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(40)パーパス・ドリブンな組織のつくり方

【パーパスとは?】

パーパスの定義は「Why」
パーパスとは、そのまま訳すと「目的」です。しかしビジネスの文脈では組織の存在意義のことを指します。「この組織は何のために存在しているか?」という組織の「Why?」の部分がパーパスに当たります。「どうやるか(How)」や「何をやるか(What)」ではありません。

パーパスがあるメリットは一言でお伝えすると「組織において一貫性のある戦略が描かれ、一体感が生まれること」です。
パーパスに共鳴した社員のモチベーションが高まり、パフォーマンスや創造性が発揮されます。実際に優れた組織に見られる特徴の1つは、心から信じられるパーパスを社員一人ひとりが胸に抱き、その達成に向けて実装しているということです。
パーパスで必ず盛り込むべき要素は「その組織の価値観(独自性)」「社会的な意義」です。

【パーパスを軸に社会に貢献する企業事例】

パタゴニア
「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスに営む」という方向性を示した。よりシンプルにパーパスを表現した。
パタゴニアの商品は、価格は高いですが多くのファンがいます。たしかに商品の質がよいという側面はありますが、それだけではなく環境に寄与する「らしさ」に共鳴した人が購入しているのです。

パーパスを軸に商品・サービスをつくり、人材マネジメントをし、広報をしています。パタゴニアはパーパス・ドリブン・経営をしています。

【パーパスが必要とされる背景】

①ミレニアム世代が社会の中心に
2025年にはミレニアム世代の人口が生産年齢人口の半分を占めるようになると予測されています。このミレニアム世代の人々の特徴の1つに、社会貢献こそ重要だと考えていることがあげられる。
ミレニアム世代は、バブル崩壊以降に青春期を過ごした世代であり「いい大学を出て、いい会社に入れば一生安泰だ」という過去の価値観には基づいていません。
全世界の85万人のミレニアム世代を対象とした調査では、仕事に対する動機付けの要因の1位は「Impact」でした。Impactとは、社会やコミュニティに対して貢献したいという思いです。
一方で、「金銭的な報酬」や「名声を得られるか」の重要性を挙げる人は少ないという結果となりました。
※ATD国際会議「Motivating Millennials:New Research into Unlocking Their Passions」より

②VUCAの世界
VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と言われている。つまり、軸や基準を外に置いていても意味がないということです。自分(組織)から何が湧いてくるか、自分が何を大事にするかこそが、問われる時代になっているのです。そのために、企業も「独自の価値」と「社会的意義」を含むパーパスを提示していくことが重要なのです。

③ダイバーシティの高まり

④人材流動性の高まり
かつての日本では、大企業に入れば、そのまま単線のキャリアで定年退職まで勤め上げるのが一般的でした。しかし、キャリアは多様化し定年まで一つの会社で働き続ける人はどんどん減ってきています。人材の流動性が高まる中で大事なのは、組織へのエンゲージメント。エンゲージメントを高めていく方法はいくつか考えられますが、その一つがパーパスを共有し、同じ目標に向かうことです。パーパスによる求心力がないとエンゲージメントが下がり、離職につながるといったことも考えられるでしょう。

⑤SDGsの広がり

【パーパス・ドリブン・経営の3つのステップ(発見→共鳴→実装)】


①発見
パーパスは作成するものではく発見するもの。そこにあるものに気づくという発見が大事。パーパスは手段ではなく、目的として考えなければいけません。
パーパスを手段として使ってしまうと、従業員にも顧客にも見透かされてしまいます。いっていることと行動が合致していないので矛盾が生じてしまうのです。そうなれば企業は信頼を失ってしまいます。

②共鳴
パーパスに触れた時に社員の心が動くということです。共鳴ができると「自分達はこのために仕事をしているのだ」と社員のモチベーションが上がります。

③実装
これは、経営メンバーや社員がパーパスに基づいて日々の仕事を行なっている状態。

【パーパス・ドリブン・経営に期待される効果】

①パーパスに共鳴する人材のエンゲージメント
②イノベーションの創出
③パーパスに共感するファンの獲得
④社会課題面でのインパクト創出
⑤自立型人材の育成
⑥経営に求められる一貫性、スピード感の高まり
⑦多様性を繋げる組織の一体感の醸成

【企業事例】

ピジョン株式会社
本事例のポイント
・「社員の離職意思を減少させたい」という課題意識がパーパス策定の背景の一つに
・社員の感動体験によりパーパスの共鳴を図る
・パーパスを体現するために、赤ちゃんやママに関する研究を深め、商品やサービスを開発し、お客様に提供する

「発見」
経営は安定し、社員の給料も上げることができたが、30代のこれからという層が離職してしまうという課題が浮上していました。おそらく、社外の学びにより、「社会は大きく変わっているのに、この会社にはあまり未来を感じられない」と不安になっての離職であったのではないでしょうか。
つまり、若手社員が求めているのは、社会的な安定やステータスだけではなく、存在意義こそ重視されているということがわかったのです。パーパスという存在意義を明確に示し、未来に向かい、社員でまとまって進んでいけるような環境をつくっていく必要があると考えました。ビジネスを実行するのは従業員ですから従業員が気持ち良く動いてくれない限り何をやっても上手くいきません。

株式会社LIXIL
「発見」
LIXILは多様な歴史を持つ企業が一つの組織になって誕生しました。(5社が統合)
文化を無理に融合させようとすると、過去の文化を大事にしてきた社員の自己否定感を生んでしまう危険性があります。そこで、今のLIXILを好きになり、誇りを持って働いてもらうためには、2つのアプローチが必要であると考えました。
1つは経営が悪化している企業では従業員の自尊心が高まりにくいため、事業を軌道に乗せるということ。2つ目は、自社は社会的価値の高い会社であるということを認識してもらうこと。

日産自動車株式会社
「発見」
お客様の価値観の転換についても日々感じていました。これまでは、デザインや品質で商品が選ばれてきましたが、特に若い層を中心に、企業の姿勢に注目し、商品を選ぶようになっていた。
そこで日産の存在意義や向かうべき方向について語り合う機会を設けた。
この取り組みにより年代ごとに会社に対する考え方が大きく異なることがわかった。
40代〜50代は入社理由としてプロダクトの魅力を挙げる社員が多かったのに対して、20代〜30代の社員からは「量産EV車を日本で最初にリリースした企業で世界の環境問題に貢献したいと思った」という声が聞こえた。

「共鳴」
若手が手を上げて入社式を企画し、新入社員に向け「日産とはこのような会社です」と紹介しました。ボトムアップから始まったコーポレートパーパスの制定プロジェクトの成果もあり、若手社員が自発的に「自分達はこうしたい」「こんな会社にしたい」と提案するようになってきていると感じています。

【巻末資料】

アイディール・リーダーズ株式会社は、パーパスを策定した企業の従業員を対象に、パーパスが行動や意識に与える影響、課題について実態調査を行い、レポートとして公開いたしました。
「アイディール・リーダーズ パーパスに係る実態調査」

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