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12の基本スキル「調べる」:調査の仕方

本ブログ記事は『ビジネススキル 完全攻略 -基本編-』からの抜粋になります。全部まとめて読みたい方は、是非、電子書籍をご購入ください。


コミュニケーションスキルが終わって、プランニングスキルの5つのスキルの話しに入っていきたいと思います。
なかなか、ハードなので、頑張ってついてきてください!


調べて分かること vs 調べても分からないこと

「調べる」スキルについて、「調べるとはどういうことか」から話を始めたいと思います。

まず、調べる対象を時間軸で整理すると、「今まで起こったこと(過去)」か、「現在、もしくはこれから起こること(現在から未来)」の2つに区分することができます。

また、調べる対象範囲を3Cのフレームワークを用いて、「Customer(市場や顧客)」、「Competitor(競合企業)」、「Company(自社)」の3つに区分すると、以下のようなマトリックスに整理することができます。

図表.調べる対象範囲と時間軸

ビジネスで何かを調べると言った場合、だいたい、この6つの象限のどれかに該当することを調べることになります。

一般的に、調べたら分かる(答えが出てくる)のは、「今まで起こったこと(過去)」が中心で、「現在起こっていることやこれから起こること(現在から未来)」に関しては、調べたからといって、必ずしも答えが見つかるわけではありません(もちろん、今まで起こったことでも、情報が整理されていないと、調べても答えが出てこないこともあります)。

たとえば、「自社のサービスを利用する最適な見込み顧客は誰なのか」とか、「新規に参入した市場が将来どれぐらいの規模に拡大するのか」とか、「新しく開発した商品の潜在ニーズがどれぐらいあるのか」などは、簡単に答えを見つけることはできません。

ここに、「調べること」の難しさがあります。

また、もうひとつ難しいのが、限られた時間の中で、いろいろ調べて答えを見つけていかなければなりません
たとえば、Google検索で調べても、だいたい2時間ぐらい調べて情報が出てこなければ、それ以上調べても、求めている答えは出てきません。
イメージ的には、以下のような図で表すことができます。

図表.調べる時間と情報収集の生産性(イメージ)

以上を踏まえて、「調べる」という作業タスクを整理すると、2つの方向性が考えられます。

一つ目が、答えが見つかりそうなものは、できるだけ効率よく情報を集めるテクニックを身に着ける必要があるということ。

これは、どこにどんな情報があって、どういう風に情報を調べると効率よく情報にたどり着けるかを考える作業になります。

二つ目に、ネットや書籍などで調べても答えが見つからないものは、調べたい対象の仮説を立てて、その仮説に基づいて調べていく(検証していく)という調べ方になります。

こちらは、「考える」スキルのパートで出てくる「仮説思考」という思考法に基づいて、求めている回答を探していくことになります。
仮説思考とは、仮に結論(仮説)を出して、それを検証していくというプロセスを踏みます。

仮説があることで、調べる対象範囲を絞り込むことができて、時間も効率的に使うことができます

効率的な情報の探し方

書籍と検索エンジンを使って、効率的に情報を調べる方法に関して解説していきます。
 

書籍の効果的な使い方

自分自身がよく知らない業界や事業領域、専門知識を調べることになった場合は、まず、該当する書籍を2~3冊読むことをお勧めします。

たとえば、Web3などの最新動向がどうなっているか調べたいならば、それに該当する書籍を購入します。

特に、『〇〇入門』とか『〇〇の教科書』と書かれた初心者向けの書籍を購入して、市場がどう伸びているのか、どういう事業プレーヤーがいて、どういうテクノロジーが利用されているのかなどを理解していきます。

そのあとに、専門的な内容のものを読んでいったほうが、理解度が高まります。
ここで重要なのは、Web3で利用されている独自用語や、業界内の論点(課題)などをきちんと把握することです。

たとえば、基礎技術としてのブロックチェーンやスマートコントラクトなど、Web3を理解する上で重要な技術や考え方を理解します。
また、ブロックチェーンは電力消費量が高いため、それを改善するための新しい技術が検討されている、などの論点などを把握します。

今まで知らなかった専門領域に対して、「業界や市場動向がどうなっていて、技術的に何がトレンドで、参入プレーヤーが何をしているのか理解できた」という頭の状態にしておくことが重要です。

専門領域に対して基本的なことが分かっている状態になったあとで、検索エンジンを使った情報収集を行っていくと、求めている情報にたどり着く確率も高くなっていきます。 

検索エンジンの効果的な使い方

次に、GoogleやBingなどの検索エンジンを使って情報を調べていきます。

検索エンジンを使って効率的に情報を検索するには、検索クエリと呼ばれる検索エンジンに入力される単語やキーワードが重要になります。

何の単語を打ち込むかで検索結果はかなり変わるので、複数の単語を入力して、求めている情報にアクセスしていきます。

調べたいことに対して、専門知識を全く持ち合わせていない状態で検索エンジンを利用しても、なかなか求めている情報にたどり着くことができません。
前段でお話したとおり、書籍を何冊か読んで、調べたい対象の業界動向や市場動向などが分かった状態で、最適な単語やキーワードを打ち込むと、求めている情報にたどり着きやすくなります。

Googleなどの検索エンジンの場合、検索クエリと呼ばれる単語やキーワードを複数入力する形で、検索結果を求めました。

一方で、ChatGTPなどの生成AIを活用した検索の場合、プロンプトと呼ばれる命令文を打ち込み、回答を求めます。

この場合、検索結果の該当ページ(URL)に飛ぶのではなく、生成AIの画面の中に、文章単位で回答が返ってきます。

かなりまとまった文章で回答されるので、業界や市場の論点や課題を包括的に把握したい場合などは、生成AIを活用したほうが効率的です。
感覚としては、書籍を読むのと同じような感覚で、業界や市場の動向、業界内の論点や課題などをクイックに把握することができます。

無料で利用できる情報ソース

業界動向や市場動向など、マクロ的なトレンドを把握する場合は、政府が公表している統計情報や、民間企業が公表しているマーケティング関連情報などを活用するのが効果的です。

  • 政府が公表している統計情報
    各省庁が出している統計データは、マクロ的な情報として有効に活用できます
    たとえば、情報通信関連の情報であれば総務省の統計データが参考になります。
    また、消費動向調査であれば内閣府、雇用動向ならば厚労省などの情報も役に立ちます。
    各省庁が色々な情報を出しているので、自分の業界や仕事と関連する省庁の情報をチェックしてみてください。

    特に、各省庁が政策的に強化していきたい今後の施策に関しては、シンクタンクやコンサルティングファームに委託して、調査レポートを作成し、情報公開しているので、そういう情報から最新動向をチェックするのも効果的です。

  • 民間企業が公表しているマーケティング関連情報
    民間企業が出しているレポート類も参考になります。

    たとえば、電通が毎年出している「日本の広告費」や、博報堂生活総研の「生活定点」などの生活者の動向なども、とても参考になります。

    また、マクロミルなどの調査会社が実施している「HoNoTe」などのレポートも、有益な調査データです。

有料で利用できる情報ソース

  •  企業情報・財務情報
    業界動向や企業情報を調べる時は、ユーザーベースが提供する「SPEEDA」や、帝国データバンクが提供する「COSMOSNET」などが参考になります。

    また、財務情報などは、東洋経済が提供する「四季報」や、上場会社が提供するIR資料(有価証券報告書や決算説明会資料など)が参考になります(個別企業のものは無料で閲覧できます)。

  • 業界情報・マーケティング情報
    政府が公表しているデータ以外に、矢野経済研究所や日経BPなどが毎年出しているマーケットレポートなども参考になります。

    特に、業界ごとの市場規模や市場の成長率などを調べたい時に有益です。

    マーケティング関連情報としては、オリコンや日経BPなどが出している調査レポートも参考になります。
    特にエンタメや商品のトレンド情報などを把握するときに役立ちます。

効率よく情報を集めるテクニックに関して、いろいろな調べ方や情報ソースを紹介しました。

これ以外にも、日経新聞や日経ビジネスなどを定期購読し、自分に関係しそうな記事に付箋を貼っておいたり、クリッピングしておくのも有効です。

 特に、月刊誌の場合、定期的に同じテーマを取材することが多いので、そういう記事を集めておくと、業界や市場の変化を捉えやすくなります。

「調べる」スキルを上達させていくには、普段から、色々なことに興味を持って、実際にリアルに体験することも重要です。

書籍やネットを使ったデスクリサーチだけでなく、1次情報に積極的にアクセスして、常に鮮度の高い情報を得るようにしてください。

仮説思考に基づく調査検証の仕方

次に、調べたい対象の仮説を立てて、その仮説に基づいて調べていく(検証していく)という調べ方に関して解説していきます。

仮説検証型で情報を調べていくときは、6つのプロセスを踏んで情報を整理していきます。

図表.仮説思考に基づく調査検証プロセス

調査目的の明確化

まず、「調査目的の明確化」では、調査の目的や、調査結果からどんな示唆を得たいのか明らかにしておくことが重要です。

ここで一番重要なのは、「それは調べるに値することなのかどうか」ということです。
たとえば、目的が不明確だったり、調査をしても、解決するのに5年とか10年ぐらいの期間がかかるものは、調べても意味がありません。

社長などが思い付きで発言したことを、部下が一生懸命調べていたりすることはよくある光景ですが、本当に調べる価値があるかどうか、ちゃんと考えてから作業に着手しましょう。

背景情報の収集

筋の良い仮説を立案するためには、その前工程で、背景となる情報をきちんと集めておくことが大事です。

前段で、業界や市場に対して専門知識を持ち合わせていない場合は、書籍を2~3冊読んでおくことが大事だという話しをしました。

書籍を読み、調査対象となる領域で、何が論点でどういった課題があるのか把握できていると、仮説を立案するときも、解像度の高い、的を得た仮説を設計することができます。

仮説立案

6つの工程の中で、一番難しいのが「仮説立案」です。

調査をして、一番まずいのが、仮説がフワッとしていたので、調査結果もフワッとしたものしか出てこないという場合です。

たとえば、新規事業や新サービスなど、市場にまだ出ていないサービスが生活者に受け入れられるかどうかを検証するときに、仮説が甘いと、顧客のニーズがどこにあって、どこに提供価値があるのか把握できなかったなどは、よくある話です。

顧客向けの調査の場合、実際の調査に移る前に、家族や友人など、身近な人に事前にインタビューしておくと、仮説の精度も上がっていきます。

調査設計

外部のリサーチ会社などを使って調査設計をする場合、インタビュー形式で行うのか、アンケート調査を使うのか、決める必要があります。
 インタビュー形式で行う場合は、質問票を事前に作成して、聞きたいことをまとめていきます。

「質問する」スキルで、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2つの質問のテクニックがあるという話をしましたが、インタビューでも、この2つの質問スキルを活用してヒアリングをしていきます。
 
アンケート調査を行う場合は、Yes・Noで答えられるクローズドクエスチョンを中心に、一部、自由に回答できるオープンクエスチョン型の質問を入れ込んでいきます。

インタビューとアンケート調査を併用する場合は、まず、アンケート調査を行い、アンケート調査の回答者の中から、数名ピックアップして、深堀りインタビューを実施していくやり方もあります。

費用はかかってしまいますが、マクロミルやビザスクなどの調査会社に依頼するとアンケート調査やインタビューなどを代行してくれます。

データの集計・分析

アンケート調査やインタビューを実施した内容に基づき、データ集計をしていきます。
社内でデータ集計をする場合は、エクセルなどを活用してデータを加工していきます。

複雑なデータ集計の場合は、統計解析ソフトにデータを入力し、統計解析の手法を活用して、高度なデータ分析を行う場合もあります。
 
分析結果に関しては、全く同じ解釈になるものと、意見が分かれるものが出てきます。

分析結果をどう読み解くか、仮説に対する検証ができたのかどうか、正しい判断が求められます

レポート作成・共有

最後に、分析結果をパワーポイントなどでビジュアライズして、情報として理解しやすいように加工していきます。

仮説思考に基づく調査手法に関して、6つのプロセスから、どのように調べていくのか整理してきました。

仮説の精度が低いと調査結果も不発に終わることが多いので、まずは、何を検証したいのか(調べたいのか)明確化して、調査を実施してもらえればと思います。

次は、「理解する」スキルに関して解説していきます。


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