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オススメ映画を語ろう:オジ&デス対談第4弾 Vol.3

オススメ映画語りもいよいよ3本目。コミュニケーションの重要性や「生きる」ことと「生存すること」の違い感じさせる『ウォーリー』と家族の絆が修復されるという王道とは逆に展開する『ヘレディタリー』という全く毛色の違う映画の話をしていますが、もう少しお付き合いください。

オジサンのオススメ③:『ウォーリー』

オジサン じゃあ、ボクの3本目のオススメにいきますね。3本目は『ウォーリー』!そうですよ、早く観てくださいよ!

デス ディズニーDXも入ってるしね。

オジサン そうですよー。まぁ、「ディズニー映画なんてオレには縁のないやつでしょ?」ってかんじであんまり観てなかったデスのひとに、これまでにもディズニー映画はいろいろオススメして観てもらってるんですけど…。『眠れる森の美女』から始めたんでしたっけ?

デス うん、『美女と野獣』も観たし、あと『アラジン』と…

オジサン あ、でも『塔の上のラプンツェル』が最初でしたね。

デス ああ、そうだった。で、プリンセスものでは、その次は『アナと雪の女王』だよね。その後、ディズニーDX入って…。プリンセスものとは少し違うけど、『シュガー・ラッシュ:オンライン』を劇場で観て、そのあと『シュガー・ラッシュ』も観た。

オジサン それと『リトル・マーメイド』も観ましたよね。

デス ああ、そうだった。うん。

オジサン とまぁ、色々観てもらってるんですけど、ピクサーはまだあんまり見てないかんじですよね、こうしてみると。で、プリンセスものじゃないやつで、とりあえず『ウォーリー』を推そうかなと思って。
 ウォーリーってのは、ゴミ回収ロボットなんですけど、汚染が進んだせいで人間がみんな地球を捨ててしまった後、ひとりぼっちで取り残されてるんですよ。太陽電池なんで壊れない限り充電できるんで、ひとりでおなかにゴミを回収して圧縮して正方形にして片づけるってのをずっと続けてるんですよ。で、友達はゴキブリなんです。

デス 生命力が強いからね、ゴキブリ。

オジサン そう。で、お家に古いビデオデッキを持っていて、古いミュージカル映画(『ハロー・ドーリー!』)のワンシーンを繰り返し観てるんですけど、そこで恋人同士が手を繋いでいるのをみて、いつか誰かと手を繋ぐことに憧れてるんですよ。
 そこに地球探査ロボットのイヴがやってきて、ウォーリーの初めてのロボット友達になるんですよ。で、このイブっていうのは、地球の汚染が浄化されて再び居住可能になったら帰ろうと考えた過去の人類が、植物が育っているかとかを調べるために定期的に探索に送り込んでいるロボットなんですよ。
 で、ウォーリーはイブにくっついて、人類が暮らしている宇宙船に行くんですけど、そこで人間はどうなっているかっていうと…。ちょっと『マトリックス』じゃないですけど、生まれてから死ぬまで一生椅子に座ったままみたいなかんじで、自分の足で歩いたこともないし、食事も自動的に提供されて、ずっとネットに繋がっているから、他人と直接コミュニケーションをすることもないんですよ。
 ウォーリーが宇宙船に紛れ込んだことで、いろいろシステムにエラーが起きて、人間が対面コミュニケーションをしたり、子供を守ろうという意識が芽生えたり、だんだん人間らしさを取り戻していくっていう話なんですよ。つまり、孤独にゴミ回収してたロボットが全人類に人間性を取り戻す話なんですよ!

デス なんかそれ、似たような話があった気がするな。

オジサン まぁ最終的に、みんなで「地球に戻ろう!」ってなるんですけど、その間に色んなロボットが出てきたり、メインコンピュータみたいな悪いやつと対決することになったりとかするわけですよ。で、そういうのも、みんなかわいいから、早く観てください。

デス でもさ、それ、ある意味ディストピアものだよね。

オジサン まぁそうですね。ディストピアものだけど、そこからの再生を描いているからハッピーエンドだし…

デス そこはディズニーらしいよね。

歌うディズニー

オジサン そう。映像も素晴らしいし、話のテンポもいいし…。ただね、ピクサー作品なので、そこはね、旧来のディズニーと違ってミュージカルではないんですよね。昔のディズニー作品って、なにかにつけて歌ってますからね。

デス あ、そっか。じゃあ、やっぱ『シュガー・ラッシュ』なんかも、ディズニーにしては歌ってないから…

オジサン ピクサー色が強いかんじはありますね。

デス 『ベイマックス』なんかもそうか。確かに、言われてみればプリンセスものはみんな歌ってるイメージあるなぁ…。あ、『ライオン・キング』も歌ってるよな…。なるほどねぇ。

オジサン プリンセスものに限らず、『わんわん物語』とかでも歌ってますからね。って、なんかさっきから、ボクのオススメ理由ってわりと適当な感じですけど…まぁとにかく『ウォーリー』はかわいいので…

デス ってことは、やっぱりオジサンっぽいの?スターウォーズのBB-8っぽいんじゃないの?

オジサン BB-8っぽいっていうほどかはわかんないですけど、まぁ、人間の表情ほどは顔が動かせないけれど表情豊かっていうところは近いかもしれないです。れっどさんとかは、お掃除ロボットがボクに似てるって言うんですけど…。手がお掃除のコロコロみたいになってて、モーって名前なんですけど、ウォーリーは地球からきて車輪にドロとか埃がついてて床を汚すから、それを見つける度に「モー!!!」とかって怒って掃除するんですよ。

デス (笑) そこがオジサンっぽいわけか。

オジサン ボク、そんな年中怒ってないんですけど…

デス いや、オジサンは割とよく怒ってるっていうか、今も若干キレぎみで喋ってるじゃん(笑)

オジサン そんなことないですよ!キレてないですよ。まぁ、かわいいから5億点ってとこありますけど、たぶん、泣いちゃいますよ。あ、でも、デスのひとあんまり泣かないからな…

デス まぁ、泣かなくても感動はしてること多いからさ。まぁ、それは是非観ないといけませんね。

オジサン まぁ、『ノートルダムの鐘』の方を推そうか迷ったんですけどね…。

デス せっかくディズニーDX入ってるし、それも観ないとね。今年はアナ雪の続編と『マレフィセント』の続編もあるしね。

オジサン じゃあ、『マレフィセント』も観ないといけませんね!

デスのオススメ③:『ヘレディタリー/継承』

オジサン で、デスのひとの3本目は『ヘレディタリー/継承』ですよね。

デス まず、あらすじだけど…、あるお祖母ちゃん、娘夫婦、中学生くらいの男の子と小学生の女の子の5人家族の話なんだけど、まずお祖母ちゃんが亡くなるところから始まる。でもね、みんな、お祖母ちゃんの死をあんまり悲しんでないんだよ。その始まりからして、この家族には何か因縁があるんだなという感じなんだけど、最初に話した『ハロウィン』の場合だと何が家族の不和の原因になっているかがわかってるけど、『ヘレディタリー』ではそれがよくわからない。

オジサン むしろそれが話の肝なわけですね。

デス そうそう。簡単に言うとね、『ハロウィン』なんかもそうだし、人間性をきちんと描くようになった近年のホラー映画では、基本的には家族が再生されていったり何かを乗り越えていったり、あるいは血は繋がってない者同士が家族のような絆を紡いでいくんだけど、『ヘレディタリー』は家族という結びつきがひたすら悪い方向にいくという話。しかも完成度が異常に高い。監督のアリ・アスターはこれが長編第一作目なのにいきなり凄い作品を作ってしまったわけだけど、本人はこの映画を「実体験に基づいている」って言ってて、よほど家族関係でトラウマちっくなことがあったんだろうなって思うんだよね。そういう精神的に後味の悪い作品。
 『ヘレディタリー』の予告編はオジサンも映画館なんかで観てたと思うんだけど、なんかこうオカルトっぽいのかなぁってかんじするじゃん?で、実際その要素があるんだけど、オレは『死霊館』とか『エクソシスト』的なものを期待して見にいったから、見終わってすぐは、案外怖くなかったなって思ったんだけど…

オジサン そう言ってましたよね。前評判が「ものすごく怖い」って話でしたからね。

デス でもね、オレ、この映画一回しか見てないんだけど、すごく細部までよく覚えてるんだよね。それだけ印象に残る、見てるものを惹きつける力のある映画で、伏線のはりかたも回収の仕方も本当に見事で、すごく緻密に計算して作られているキング・クリムゾンの曲みたいな映画でさ。そういう緻密さには感心したんだけど、そんなに怖くなかったんだよね、って、要するに分かりやすい即物的な怖さみたいなのがね…

オジサン つまり、びっくり脅かし系とか気持ち悪いものがでてくるとか殺人鬼が暴れるとかそういうのはないってことですね。

デス そうそう。ジャンプスケアって呼ばれる、暗闇からバーッ!って何かが出てくるような演出はほとんど使ってないわけ。でもね、半日後くらいにね、すごい精神的にくる映画。

オジサン …そんなものを他人に勧めないでくださいよ。

デス いや、でもさ、自分にとっての嫌な体験を物語にしてみるっていう、追体験的な作業そのものが人間にとってはリハビリになるっていうじゃん。この映画の中でも、トニ・コレット演じる「お母さん」はミニチュア模型アーティストなんだけど、このひとが作ってるミニチュアってのが自分の家で、家族内で起きた出来事をそこで再現しているんだよ。だから、映画が入子状になっていて、登場人物が自分の身に置きたことを模型にして再現することで浄化してるんだよ。で、この映画自体にもそういう効果がある!監督自身も実体験をもとにしていると言ってるしね。

「家族」や「縁」の描かれ方

デス あと、日本は未だに戸籍制度なんかがあって、家父長制の名残とか血縁主義がすごく強い国だし、現実には単一民族国家ではないのに麻生太郎みたいな大臣という立場の人間がさ、単一民族国家だとか言っちゃうくらいにそういう幻想が強いわけだよ。で、他の先進国と比べても、排他的で村社会的なものに縛られがちで、封建的で保守的なとこがあるし、家庭内での女性差別とか虐待とかそういうものへの対策が遅れてる。そういう社会で生きていると、少なからず、変な血縁・地縁・しがらみのせいで嫌な思いをしているひとがいると思うんだよ。そういった「縁」というものによって嫌な思いをしたひとには、共感できるってとこがポイントだし、緻密なストーリーと伏線がラストに向かって回収されていくさまと、その終着点が恐ろしいんだよ。演出や構成が素晴らしいというのと同時に、物語として考えるととても怖い。
 あとカメラワークも素晴らしいんだよね。無駄がなくて。密度が濃いってかんじ。音楽も…さり気なくアブストラクトというかアヴァンギャルドというか…変な電子音とか終始ね、不穏で…

オジサン …そんなもんを他人に勧めないでくださいよ。

デス でもね、素晴らしいんだよ!それが!観たらわかる!!あのね、どうやったらこんなにひとの生理的嫌悪感を誘うような映画を作れるのか、しかも露悪的な方法を使わずに。タランティーノとかイーライ・ロスとかロドリゲスとかロブ・ゾンビみたいなさ、サブカル露悪趣味的な手法を使わずによくもこんなもんが作れるな、とその才能に感心するし、そこにはある種の普遍的なドラマがあるわけですよ!!!ね!だから勧めてるの!

オジサン (笑)まぁ、ボク、カエルだしぬいぐるみだし…血縁とかしがらみとかないですけどね…

デス それはオジサンが異端なんだからさぁ!でもさ、世の中的にそういうひとが多いことは知ってるでしょ?

オジサン わかってますよ、大丈夫です。

デス とにかくね、単に映画のクオリティとしてすごいから、まず映画好きとして見てほしいってのがある。

オジサン まぁ、あの、『ヘレディタリー』は、デスのひとが観てきて「あんまり怖くなかったな」とか言ってたのに、その後で「いや、やっぱり怖いかも」とか言い出したのをよく覚えてるんですけど、その後、ネタバレありで詳しく聞いたじゃないですか。

デス え?そうだったっけ?

オジサン そうですよ。それで、まぁ、それなら観ても大丈夫かなぁって思ってはいるんですけど、改めて、観た後に精神的にくるとか言われると、やっぱり止めようかな…とか思いますよね。

デス あのね、あれと同じような嫌悪感を催すのは…デヴィット・リンチの『イレイザーヘッド』かなぁって思ったんだけど、ただ、手法が違うからな。描いてる嫌悪感は近い感じがするんだけど、リンチは日常と非日常が混ざり合ってて、ストーリーも緻密に構築されているというよりも割と抽象的な作りになってるから、その辺は違うかな。

オジサン ボク、『イレイザーヘッド』はキーヴィジュアルはわかるんですけど、観たことないかもしれないです。

デス あ、そうなの?あれもね、ある種の「家族に関する」映画だね。

オジサン 家族映画。あ、そう言えば、ボク、ヒューマンドラマみたいなものをひとつも推さなかったですね。家族映画で良い映画だと『バックマン家の人々』を推しますね。

デス ああ。名前は聞いたことあるけど、あんまよく知らない。

オジサン コメディ畑のスティーブ・マーティン主演ですけど、コメディではないんですよ、その映画では。キアヌ・リーブスもバックマン家の娘の彼氏役で出てますよ。スティーブ・マーティンが出てるから、どうせ『スティーブ・マーティンのSGT.ビルコ/史上最狂のギャンブル大作戦』みたいな変な映画だろうと思って観たら、ふつうにいい映画だったんですよ。

デス まぁ、ヒーロー映画でもなんでも、広い意味での家族もの映画ってのは多いよね。

オジサン 家族ものって、基本路線は、問題を抱えた家族が、なにかトラブルを一緒に乗り越えることで絆を取り戻すっていうかんじじゃないですか。パニック映画でもホラー映画でもディザスターものでも、そういうパターンって多分よくあるんだと思うんですけど、『ヘレディタリー』はその逆だから後味が悪くなるんでしょうね。

=Vol.4に続く=

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