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六本木WAVE 昭和バブル期⑲

■ 猫を預かった話 ことが終わり弛緩した時間の中で
 
※  体調不良と新たな職場でのインターフェイスに時間がかかっていたこともありまして 更新が適いませんでした お許しください またちょこちょこ書き始めます 🙇
 

 
そのあとのことは朧気にしか記憶していない…
少しの間気を失っていた というより 脳みそがマヒしていた
思考が止まっていた
 
我に返ると レイは身支度を整えていつものバージニアスリムを吸っていた
こちらの様子を気遣ってか心配そうに視線を向けながら尋ねて来た


(VIRGINIA SLIMS)当時は260円くらいかな…


 
「大丈夫? きつかったかな…」
 
その眼にはあの得体のしれない炎のかげりは微塵もなく いつもの穏やかな美しいレイの瞳のままであった
 
「うん 大丈夫…」
 
何となく元気なく応えて、そろそろと重い足取りでバスルームに向い、汚れた身体をシャワーで流した
ただ いまひとつ釈然としない というか力が出ない

あれよあれよという間に このホテルに入って それから一連の行為が進む中 自分の意思で動くことは殆ど無かったし
なにより それまでに無かったレイの複数の「顔」と「想像を超える行為」
受け身でいるしかなく、何が次に起こるかを想像する暇もなく…
 
シャワーを浴びた後、ゆっくり着替えて
(自然とゆっくりになった 意識していたわけではないが緩慢な動きのままで)

ソファに座って 炭酸水を飲みながら何本目かの煙草を気だるく燻らすレイの横に座った
 
「わたし 嫌われたかな…?」
 
「それは無い」力なく応えた
 
「どうだった?」
 
「正直 少しびっくりした でも楽しかったとは言えない 快感は と聞かれても多分 上手く答えられない あったとも無かったとも・・・」
 
これが正直な感想であった
 
「そう・・・」
 
レイは視線を外した そして、それ以上言葉は足さなかった

黙って煙草を勧めてくれて 自分も一本深々とのんだ
軽めのメンソールが心地よかった
 
場が気まずい というよりも 不思議と新たな関係性が始まる予感がした
良くも悪くもなく ただ
これで二人が疎遠になるという感じでもなかった
 
沈黙の時が流れてしばらくして
どちらからともなく立ち上がり ホテルをあとにした
 
「また会おうね」
 
今度は私の方から彼女に行った
 
「うん また連絡するね」
 
いつものレイの笑顔で でも少し寂し気で
タクシーを拾って去っていった
こちらを振り返ることも無く 

私は南麻布からしばらく自宅の方に歩き続けた
これまでのことを反芻するというのでもなく 人並みの途絶えた雨上がりのまち灯をうつろに目に焼き付けながら・・・


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