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第二回 にっかつロマンポルノ

ーあの頃、昭和だった。ー

 最近何かとバラエティ番組なんかで、昭和のことがとり上げられているね。今の若い世代の人たちからすると、あり得ないようなことが多かったりするみたいで、別世界のような感覚で驚かれていたり、面白がられていたりするんだろうな。
 ここでは昭和生まれのボクが、今も強く思い出に残っている昭和時代の残像を、色々なエピソードを交えてコミック調で断片的に切り取っていくよ。
 同じ世代の人や先輩世代の人、昭和を知らない世代の人達にも、楽しんで読んでもらえたらいいナ。

 ホラ、そこの古びたトランジスタラジオに耳を寄せれば、聴こえてくるじゃありませんか、あのメロディが。
 ♬ 古き時代と人が言う 今も昔と俺は言う
   バンカラなどと口走る 古き言葉と悔やみつつ ♬
 てね。

 ねえねえ、にっかつロマンポルノって知ってる?
 ホントはこの話題はもうちょっと後で取り上げようと思ってたんだけどね、何かと旬なタイミングもあったから、書かせてもらうことにしたんだ。
 にっかつロマンポルノは昨年で生誕50周年で、今年そのプロジェクトとして、新作3本が製作されて、公開されたんだよ。
 ボクは金子修介監督の「百合の雨音」を鑑賞したんだけど、そのことを知人の女子に話したら、
「ロマンポルノって何ですか?」
 って言われちゃった。そっかー、知らないんだな。ってなったのもあって、この二回目のテーマに選んだ訳。
 だから今回はどちらかと言えば、その女子と同じようなZ世代(ところでボクは何世代なの?)の人たち向けの記事になる。
 と言っても、作品の批評とか評論はなし。なぜならボクはかろうじて映画館で観れた世代で、ボクより先輩の60~70代位の人たちの方が中心世代であるし、世の中にはもっと詳しい人たちがいるからね。
 それでもじゃあ何で書くんだよ?というと、知ったかぶりはできないけど、にっかつはボクの青春時代に浅からぬ縁があるからなんだよ。

 にっかつは映画の製作会社で、その昔は石原裕次郎や小林旭の映画で一世を風靡したけど(当時は日活)、テレビの影響もあって映画自体が廃れる中、1971年に方向転換して、成人向けのいわばエッチなポルノ映画を作るようになったんだな。それが「ロマンポルノ」と謳われるようになった訳。
 それで低予算で作品を連発していく訳だけど、あくまで映画であって今のようなAVじゃないから、脚本もあるし演出する監督もちゃんといる。
 俳優さんでは、
「団地妻昼下がりの情事」の白川和子さんとか、
「赫い髪の女」の宮下順子さんなんかは、その後もドラマや映画でも活躍してるね。
 美保純さんだって、「ピンクのカーテン」というロマンポルノから人気が出たんだよ。
 ポルノ映画だからって馬鹿にできなくって、「赫い髪の女」は作品自体の評価がとても高いし、主演の宮下順子さんは賞を受賞してるぐらい。ただ、そのうち表現もエスカレートしちゃって、作品によっては監督さんが猥褻の罪で逮捕されちゃったこともあった。
 監督さんだって、ここから有名になった人も数知れず。
「探偵物語」の根岸吉太郎
「ビーバップハイスクール」の那須博之
「おくりびと」の滝田洋二郎
「家族ゲーム」の故・森田芳光…
 その他名前を挙げたらキリがないほど。みんな「ロマンポルノ」で監督としての腕を磨いたと言っても過言じゃないよね。

 と、ここまでが「ロマンポルノ」としてのザッとした説明。Z世代のひとたち、わかっていただけたかな。
 さて、ここからがボクとにっかつの話になる。ムズイ人は飛ばして結構。
 記事タイトルの写真にドキッとした人もいたかもしれないけど、この写真は昭和58年に公開された、
「セーラー服百合族」
のスチール。
 ボクは公開当時、高校1、2年生だったと思うんだけど、まだビデオレンタル屋さんもない時代で、とにかくエロいモノを観たくて仕方なかった。だけど成人指定の映画だから、当然未成年だったボクには観れない、というか劇場に入れてもらえない。だけども、どーしても観たい…!
 で、この悲願を達成するべくクラスメート数人で、思い切って渋谷の劇場に行ってみたんだな。だけども、みんな童貞しだるまの顔つきだったから、切符売ってるオバチャンに早々にバレてアウト。ガッカリなんていう気分じゃ言い表せないほどのガッカリで、みんなトボトボ帰ったんだけど、そのうちクラスメートの一人に、三軒茶屋の劇場は誰でも入れてくれるらしいというネタを仕込んできたヤツがいて、次の日曜だったかにみんなでソレッて突撃した。
 で、入れてくれたんだなあ、これが!この時の切符売ってるオバチャン(何でか切符販売はオバチャンが多かった)の顔が、ボクには女神に見えたなあ。
 この時の上映作品は、
「セーラー服百合族1.2」
「セーラー服色情飼育」
の3本立て。
 百合族はコミック的な作品と揶揄されたみたいだったけど、いやー、当時の自分たちにしたら、そりゃコーフンしたね。いっぺんで主演の山本奈津子さん(記事写真の左)のファンになったさ。小田カオルさん(右)はボーイッシュな魅力で、色気があったね。
 余談になるけど、もう一本の「セーラー服色情飼育」は、可愛かずみさんという新人の女優さんが出演していて、アイドル顔だったから、久しぶりにロマンポルノから期待の新人がデビューしたって話題になった。
 その後期待通りに売れはじめたんだけど、その矢先飛び降り自殺をしてしまって、それも当時随分話題になったね。彼女は映画ではそんなに濡れ場があった訳でもなく、グラビアでヌードを披露してはいたけど、そんなキャリアに人知れず悩んでいたんじゃないかって、もっぱらの噂だったけど。これはとてもショッキングな出来事だった。

 あと忘れられないのが、劇場の天井崩落事故、というのがあった。
 記憶が正しければ「ロマンポルノ」を上映していたと思うんだけど、その劇場が古くて上映中に天井が崩落してまさかの客席に落下。それで大騒ぎになったんだけど、救急隊が駆け付けた時には誰も劇場にいなかったんだって。お客さんたち、みんな恥ずかしかったようで逃げちゃったらしいんだな。後で被害届けを出しに行った人も一人もいなかったって。そりゃそーだ、時間潰しの会社の営業マンとかもいただろうから、サボッてポルノ映画観てましたって、バレたら大変だもんね。これは、ちょっと笑った事件だったな。

 ボクのプロフィールを見てくれた人は気づいたと思うけど、ボクはそのにっかつが設立した「にっかつ芸術学院」のシナリオ科の中退生。
 特にロマンポルノとは動機は関係ないけど、シナリオ(脚本のことね)を学びたかったんだ。でも、シナリオを書く授業は楽しかったけれど、いつまでも退屈な講義ばっかり聞いてるのはつまらないし、場所は遠いし、学費ばかり高くて馬鹿バカしくなって一年で辞めちゃった。もっとも半分くらいのヤツが消息不明になってたな。せっかく撮影所の中に学校があったんだから、もっと実習やれないのかって、みんな不満爆発だったね。当時はロマンポルノも下火になってたから、製作費集めだったのかもしれないけどさ。
 ボクはビンボー学生だったから、昼飯も撮影所の食堂で300円の残飯を集めたような日替わり定食か、ただカラいだけのカレーばっかり食べてた。でも唯一良かったのは、そこでクサイ、じゃなかったマズイ飯を食った友人と、今でも映画を語りあえることだね。

 で、長くなったのでここらでお終いにするけど、はじめに言ったように、令和版「ロマンポルノ」が製作された訳。東京ではもう上映終了しちゃってるみたいだけど、11月25日からフォーラム福島でレイトで3作品日替わり上映するみたい。
 ボクの観た「百合の雨音」は平成版「ガメラ」シリーズを作って絶賛された(ボクも大スキで3作品全部観てる)、金子修介さんが監督している。
 金子監督はにっかつ時代はボクがファンだった山本奈津子さん主演で「濡れて打つ」でデビューして、そのあと「OL百合族19歳」なんかも撮ってる。怪獣以外では百合モノが得意なのかな。そーいえば「1999年の夏休み」なんか、ちょっと百合っぽかった気もするね。

ヒューマントラストシネマ渋谷で公開された、令和版「ロマンポルノ」3部作

 最後に、もー少しだけ!
 ロマンポルノの問題作「恋の狩人 欲望」に出演して話題になった田中真理さんという女優さんがいるのだけど、この人がゲスト出演した「必殺仕事人」の「仕事人危うし!暴くのは誰か?」は、出色の出来なので、関心のある人はぜひ視聴されたし。とにかく彼女の鬼気迫る演技と、ドキドキなストーリー展開、貞永監督のパンチの効いた演出に圧倒されるよ。

 ここまでお付き合いいただけた方たち、本当にアリガトー!
 感謝、感謝です。
 ではまた次回、バイナラ。

 
  オレが昔ロマンポルノだった頃、
  父チャンは浪漫飛行で、
  兄貴はポルノグラフティーだった。
  わかるかな?
  わっかんねーだろうなあ…。

 


 


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