見出し画像

質問しない男

Tinderだろうがゼクシィ恋結びだろうが友達の紹介だろうが、出会った男の子との楽しい会話を成り立たせているのはすべてわたしの質問力だった。手前味噌じゃない。謙遜はしない。わたしは質問上手だ。なぜなら、シンプルに、「相手に心から興味を持って臨む」からだ。なのに男たち。ああ、どっと疲れる。もうだめ。もう頑張れない。

この1年で、「初めまして」で食事をした男の子の数はざっと30人くらいだろうか。凌くんみたいな外道のセフレにいつまでも執心していてはいけないという謎の危機感が、常にわたしを出会いの場に駆り立てていた。

そこで摑んだ感覚は「なんか30代になってからのほうがやたらモテるな」だった。客観的に見て謎だった。20代あんなにモテなかったのになんだこれは。という意味で。したがって、1年ほどかけて時々自己分析をしていた。

大きく分けて3つくらい要素があるとすれば下記。

1)写真よりきれいに見える(写真うつりが異様に悪い結果)

2)服装がきれいめ(自分のファッションセンスに愛想を尽かせて雑誌に迎合した結果)

3)話していてとても楽しい(これ!これが諸刃。)

1,2はもう水野敬也先生の言うとおりにしたんです。スパルタ婚活塾です。

いや、別にモテたかったわけではないのだが、「なるほど男の頭の中がこうなっているのであれば、ビジネスシーンでも楽になるだろうから、見た目はこういうふうにしておこう。だってセンスないから。」と思った次第で。おかげで本当に職場でプライベートのこと突っ込まれなくなって楽になったし、そしてまあ、前述のように、初めましてで出会った男の子に「あ♡」っていう反応をされるようになった。

本題は3である。

わたしは営業マンとして育った。営業マンの生命線はヒアリングだ。わたしが、クライアントヒアリングに天文学的な時間を費やした結果、たどり着いた手法はたったこれだけ。

「相手に興味を持つ。」

本当にそれだけだ。相槌とかミラリングとか、そういう手法ももちろん学んだが、根本的にはただただ「相手に対して、興味と好奇心を絶やさず発揮し続ける」、これだけだ。

しかも大切なのは「虚心」になること。まあ各種ヒアリング関連の名著に記載してある通りだが、人間はいつも「次に自分は何を言おう」かを考えながら人の話を聞いてる生き物だ。それをやめて、限りなく純度高く「相手のことをもっと知りたい」と思う、それだけ。

ちなみに、自分の経験を話すのも割と大事。質問攻めだと「婚活刑事(デカ)」になるし、日本人はたいてい、自分の話ばっかりしていることに不安を覚えますから。相手の話に自分の経験を引き寄せて理解しようとしながら自分の話も割と大胆に赤裸々にする。そうすると相手はもっと話したくなる。

ちなみに「聴く」関連で究極に好きな本はこれ。

でね。もう仕事で習慣になっちゃってるんで、Tinderで出会おうが友達の紹介で出会おうが、とにかくその「好奇心の原則」で対峙してしまうんですね。

当然、2時間のディナーなんて、相手からしたら「わーなんか俺めっちゃ喋っちゃった。」「初対面と思えないくらい深い話してしまった」「こんな話できる女のひと今までいなかった」ってなる。

こんなに俺のことわかって俺の話聞いてくれる、きれいで知性的なおねえさん。ってなる。

一方のわたしの感想。

あ~~~~~どっと疲れた~~~~~~

何をやっているんだろうと自分でも思う。思うが、このヒアリングの呪縛から抜け出せないのだ。瞬間的には楽しめているのだ、そうじゃないとヒアリングにならないから。単純に新しい情報の獲得、という意味において楽しんでいるのだ。だが、疲れるのは疲れる。

結果、わたしのことを好きになってくれた男の子はもちろん何人かいて、2回3回とデートしたり、まあ若い子からすれば「これって付き合ってるよね」という関係になってしまったり、するわけだが、さすがのわたしも、毎回ヒアリングしていたら疲れる。

いつも虚心になり、相手の話に耳を傾け、相手の状況をありありと思い浮かべようととして脳味噌を駆使し、わからないところは素直に質問し。

って、実際はそんなに興味ないもの。極論、家でゲームオブスローンズ見て、ネット記事DIGって、原作読んでるのが幸せな根暗人間ですよ。そんなに質問してたら疲れるさ。

で、これじゃ続かねえな、と、共感の努力や質問の努力を少し緩める。

と途端に会話が続かなくなる。

なぜなら、彼のほうは、わたしに質問しないからだ。

さっさと自分の意見を言って、無知が露呈するのを嫌って話題を変える。

ああ、このひと、全然興味ないんだな、全然理解できないんだな。

わたしが質問の姿勢を取り下げただけでこんなにディスコミュニケーションになるなんて。

それはあなた、「わたしのことが好き」っていうのは嘘ですよ。虚言ですよ。

わたしといると、「自分に興味関心を持ってくれる素敵な女の人がいる」、ということで、自分があたかも素敵な人間になったかのような幻想を抱けるだけだ。

ドラッグとおんなじだよ。

っていうディスコミュニケーションを生んでいるのはほかでもないわたしなんですけどね。わたしが質問させる隙を作っていないのかもしれませぬ。

いや、それにしても、わたしが相手に興味を持つ以上に相手からそれが返ってこないから、なんだか虚しくなる一方なのだ。

質問なんて「え、それってどういうこと・・?」「たとえばたとえば?!」「なんでそう思うの?!」程度のことなのに、男たちはあまりにも質問しないよね。

っていうなかで、最近、こっちが眠そうでも勝手に自分の話をしてすっきりしていく男の子がいて、まあ、それはそれでけっこう面白いなと思って見ている。

いずれにせよ一人でバードボックス観るわ。今年、50本目。年末駆け込みである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?