチェンツァは、東京五輪ベストセッターのブリザール選手、ナショナルのヨーロッパチャンピオンメンバーであるロマーノ選手、イタリアリーグ最強のミドルブロッカー・シモン選手、そしてバレー超大国ブラジルのエースのルカレッリ選手とレアル選手というまさにオールスター。
現在、オポジット(OP)の17番ロマーノ選手が怪我で離脱しているため、控え選手が出ているみたいです。

セッター(S) 6番  ブリザール
オポジット(OP) 4番  ジローニ
アウトサイドヒッター(OH) 8番 ルカレッリ9番 レアル
ミドルブロッカー(MB) 13番  シモン18番  カネーシ
リベロ(L) 10番  スカンフェルラ

Halkbank Ankara

(画像:Volleybox)

今年トルコリーグは各国スーパースターが集結していて、一番注目ともいえるでしょう。
ハルクバンクは東京五輪MVPのヌガペト選手、カナダのぺリン選手、昨年世界No.1オポジットのニミル選手など強者揃いです。

セッター(S) 13番  マー
オポジット(OP) 14番  ニミル・アブデルアズィズ
アウトサイドヒッター(OH) 2番  ぺリン9番  ヌガペト
ミドルブロッカー(MB) 5番  マティッチ17番  ウル
リベロ(L) 8番  ドネ

試合結果

ANK(ハルクバンク)   -    PIA(ピアチェンツァ)
             3                       -                    1
1st       25                      -                    19
2nd     25                       -                   18
3rd      19                       -                   25
4th      25                       -                   21

試合分析

項目別成績

上がハルクバンク、下がピアチェンツァの項目別成績です。
赤字になっているところは、相手チームと比較して成績が良かった数値です。
              ANK      PIA
サーブ    (+8.0%) 12.1%    4.1% 
ブロック   (+7.0%) 30.4%   23.4% 
アタック   (+7.6%) 36.5%   28.9% 
レセプション (+9.8%) 57.2%   47.4% 
ディグ    (+1.8%) 69.7%   67.9% 
全ての項目でハルクバンクが上回りました。
特に差が出たなと思うのが、サーブレセプションです。

サーブとレセプション ・・・ハルクバンクのサーブ戦略

14番 ニミル選手と9番 ヌガペト選手のサーブ力が異次元でした。
2人ともサービスエース数・サーブ効果数ともにとても多いですね。
それぞれチーム全体のサーブコースを見ていきましょう。

左側はハルクバンク、右側はピアチェンツァがどこにサーブを受けたかという図になっています。(上がネット側で下がコートエンド側です)
なので、左側がピアチェンツァ、右側がハルクバンクのサーブコースになっています。
わかりづらくてすみません。
コートエンド側から見て、ハルクバンクのサーブはコート右側に多いですね。

サーブを狙うコースは普通、・フォーメーションの弱点となる位置を狙うレセプションの苦手な選手を狙うスパイカーが助走を取りにくいように狙う というのが一般的です。
ピアチェンツァの9番 レアル選手はレセプションが苦手なので、試合前の予想ではレアル選手が多くのローテーションでレセプション位置になるコート左側を重点的に狙うのだろうと思っていました。
しかし、実際には8番 ルカレッリ選手10番 スカンフェルラ選手の位置を狙うことが多かったようです。
レアル選手を狙って上手く返されるよりは、サーブを強く打てる位置にいる、バックアタックの得意なルカレッリ選手をけん制する方が良策と考えたのでしょうか。
また、ピアチェンツァは3セット目から不調だったオポジット(OP)の4番 ジローニ選手に変えてレアル選手を、もとのレアル選手の位置にディフェンス力の高い3番 レチネ選手に替えたことでコート左側という穴が無くなったからだとも言えます。

アタック・・・ハルクバンクのサーブによる効果

ハルクバンクのバックアタック狙いのサーブの効果が、トス配分から見て取れます。

左側がハルクバンク、右側がピアチェンツァのトス配分です。
レフト・センター・ライトのトス配分の表を見ると、ピアチェンツァのセンターのトスの割合が低いことが分かります。
ピアチェンツァの方がレセプション返球率が低いからトスを上げにくいセンターの割合が減っているのもあると思いますが、クイック攻撃の数はピアチェンツァの方が多いのでやはり相対的にセンターからのバックアタックの本数が少ないといえます。
決定率が高いセンターのバックアタックを封じることでハルクバンクが優勢に試合を進められたのかなと思います。

また、もう1つ分かるのが、ピアチェンツァのライトのトス割合が多いのに対してライトからの決定率がかなり低くなっているということです。
もともとスタメンのロマーノ選手が欠場でジローニ選手が不調だったので、その位置にオポジットではないレアル選手が入ったのですが、慣れないポジションということもあって決定力が低かったのだと思います。

そんなレアル選手ですが、1,2セット目のレアル選手のレフトからのスパイクは見事でした。

1,2セットの合計でレアル選手はスパイク本数18本 得点数10本 ミス1本 アタック効果率50%という活躍でした。
図はレフトからのコンビ攻撃のスパイクコースですが、ストレート・クロス・インナーコース全てでブロックをうまく使った得点が多かったです。
レアル選手のスパイクはパワーも高さもあり、ボールの回転もとても強いことが特徴です。
他の選手にサーブがいっていた分、レアル選手の強みである高さのあるスパイクが打てていたのかなと思います。

ブレイクポイント-Halkbank

上の表はハルクバンクのブレイク・被ブレイクです。
S3,S5,S6のローテでブレイクが多かったです。
S3の前衛…ヌガペト(OH)、マティッチ(MB)、マア(S)
S5の前衛…ぺリン(OH)、マティッチ(MB)、ニミル(OP)
S6の前衛…ぺリン(OH)、ウル(MB)、ニミル(OP)
逆に、被ブレイクはS4で多くなっていました。
これは3セット目に8番 ルカレッリ選手の強力なサーブでレセプションが乱されて計8回ブレイクされたことが原因でした。

ブレイクポイント-Piacenza

そしてこちらがピアチェンツァのブレイク・被ブレイクです。
先ほどでも触れたS6ローテでブレイクが多くなっています
S6の前衛…レチネ(OH)、カネーシ(MB)、レアル(OP)
ブロック力の高いカネーシ選手・レアル選手が揃うのでレフト側からのスパイクが打ちづらく、また得点されやすいインナーコースにはレチネ選手がいるのでディフェンス力が高かったと思います。
そして前衛にはブロックアウトの上手いレチネ選手と高さのあるカネーシ選手レアル選手、後衛にはバックアタックにルカレッリ選手という、OP後退から生まれた偶然の布陣が功を奏した結果だったと思います。

逆に被ブレイクはS4ローテでかなり多かったです。
下の図はS4ローテで一番被ブレイクが多かった2セット目のハルクバンクのサーブコースです。
2セット目はレアル選手がまだアウトサイドヒッターを務めていましたが、レアル選手にサーブが集中していて効果的なサーブが多かったことが見て取れます。
最初のハルクバンクのサーブ策略のところで、レアル選手を狙うという予想をしていたと書きましたが、この段階ではバッチリレアル選手を狙っていたようです。

全体を通して

ピアチェンツァはアウトサイドヒッター(OH)の攻撃力の高さがとても目立った試合だったと思います。
しかし1,2セット目はオポジット(OP)が不調レセプションが苦手なレアル選手を狙われると、なかなか得点をすることが難しかったようです。

しかし、3セット目にOPにレアル選手が代わり、OHにレチネ選手が入るとディフェンス力・オフェンス力が高くなりました。結果的にハルクバンクが対応できないまま3セット目はピアチェンツァが取りました。
この場面、ハルクバンクはなかなか流れが切れず、ヌガペト選手が結構イライラしていたなーという記憶があります。
さすが大物選手なだけあってなかなか雰囲気がピリピリしてて怖かったです笑。(ヌガペト選手自体は大好きな選手の一人です。)

流れのままピアチェンツァが優勢だった4セット目でしたが、ハルクバンクはサーブでバックアタックをけん制しつつOPのポジションに不慣れなレアル選手のミスヌガペト選手のサーブが走ったこともあり、最後はハルクバンクが4セット目を取りました。

ピアチェンツァは本来のOPであるロマーノ選手が欠場で大幅な戦力ダウンでしたが、レアル選手がOPに入るパターンが今回うまく回っていたように感じたので、今シーズンはレアル選手をOPととして使い続けるという選択肢もありではないかなと思います。


いかがだったでしょうか。
今回は比較的直近の試合にフォーカスして分析をしてみました。
このような日本人選手がいないような試合でも続けていけば、より注目してくださるファンの方も増えていくかなーと思っているので、たまにやっていこうと思います。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございます!
今後の投稿も楽しみにしていてください!

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