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「実績のあるベテランライター」いったい君は誰なんだ?【しごと論】

フリーランスとして働いていると、いろいろなところからご相談をいただく。お声がけいただけるのはとてもありがたいことで、フリーランス9年目の僕の場合、ご紹介でお付き合いが始まったお取引先さまがほとんど。いや、すべてと言ってもいい。ライターやコンテンツディレクターを探していらっしゃったところ、お知り合いが僕を紹介してくださったおかげで、僕は今、仕事ができている。

まずはご相談いただかないことには、何も始まらない。だから、「とりあえず相談してみよう」という軽い気持ちでご連絡をいただければ全然問題ないし、むしろありがたく嬉しい。

と、しっかりと前提をお伝えしたうえで、今日は過去にモヤモヤした話をしたいと思う(誤解されるのを恐れるなら書かなきゃいいのにね)

もう何年も前からネット社会だから、新しい媒体(メディア)の立ち上げを相談されるのは、僕らの仕事では珍しいことではない。そんな相談を受けるときには、いつもネックとなる問題が存在する。そう、お金がないのだ。

これからマネタイズするわけだし、そもそも新しい媒体がどれほどの利益をもたらしてくれるかは未知数。シミュレーションはしていても、それらが実現するかどうかもわからない。予算が少なかったりするのも、当然といえば、当然のことだと思う。

こういう状況で相談をされるとき、正直なところで言えば、ぶっちゃけてもらったほうがスッキリする。

「これから立ち上げるので、予算が少なく、1本あたりこれくらいしか出せません。でも、あなたにお願いしたいのです」

「力を貸してください!」。こんなことを嘘でも言っていただければ、単純な僕は「いっちょやってみっか!」と孫悟空ごとく小躍りして受けてしまうだろう。僕だけじゃないかもしれない。同じような話を同業の友だちにしてみたところ、彼も「そっちのほうがやる気が出る」と言っていた。お金は大事だけど、それだけじゃないのだ。心意気という、もしかしたら古めかしいものをまだ大切にしたいのである。

それなのに、金額交渉をしようとしてなのか、妙なことを言ってくる人がたまにいる。

「これから立ち上げるので、予算が少なく、1本あたりこれくらいしか出せません。でも、『実績のあるベテランライターさん』も私たちの理念に共感してくださって手伝ってくれるんです」

こう言われても、「あぁ、そうですか……」としか言えないよ。その実績のあるベテランライターさんが理念に共感したかどうかは僕にとっては全く関係のないことだし、その実績のあるベテランライターさんが条件に納得したからといって、僕が引き受けるかどうかの判断には影響しない。

だって……その人が誰か知らないもん。例えば本当に有名な人で、その人と一緒にプロジェクトに取り組めるのなら、条件を度外視して受けるかもしれないけど。そういった機会なんて滅多にないから。

でも、そうじゃないし。誰か知らないし。もっと勘ぐってしまえば、実在しているのかも疑問だし。ゴシップ記事に登場する匿名の球団関係者や自民党関係者、事務所関係者くらいには十分あやしい(それは言い過ぎか)

「だから、あなたも引き受けてくれますよね?」と、なぜか微笑みを湛えた無言のプレッシャーで迫られたりすると、くちびるが空回りして、今度こそ何も言えなくなる。

このようなケースに共通しているのは、自分たちの理念ばかりに酔っていて、こちらに対する敬意を感じられないこと。敬意は、言葉に表れる。「あなたにお願いしたい」の一言さえ言えず、正体不明の権威を振りかざして納得させようとするのは、傲慢だし卑怯だ(だから言い過ぎやって)

ライターとしては間もなく20年になるし、フリーランスとしては9年目。別に偉そうにするわけではないけど、若いライターさんたちにはこういった手口にはくれぐれも気をつけてもらいたいと願う。

そして、ちゃんと返してくれる人なのかどうかも見極める目を養っていくのが良いと思う。それには、失敗の経験という多少の犠牲を払わないといけないかもしれないけど。中には、搾取ばかりのテイカーもいるから。

テイカーの話は、また今後したいと思う。

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