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「男の身だしなみ」入門 第5回 ネクタイ編:『THE21』寄稿

※本記事は『THE21』 10月号(2015年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。

ネクタイは相手への礼儀を表わす!

ネクタイは仕事モードに切り替えるスイッチ!

 ビジネスパーソンの装いに彩りと個性を感じさせるアイテム、それがネクタイ。きゅっと締め上げた瞬間に、表情がさっと引き締まる。普段からネクタイをしている人も、そうでない人も同じようにそうさせる、その人の中のオフィシャルなモードをオンにするスイッチとなる面白いパーツとも言えます。またその選び方、扱い方に、価値観やメンタリティ、仕事との向き合い方などがはっきりと表われる部分でもあるのです。

 年の半分がクールビズ期間となっている昨今の日本。ネクタイなしの姿で仕事をする時期が年の半分もあるということになります。酷暑とまで言われる日本の夏に、ネクタイ着用で仕事をするのは大変でしょう。

 しかし、大事なクライアントとのアポイントがあれば、クールビズ期間であろうがネクタイをして向かうのがビジネスパーソン。やはり皆さんネクタイを締めているほうがきちんとした印象を与え、仕事人として信頼感を抱いてもらえるということを感じてはいますよね。

 そんなネクタイ着用の効用を改めて実感したのは数カ月前のこと。出張のために空港に向かう車を呼んだときです。一般的にカジュアルな格好の多い、NYのカーサービスの運転手さんたちですが、その日、私を迎えにきた人はちょっとだけ違いました。

 ジャケットは着用していないまでも、プレスの効いたシャツを着て、ネクタイをキリリと締めていたのです。その姿を見たときに、私は自分の本業を通した目線ではなく一人の客として、単純に「これは嬉しい」と思いました。そこには、その人の、お客さんを丁重に扱い、安全な運転をしますという仕事への姿勢と意志がはっきり見て取れたから。

 その第一印象は違うことなく、道中の運転はもちろんのこと、トランクから重たいスーツケースを出し、私を送り出してくれる最後まで、彼のサービスは本当に気持ち良く完璧で、鮮明に記憶に残っています。

 彼がネクタイをしていたから私が良い印象を持ったと思われますか? 確かにそれもあるでしょう。でも、それだけではありません。しなくても良いネクタイをわざわざするという選択から、彼の仕事への真剣度と自信を実感したからだったと確信しています。

 ネクタイは仕事のオンオフを切り替えるスイッチ。そしてその身につけ方に、その人の仕事への真剣度や相手への敬意が宿ります。秋になり日本でもネクタイを着用する機会も増えますね。皆さんのネクタイ、仕事スイッチはオンになりますか?

ネクタイの適切な〝長さ”

 ネクタイを結んだ際の正しい長さは、大剣の先がベルトのバックル中央にあたるくらい。また、シャツの襟元までしっかり締め上げます。襟元とノットの間に隙間が見えたり、結び方が緩くノットが曲がっていたり、ネクタイ自体が身体の中央に真っすぐ位置していないと、だらしなさが漂います。注意しましょう。

NG例

 ネクタイ自体が長いインポート物は、大剣がバックルよりも下にきてしまうケースを目にしますが、NG。また、ノットを大きくする結び方で、大剣がベルトよりも上になっているのもNG。ネクタイの長さ、生地の厚みなどにより、プレーンノット、ウィンザーなど結び方を変え、長さとノットのバランスを取るのがスマートです。
 また、ネクタイは消耗品。高額であったり気に入っているものでも、よれたりシミがついたり、剣先から糸が出始めたら現役引退。また水玉など、白い部分のあるネクタイは、白い部分が黄ばんだら、使用中止です。

ネクタイの色やガラの種類

 ビジネスシーンで必携の色は、「信頼感と清潔感」の紺(青系を含む)と「勝負」の赤。柄は、遠目に無地の織柄や、ストライプ、ドット、小紋柄です。文化的背景による柄の意味はありますが、視覚的には、しっかりしたストライプが、最もシャープ感がありインパクト大。

写真撮影/まるやゆういち


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