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[RIZIN] 大海を知るファイター、金原正徳

9月24日に埼玉スーパーアリーナで行われたRIZIN.44。

そのメインベントとなったクレベル・コイケVS.金原正徳のフェザー級トップクラスの戦いは、RIZINフェザー級をより混沌とさせる結果となった。

フェザー級
●クレベル・コイケVS.○金原正徳
判定0-3で金原正徳の判定勝ち

日本人ファイターを悉く退け王座獲得の経験もあるクレベルが、タイトル戦線復帰へ向けて落とす事の出来ない一戦で日本人相手に黒星を喫してしまった。

これにより金原はタイトルマッチへグッと近づくことになり、ヴガール・ケラモフVS.鈴木千裕の勝者と戦うことが濃厚になった。

兼ねてから望んでいたケラモフとの対戦、もしくはベルト持つ王者との戦い、どちらに転んでも金原にとって全力をかける意味のある待望の戦いを迎えることが出来る。

金原正徳の勝因

これまでクレベルはKSWでベルトを巻き、RIZINでも勝利を重ね続けその実力を繰り返し披露してきた。

確かにクレベルは強く、その極め力は脅威的だったけれど、高い柔術レベルを持ちながらそれをMMAに組み込ませることが出来ている選手が他にいなかったという、国内MMAの成長が足りていない部分がクレベルの勝利を助けていたところもあると思う。

それは同時に高いレベルのMMAに触れている選手の少なさを表しており、海外の舞台で強豪との勝負を経験してきた選手が極端に少ない傾向にある。

その経験と技術の差が勝敗に大きな影響を与えていることは間違いないだろうと思われる。

現にクレベルの総合力は海外の強豪選手(UFC・ベラトールの上位ランカー)と比べるとそこまで高いものはないと思う。

柔術のレベルもサトシほど突出しているわけではないので、そこに対応できる選手も(海外だったら)それなりに出てくるのではないかと思う。

ただ国内にはそういった事が出来る選手がほとんどいなかった。

その中で過去にUFCで戦った経験を持つベテランMMAファイターの金原正徳は、そこに対応出来るだけの知識と技術を持ち合わせていた。

日本のぬるま湯に浸かってクレベルの牙が錆びたとの見方も出来るが、元々クレベルには自身の柔術を掻い潜られたり組みで自分の形を作れないと手詰まりになってしまうといった欠点があるので、ウィークポイントを的確に突いた金原がクレベルを攻略した上で勝利を呼び寄せたということに間違いはないだろう。

クレベルクラスの選手を経験している上に、それに対応する知識と技術を持ち合わせた総合力の高さが金原正徳を勝利へと導いたのではないかと思っている。

それが対クレベルに特化した戦術や立ち回りを可能にしていたようにも感じた。

また、MMA・総合格闘技は当然その総合力の高さが強さに直結していくので、バランスよく守備範囲が広い方が対応力のある安定した試合運びが出来る。

その地力の違いや、格闘技に向き合ってきた時間の違いが試合に出たところもあるのかもしれない。

あと斎藤裕が指摘していた減量のキツさによるパフォーマンスの低下もあったのか、クレベルの動きの悪さを感じる場面も多々あった。

ただ階級を上げるとサトシとぶつからなくてはならなくなるので、クレベルはこのままフェザー級に留まるだろうと思われるが、年々歳を重ねるごとに減量の厳しさが体に与える影響は大きくなってくると思うので、それを考えると今後王座を奪還するのは難しくなってくるのかもしれない。

それよりも何よりも金原正徳が40歳という年齢でありながらも、チャンピオンクラスの日本人キラーを相手にして尚リング上で正確でクレバーな仕事が出来ていることに驚きを感じた。

地道で丁寧な練習の積み重ね、格闘技への真面目な取り組みが浮かび上がってくるような勝利だった。

海外選手にとってイージーな環境

海外選手に対応できる選手の少なさが目立つ中で、今後より多くの海外選手が入って来ることになれば日本人ファイターが活躍する場はどんどん狭まっていくことになるだろう。

海外で実力を示すファイターが一人二人と流れてくれば、忽ち日本の市場は食い荒らされていくことになる。

海外から流れてくる選手にとっては、上手いこと勝ち星を稼げて収入にも繋がるという願ったり叶ったりな状況になるかもしれない。

そんな外のための団体となってしまわないように国内レベルの向上を期待したい。

ただ、日本では各競技(ボクシング・レスリング・柔道・空手など)が横並びに連携をとる流れや仕組みが発達していないので、円滑に総合力を上げる事が難しいという問題がある。

体格で劣りながら知識や技術でも劣っていたら当然勝つことは難しくなる。

なのでまずは元谷友貴や牛久絢太郎のように海外に拠点を移し、その技術を外から輸入していく流れを作っていく必要があるのかもしれない。

幸いもっと若い世代は外への挑戦に積極的に動き、堀口恭司らが開拓してきた道をより大きく広げていっている。

若い世代の成長は確実に未来へ繋がっていくので、この流れがより大きなものとなって伝わっていくことを期待したい。

現役のファイターで既に経験を積んでいる選手たちの間でもATTへ移った彼らのような動きが浸透していくと、国内一線級のレベルも底上げされていくのではないだろうかと思う。

そして金原正徳のように外からやってきた強力なファイターを退けることが出来る国内ファイターの誕生、そして骨組みの強化がなされた状態でRIZINの大会を見てみたい。

その為には長い時間気長に待つ必要があるかもしれない。

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