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コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/10/31)

日産、庇護者探しに未来なし

【記事の注目ポイント】ゴーン元会長の逮捕から約1年。この間、日産を取り巻く経営環境は激変した。ゴーン元会長は、陰謀説を主張し、その背景には経産省主導の現在の取締役会の体制も見られる。長年パートナーとして協調してきたルノーとの関係が対立関係に変化する中、将来の成長に向けた日産のあり方は、ゴーン氏に代わる庇護者を探すことではなく、主体的に決断する必要がある。

【コメント】ゴーン氏の逮捕から早1年。逮捕後、日産のガバナンス不全に関する報道は未だに続いているが、日本企業のコーポレートガバナンスに与える影響としては、この逮捕をきっかけに役員報酬の決定プロセスについて見る目が格段に厳しさを増したことだ。今国会での会社法改正では見送られたが、代表取締役が一元的に個別役員の報酬を決定する仕組みの禁止も恐らくそう遠くない将来、実現されるだろう。


ノルウェー政府系ファンド、CEO退任へ 残高12年で5倍

【記事の注目ポイント】世界最大の政府系ファンドを運営するノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM)は30日、イングベ・スリングスタッド最高経営責任者(CEO)が退任を決めたと発表。2008年から約12年トップを務めてきたが、運用残高が節目の10兆ノルウェークローネ(約118兆円)に達したのを機に、後進に道を譲ることにしたとのこと。

【コメント】世界最大の政府系ファンドであるノルウェーのNBIMのCEOが退任。記事にもあるが、ここ最近はESG投資家としての存在感が急速に高まっており、全世界的なESG投資の牽引役としても知られていた。恐らく、世界中の機関投資家から経営トップのオファーが殺到していることだろう。今後のキャリアにも注目である。


WeWork、ソフトバンクGから15億ドル受け取る-金融支援の一環

【記事の注目ポイント】米ウィーワークは30日、ソフトバンクグループが金融支援策の一環として行う出資の前倒しに伴い、同社から15億ドル(約1630億円)の資金を受け取ったことを発表。これに伴い、共同創業者で元CEOのアダム・ニューマン会長の交代と、ソフトバンクへの取締役5人の割り当てを含むガバナンス体制の変更が、30日付で実施されるとのこと。また、金融会社レイン・グループの共同創業者ジェフリー・サイン氏を独立社外取締役に新たに選任したことも発表したとのこと。

【コメント】ソフトバンクのWeWork支援については、ビジョンファンドの終わりの始まりとする報道も出るなど、批判的な声も多いが、ガバナンス体制を変え、ソフトバンク主導で再建がどのようになされるかが注目される。スプリントの再建を主導したソフトバンクGのマルセル・クラウレCOOがWeWorkの新会長として陣頭指揮を執るが、同氏は世界最大の携帯端末卸会社のBrightstarを一代で築き上げた起業家であり経営者だけに期待が高まる。


孫正義とインドの黒船OYOがレオパレス買収に触手

【記事の注目ポイント】施行不良問題で経営再建中のレオパレス21は、同社の4割の株を保有するイギリスのオデイ・アセット・マネジメントを筆頭に、複数のアクティビスト(物言う株主)が大株主に名を連ねている。市場関係者によると、アクティビストの狙いは、レオパレス買収に伴う株価の急騰とみられており、その最有力の買い手はインドのOYO(オヨ・ホテルズ・アンド・ホームズ)とされている。OYOはリテシュ・アガルワル氏が2013年に19歳で創業した企業で、ホテルや賃貸住宅を丸ごと借り上げて運営、ネット経由で利用者を集めることで急成長した企業である。同社はソフトバンク・ビジョン・ファンドからの資本提供を受け、現在は世界第2位のホテル事業者として、時価評価額も約100億ドルとみられているとのこと。OYOのビジネスが、レオパレスの物件を一括で借り上げて入居者を募集するサブリースと似ていることなどから、同社との親和性は高く、有力な買収候補者としてみられている。

【コメント】違法建築問題で経営再建中のレオパレスとしては、仮にOYOが親会社になるのであれば願ったりだろう。一方で、OYOからすると、単に経営を立て直すだけでなく、違法建築によって様々な訴訟案件への対応も必要となるレオパレスを買収することが、どの程度メリットがあるかは不透明だ。単にビジネスモデルの親和性や記事にあるように、レオパレス創業者の深山氏との関係性だけでは、さすがに買収はできないのではないか。また、コーポレートガバナンス上も同社は創業オーナーが実質長らく経営を支配していたことから、まだまだ爆弾が埋まっている可能性はある。


【企業リリース・サイバーエージェント】指名・報酬諮問委員会の設置に関するお知らせ

【リリースの要約】サイバーエージェントは、30 日開催の取締役会において、取締役会の諮問機関として「指名・報酬諮問委員会」を設置することを決議したと発表した。指名・報酬諮問委員会は、委員の過半数を独立社外取締役で構成し、以下の事項について審議し、取締役会に答申するとのこと。
(1) 取締役報酬制度
(2) 取締役の評価・報酬額
(3) 取締役の選解任
(4) 取締役の選解任方針の策定
(5) その他取締役会が必要と認めた事項

【コメント】サイバーエージェントが指名・報酬諮問委員会の設置を発表した。既に東証1部上場企業で約半数が、JPX日経400で7割以上が指名・報酬委員会(任意・法定のいずれも含む)を設置していることから考えると、同社が委員会を設置すること自体には驚きはない。

しかし、ここで問題にしたいのは、同社の指名・報酬諮問委員会の委員構成だ。委員の過半数が独立社外取締役であることは良いとして、藤田社長も委員を務めることになっている。もちろん、経営トップが委員を務めている例は他企業でも存在するが、同社の創業者であり、最大の株主であり、現職の社長を務める藤田氏が委員を務めるのであれば、何名独立社外取締役が存在したとしても実質的に独立性がある委員会とは言い難いのではないだろうか?

リリースでは委員長についての言及がない為、委員長不在の設計としているのかもしれないが、せめて委員長を独立社外取締役が務めることや、藤田社長自身に関わる事項(ご自身の報酬や取締役の選解任等)については、議論自体から藤田氏が外れることを規定することが、独立性を担保するためには必要である。

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