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【コーチング】#ケーススタディ「出世したくない」という社員が思っていること

 「出世したくないんです」
 最近、よく聞く言葉です。
コーチの立場で考えると、出世したくないというのは何かの否定ですので、一旦目標と切り離して対話するという対応があり得ます。
 重要なテーマである可能性も高く、本人の価値観を知っていくの入り口にもなりそうです。
 「出世したくない、そう思う理由は何ですか」、と落ち着いて対応できるのではないでしょうか。そこからさらに、本当にやりたい事に焦点を合わせていけそうです。

 一方、組織の管理職としてはなかなか困る話です。
本人がどんな価値観をもっていようと自由、というわけにいきません。
 キャリアの方向性には、昇進を目指す、幅を広げる、専門性を深めるといった、出世だけでない多様な考え方があると言われております。しかながら、多くの場合、企業では社員をより出世できるような方向での育成システム、人事評価システムを構築しており、出世したくない本人の希望に沿うようなキャリア形成は難しいのが現状です。
 もう一つの理由は、思った以上に切迫した離職の危機だと考えられるからです。前述のような理由で、出世したくない社員を組織にとどめる環境が整っていません。そのような状況で、管理職は社員に対して組織へのコミットメントを強化する責務を負っています。

出世したくない理由


 では、出世したくない理由とは何なのでしょうか。これは一つではなく、人により様々です。
 以下、よく聞く3つのケースについて考えてみます

「出世してやりたいことがない」

 優秀と目される社員がこのようにいう事があります。ロジカルで目的意識がはっきりしている社員が、ミドルマネージャーの職責に意義を感じない場合など、こういった発言に繋がります。
 このような時はとにかく相手のいう事をよく聞き、理解する事が大切です。
 優秀な社員ですから、この事について考え抜き、上司に相談する事の意味もわかった上で発言しています。こちらが想定している事くらい、何度もシミュレーションしています。
 対等な目線に立ち、まず話を聞いてください。そう思う理由は何なのか、仕事で何がしたいのか、どんな仕事に価値があると思っているのか、尋ねてみてください。なるほどと思う理由があるはずです。理解できても、承服できない事があるかもしれません。それでも、まずは相手の考えを理解する事が大切です。そうすれば、信頼が得られます。もし、ここで対応を誤れば、信頼を維持する最後のチャンスを失うかもしれません。
 このようなケースは、会社から離れるかどうかの瀬戸際だと考えています。
 そもそも優秀な社員が「出世したくない」と思うのなら、その組織にとどまる理由がどこにあるのでしょうか。自分の進むべき方向に、かなり悩むはずです。
 じっくりと向き合い、上司自身が良き理解者となることがまず前提となります。もしそれができなければ、彼は理解者を失い、組織にとどまる最後の理由がなくなります。

管理職の言葉が信用できないから

 出世したくない事と、この言葉には、因果関係がないように見えますが、本人のなかでは繋がっています。実はよくあるケースです。
 過去に、評価に関わる上司の言葉に嘘があった。期待した評価が得られていないと感じている。不幸ですが、そういった社員の方は多くいらっしゃいます。この理由で、管理職の言葉を信用しきれない場合、キャリアに関わる話全般を拒否したくなります。そして、この組織におけるキャリア自体に希望を持たなくなります。
 それが「出世したくない」という言葉に繋がるのです。こうなると、常に離職が脳裏をよぎる状態となります。
 やはりこの場合も同様に、なぜそのように思うのか、相手を理解していく事が大切です。十分に理解できたらイチから信頼関係を構築していくことができます。期間がある程度必要かもしれません。
 質問する環境が整ってからですが、いつからそうに思うようになったのか、という質問はパワーがあります。この質問により、具体的な経緯を共有することができたときは、大きな信頼を感じるでしょう。きっともう一度キャリアを歩み始めることができます。

現状維持で経済的に自立が可能であり、出世を必要としていない

 ケースにもよりますが、そもそも組織に縛られる動機が薄いと考えられ、常に離職の可能性を秘めています。
 このようなケースでは、特に相手の価値観やライフプランを理解することが大切だと思います。良き理解者がいることは、そこで働く理由になります。それでもライフプランが優先するとき、他に機会が見つかったときは離職するかもしれません。その時は快く応援する他ないと思います。

管理職がコーチングでできる事

「出世したくない」この言葉を聞いたときにできることは、信頼を育むことです。下記は、「ICFコアコンピテンシー4、信頼と安全を育む」から引用しています。
 もし相手があなたの部下だった場合には、特に2,3ができると、信頼を得やすいでしょう。

  1. クライアントの自己認識、とりまく環境、体験、価値観、信念を含みうる状況で、クライアントへの理解を深めようとしている

  2. クライアントの自己認識、物の捉え方、流儀、言葉遣いに敬意を示し、クライアントにコーチングを合わせている

  3. コーチングの過程で、クライアント独自の才能、洞察、努力を承認し、尊重している

  4. クライアントへの支援、共感、関心を示している

  5. クライアントが、感情、物の捉え方、関心、信念、懸念を表現することを承認し、支援している

  6. クライアントとの信頼を築くことができるように、自分の不完全さも見せるなどして、開放性と透明性を示している

 コーチであることと、組織のミッションを同時に達成することが、組織の管理職の皆さまの難しいところだと思います。外部コーチであれば、クライアントが今の組織を離れても、それが本人のゴールに向かっているのであれば許容できるし、むしろ応援できます。
 もしかすると、管理職もそれでいいのかもしれない! と思いたいですが、そうはいかないですよね。
 結局、上司としてできることは、相手を理解することで、その方に、少なくとも上司には尊重されていると感じてもらうことではないでしょうか。

 今回は「出世したくない」という言葉が出たときについて考えてみました。「そういう人いるよね」で片づけてはいけない切迫した理由が隠されていることが多いと感じていたので記事にしてみました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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