痺れるほど手を叩いても、小さく歌っても
1mの柵さえ越えることはできなくて
失ったものの大きさがひどく痛い

ボーカル
ギター
ベース
ドラム
キーボード
その歪みと重なりの調和

かつて夢みた景色が、淡い希望が
今、遥か遠く、手を伸ばせる場所にある
無垢で鮮明な色をした何かが……

2m先が奏でる煌めきは眩しくて
色とりどりのライトが点滅しながら暴れて
切れたギターの弦のように僕の心に触れる

どう足掻いても目の前の音は1歩上にいて
届かないことが涙を誘う
舞台の上と下ではこんなにも違うこと
知ってるつもりで目を瞑ってた？

泣き崩れるように目を隠した僕に
ギターが泣きそうな声で言ってくる
「昔の君はもういないのかい？」

答えは……そうだ、その答えは……

あぁ、たった1歩と3mは……この距離は……
あの日僕が捨てたもの
諦め、苛立ち、逃げ出したもの
越えることを切った高い壁だった

ボーカルの余韻が残る中
ギターの歌だけがライブハウスを包み込む

過去の音と今の嗚咽とが
観客の歓声と拍手に掻き消されていった
耳鳴りが強くなる

雑踏に戻る僕は、ただ胸に手を当てた