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「香り研究家」 香料が辿ってきた歴史や背景を探ることが喜びです✴︎

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最近の記事

オレガノは古代ローマの美食家が愛したスパイス

苦味のあるミントというイメージのハーブ。私の中でも地味な存在ではありますが、ドライの葉をポプリに使用したり、少し男性的な印象が欲しい時に使う香料です。 調べていくと、歴史は古く薬用としても優れた効果を持っているようですが、現在ではイタリアやメキシコ料理などに使われるお料理用のハーブの一つです。古代ローマの美食家はオレガノがソースの味を美味しくするスパイスだと書物に残しています。苦味と辛味のある香りはトマトやチーズとよく合います。 同属のマジョラムは甘くすっきりした香りが魅

    • イランイランは愛しい恋人

      東南アジアが産地の甘く官能的な香りの精油 花をココナツオイルに浸して作られるポマードは雨季に蔓延する感染症の予防にもなり、肌や髪の毛に塗ることで潤いを保ち保護することもできる。アジアの湿った灼熱の中でイランイランの香りがむせかえるように香っていたら若い恋人たちは理性を保てないでしょう。 精油は水蒸気蒸留法で同じ花から4〜5回抽出される。一番初めにゆっくり時間をかけて抽出された精油がエクストラとして最も香りが良い。 イランイラン油(エクストラ)は香水の構成に欠かせない香料

      • イモーテル(ヘリクリサム)は痛いの痛いの飛んでいけ

        黄色い小さな花をつけるキク科の植物。色と形そのままにドライになるのでエバーラスティング〜永久に続く〜と呼ばれるハーブ。 この植物の花と茎葉から水蒸気蒸留法で抽出される精油は甘く優しいフローラルな香りで可愛らしい印象ですが、我が家ではバスケットボールの選手だった娘の打撲やたんこぶの特効薬として常備していました。 アロマテラピーでは、効果効能を語ることは薬事法に触れるので禁止されていますが。。。(小さな声で)ひどい打撲に塗布すると魔法のように青あざが消えるのを何度も経験してい

        • 安息香<ベンゾイン>は呼吸のお守り

          インド、インドネシア、トルコ、タイなどに育つ熱帯の高木 アンソクコウノキ エゴノキ科の樹脂 バニラのような甘く温かな香りで、茶色の濃度の濃い液状の香料は溶剤で希釈されていることが多く、香水の香りを長持ちさせる保留剤として、また粉末はポプリの保留剤として使用されます。 中国や中世ヨーロッパでは気管支や喉の炎症の治療に樹脂が焚かれたり、香膏として処方されました。 咳や風邪の伝統的な吸入剤「フライヤーズバルサム」の主要成分でもあり、呼吸器のお守りのような香料です。 甘く温

        オレガノは古代ローマの美食家が愛したスパイス

          アトラスシダーは力の木

          北アフリカのアルジェリアとモロッコ国境にあるアトラス山脈に生育するマツ科の植物 キャラウェイ油のように騎士の剣の浄化にも使われたと言われるアトラスシダー油は、逆境を乗り越え経験から力を得る助けになります。 甘さのある深いバルサム調の香りは端正な容姿の力強い騎士のイメージ。私はこの精油の香りを特別大切に感じています。 古代から抗菌や防腐、防虫効果があるとされ、木材に含有する精油が多いために寺院や宮殿、船や棺などが作られた。 薬や化粧品、香水の原料として使われ儀式の薫香と

          アトラスシダーは力の木

          クレオパトラは香りを溺愛していた

          古代エジプトの女王クレオパトラは全身に香りを纏い、神殿や船も香りで満たした。 誰もが彼女の香りに惑わされひざまづく。絶世の美女は麗しい香りによって生まれたのかもしれません。 ジャスミンは欲望を湧き起こしまどろみを誘う、ローズは甘く優しくハートを温める、ハーブやスパイスや動物性の香料や樹脂。それぞれに特徴ある香りと心身に働きかける作用で人の心を操ることができる香水術。 これから香りの旅へ出かけましょう。

          クレオパトラは香りを溺愛していた

          数千年も香り続ける香り「キフィ」

          香りとは目に見えないものですが、私たちの世界から香りが消えたら…きっと見える景色も聞こえる音も食べ物の味も今とは違ってしまうだろう。 嗅覚障害の患者さんが治療によって感覚を取り戻した時、いつも過ごしている部屋の広さが変わって見えたという症例があるそうです。 ツタンカーメンのお墓には象形文字で「キフィ」の処方が記されていたと言います。そこに並んだ小さな器には芳しい香りが残っていたそうです。数千年も時を経ているというのに。 香りは揮発や酸化によって変化していくので当時とは違

          数千年も香り続ける香り「キフィ」

          最古の調合香料「キフィ」の処方

          日の出にはフランキンセンス(乳香) 正午にはミルラ(没薬) 日没にはキフィが焚かれた キフィは夜じゅう焚かれ寝室の魔除けとされた エドフ神殿の壁画や最古の医学書エーベルス・パピルス(Ebers Papyrus)やディオスコリデスの書などに記され複数の処方が発見されていますが、約16種類の香料から作られていたようです。 シナモン ペパーミント ミルラ レモングラス オリス アカシア  ジュニパー サフラン ピスタチオ カシア オレンジ ローズ 

          最古の調合香料「キフィ」の処方

          introduction∞最古の調合香料「キフィ」の魅力

          アロマテラピーも調香技術も少し学んだだけの独学です。 香料の歴史に触れると不思議なほどわくわくして知りたい欲でいっぱいになり、香水術や錬金術、魔術や媚薬のような言葉にも同じような感情が湧く。 本で読んだり、美術館や香水店へ出向いたり、人に聞いたり、想像したりしたことをnoteに記していこうと思います。(かなり偏りのある情報となります) 世界最古の調合香料はエジプトのツタンカーメン王の墓で発見されたと言われる。名前は「Kyphi キフィ」 レシピも諸説あり謎に包まれた香

          introduction∞最古の調合香料「キフィ」の魅力