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(小説を)書くようになったきっかけ

 初めて僕が人に読んでもらうために小説を書いたのは、中学1年の時でした。

 西暦で表すと1993〜1994年、和暦で平成5〜6年の頃です。今年は2019年。もう25年ほど前の話なのですね……(遠い目)。

 当時僕は、中村うさぎさんの『ゴクドーくん漫遊記』を友人から勧められて読んだことをきっかけに、神坂一さんの『スレイヤーズ!』や水野良さん・安田均さんの『ロードス島戦記』にどっぷりはまっていきました。ファンタジー要素にゲーム的な要素が融合された独特の世界観に、僕はすっかり夢中になってしまったのです。

 僕のクラス(の一部)にはライトノベルブームが来ていました。そして、幼い頃から自分で新しい遊びを考えたりするのが好きだった僕は、ある日突然思いつくのです。

「そうだ。小説がこんなに面白いなら、自分で書いてしまえばいいんだ!」と。

 僕が書いた初めての小説。そのタイトルは『シャレ王国戦記』というものでした。もう、このタイトルだけでも厨二臭出しまくりです。「黒歴史」と言っても過言ではないかもしれません。なお、察しの良い方はピンと来たかもしれませんが、この『シャレ王国戦記』というタイトルは、前述の『ロードス島戦記』からインスピレーションを得ました。関係者の方々にはいい迷惑だと思いますが。笑

 意外なことに、この作品は僕のクラス(の一部)で話題になりました。『第1章 ようこそシャレ王国へ!』の原稿を読んだ(数人の)友人たちから、すぐに「続きが読みたい!」と要望が殺到し、それから僕は水を得た魚のように小説を書くことに没頭するようになったのです。

 この時点ですでに僕は、「誰かに自分の作品を読んでもらい、何かしらの反応を得ること」の喜びを味わっていました。書くことが大変だと思った記憶はありません。書くという行為自体が楽しかったし、読み手の反応をじかに得られる瞬間を想像してワクワクしていました。あれは、本当に素晴らしい体験をしたと自分でも思います。


 さて、そんな僕ですが、中学二年のときに、(当時はまだ社会問題になっていなかった)不登校になり、それ以来クラスの誰かに小説を読んでもらうことはなくなりました。不登校の間は、ラノベ作家デビューを夢見て、角川スニーカー文庫や電撃文庫のコンテストに応募するために自宅にこもって執筆していました。でも、賞を得ることが目的になった途端、僕は思うように書けなくなったのです。その当時のことは今でも鮮明に覚えています。

 自分で読んでいても、何が面白いのかまったくわからない。どういうストーリーにしたいかもわからない。キャラの個性もまったくない。そんな「読んでも読まなくても何も変わらない小説」を部屋にこもって自問自答しながら深夜まで書く日々が続きました。でも、やっぱりいつまで経っても納得いくものはできず、結局、投稿することはありませんでした。小説を書く目的が、自分が楽しむためでも読み手を楽しませるためでもなくなった瞬間、僕の想像力は枯れた井戸のように尽き果ててしまったのでした。その小説がどのようなものだったかほとんど思い出すことはできません。でも、ただ「何かを書いた」ということだけは記憶に残り続けました。

 それからの23年間、一度も小説を書くことはありませんでした。

 そんな僕が再び筆を取ろうとしたきっかけは、就職し、家庭を持ち、子供を儲け、仕事に没頭し、適応障害と診断されて会社を休職し、無力感に苛まれながら一日一日を無目的に過ごしているときでした。心の中に溜まった負の感情を処理するために思いの丈を書き出してみたら、それが意外なほどに心地よかったのです。それをストーリー仕立てで書くことによって自分の中にある様々な葛藤が人格を持ち始め、それらがお互いに対話を始めるのです。

 書くと言う行為、それはまさに自分への問いかけでした。答えがでるかどうかはわかりません。でも、問いかけること、考え続けることは、それ自体にとても意味があることだと思います。僕が再び小説を書き始めたのは、行き詰まりを感じ始めた人生において活路を見出すための手段でもあり、それ自体が目的でもあったのです。

 ということで長くなりましたが、僕が生まれて初めて誰かに読んでもらった作品の話から、現在に至るまでをざっと書きました。

 世の中に溢れるアマチュア小説家の人生になど興味を示す人はいないでしょう。なので僕は、他の誰よりも僕自身に向けたメッセージとして、このノートを書いています。未来の自分が再び行き詰まったときにこれをふと読み返し、打破するためのパワーを得られるようにするために。

 これを読んでいる皆さんが、何をきっかけで書き始めたのか、そして書き続ける理由は何なのか、僕は興味があります。


 さて、冒頭のあたりで触れた『シャレ王国戦記』について、もし概要を知りたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、この先の有料記事をご覧ください。中二病すら患い切れていない中学1年の時の作品だと思って、暖かい目で読んでいただけると幸いです。

(有料にした理由は、黒歴史を晒すことによる対価としてコンビニコーヒー1杯分おごってもらってもいいんじゃない?という心の囁きに負けたためです)


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