はすのうえ 暁光

ご連絡先(ご依頼もこちら):h-a.writer@outlook.jp

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最近の記事

舞台『あのよこのよ』の役者たち、あれやこれや。役者・安田章大の脈動の芝居。

※本記事は商用ではなく個人的な主観による雑記(約8,000字)となります。また、舞台の内容を含みます。 作品が幕を閉じた瞬間から、“次の出演作”がこんなにも待ち遠しいと思う役者はそういない。 本人が役をどう調理して振る舞うのか、その人物からどんなエネルギーが発せられるのか、それは観客である自分の五感、ときに六感にどう届くのか。 それらを体感する時間がどうしようもなく待ち遠しい。 芝居の上手い下手や巧さや粗さについてならば、もっと上手くてより巧みで、リアルさとスマートさのバ

    • 舞台『ハザカイキ』のすすめ — 三浦大輔による巧みな演出/丸山隆平という、人に寄り添う役者/恒松祐里の制御力 —

      劇作家・演出家・映画監督である三浦大輔氏のオリジナル作品の主人公の名前は、すべて“菅原裕一”である。そしてその恋人の名前は“鈴木里美”、友人は“今井伸二”だ。同じ人間だというわけではない。名前が同じ理由は、過去のインタビュー記事によると、「考えるのがめんどくさいから」「それほど意味はない」「似たような駄目な男が登場するので、 統一したら面白いかなと思ってやっているというだけ」だという。 二十何代目か、の菅原裕一が登場するのが、舞台『ハザカイキ』である。 三浦氏の3年ぶりの新

      • 【観劇記録】KERA CROSS 第五弾『骨と軽蔑』初日公演 シアタークリエ

        チラシを開いて、「圧巻な眺めだな」と思った。 顔ぶれもビジュアルも。紙のチラシでそう思うのだから、生身で客席からステージを眺めたならばどうであろうか。否応なしに「これは観に行こう」と思わせた。 劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチによる過去の戯曲を、それぞれ異なる演出家たちが新たに創り上げる連続上演シリーズが“KERA CROSS”である。 第一弾は、『フローズン・ビーチ』(2019年7月~8月、演出:鈴木裕美)、 第二弾は、『グッドバイ』(2020年1月~2月

        • 【観劇記録】舞台『モンスター・コールズ』初日公演 PARCO劇場

          2023年11月にPARCO劇場に『月とシネマ』を観に行った際、ロビーのラックにあった『モンスター・コールズ』のチラシが目に留まった。 仮チラシだったが、青い木のイラストがどこかおどろおどろしく、“モンスターは真夜中すぎにやってくる”というコピーも興味が湧いた。ハートフルな話やポップな話よりもダークな作品のほうが好みなのと、出演者に名女優の銀粉蝶氏が名を連ねていたことで、「これは初日に観よう」とその場で心に決めた。 舞台『モンスター・コールズ』は、イギリスの作家パトリック・

        舞台『あのよこのよ』の役者たち、あれやこれや。役者・安田章大の脈動の芝居。

          【観劇体験】舞台『ジャズ大名』KAAT 神奈川芸術劇場

          【観劇記録】として観た舞台の感想をnoteに記しているが、本記事は、【観劇体験】とした。何故かは追々書いていくとして、まずは前置きを。 “語彙力がなくなる”という表現を度々目にする。 特にここ数年でよく見るようになった。自分が心酔している好きな物や人について、その素敵さや素晴らしさ故に言い表す言葉をも失くしてしまう、というニュアンスで使われているのだが、筆者はその表現を見聞きするたびに疑問に思う。 「なくなる、のではなく、それを言う人は、もともと言い表せる語彙を持っていない

          【観劇体験】舞台『ジャズ大名』KAAT 神奈川芸術劇場

          【観劇記録】舞台『OUT OF ORDER』世田谷パブリックシアター

          本記事は、あくまでも個人的な主観による雑記である。 『Out of Order』は、“笑劇王”の異名を持つイギリスの劇作家レイ・クーニーの戯曲である。 主人公サイドが、とにかくその場を取り繕わねば誤魔化さねばと嘘に嘘を重ねて、次々と登場人物たちを巻き込み話がどんどんややこしくなっていく。そんな喜劇をワンシチュエーションで展開させる作風で、レイ・クーニー作品は世界規模で絶大な人気を誇っている。日本でも彼の作品は度々舞台化されており、『Out of Order』に関しては、2

          【観劇記録】舞台『OUT OF ORDER』世田谷パブリックシアター

          【観劇記録】PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『月とシネマ2023』

          本記事は、あくまでも個人的な主観の雑記である。 『月とシネマ』は、渋谷PARCOが2016年に建て替えのために休館した後、リニューアルして開業した新生PARCO劇場のオープニング・シリーズとして、2021年4月から5月に公演予定であった。しかし、ギリギリまで稽古を重ねたもののコロナ禍の影響を受けて全公演中止となった作品だ。 2023年秋、約2年の時を経て、PARCO劇場開場50周年記念シリーズとして上演されることとなった、『月とシネマ2023』。 作・演出は2021年から変

          【観劇記録】PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『月とシネマ2023』

          【観劇記録】新宿梁山泊 第76回公演『少女都市からの呼び声〈若衆公演〉』下北沢ザ・スズナリ —3連続公演という旅—

          本記事はあくまでも個人的な雑記であると断ったうえで、感じたままを記していきたい。 同じ演目の舞台演劇が、異なるキャストと演出で3連続で公演されるということは、そうそうない。 観客として、それを全て体感するという経験も貴重である。 唐十郎作の戯曲『少女都市からの呼び声』。 2023年の夏、花園神社でのテント芝居から始まり、東急歌舞伎町タワー・THEATER MILANO-Zaのオープニングシリーズとしての公演、東大阪市文化創造館での大阪公演、そして下北沢ザ・スズナリでの若

          【観劇記録】新宿梁山泊 第76回公演『少女都市からの呼び声〈若衆公演〉』下北沢ザ・スズナリ —3連続公演という旅—

          【観劇記録】舞台『いつぞやは』シアタートラム / 窪田正孝氏の降板を経て

          窪田正孝氏が“好きな俳優”になったのは、2014年秋に放映されていたTBSドラマ『Nのために』を観たことがきっかけである。 このドラマは、脚本、演出、音楽、キャスティング、俳優陣の芝居、いずれもとても優れており、個人的に好きなドラマランキングでも上位に入る。 窪田氏は、榮倉奈々氏が演じた主人公の杉下希美が心の支えとしていた地元の同級生・成瀬慎司を演じていたが、当時この「成瀬くん」に心を奪われた視聴者(特に女性)は多かったことと思う。爽やかで飾らず、でも少し陰もあり、照れ屋で年

          【観劇記録】舞台『いつぞやは』シアタートラム / 窪田正孝氏の降板を経て

          【カーテンコールの記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za③/8月6日東京千穐楽公演 — 安田章大という担い手 —

          東急歌舞伎町タワー内の劇場・THEATER MILANO-Zaにて、オープニングシリーズ第3弾として上演された、作・唐十郎、演出・金守珍の舞台『少女都市からの呼び声』。 初日観劇時と、7月17日ソワレ公演観劇時の感想を下記に残したが、その後も数回観劇をした。 本記事では、東京千穐楽公演のカーテンコールでのことを記しておきたいと思う。 その前に。 筆者は、舞台公演における“千穐楽”に、芝居としての特別感は感じない。 「千穐楽だから力が入る」「千穐楽だから出し切る」とい

          【カーテンコールの記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za③/8月6日東京千穐楽公演 — 安田章大という担い手 —

          【観劇記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za②/7月17日ソワレ公演 —舞台という海の波に挑む役者たち—

          ナマモノの舞台には、波が見えることがある。 時に怖いほどに静寂で、時に穏やかにやさしく揺れ、時に酷く荒れ狂い、時に力強く舞う、波。それにいかに挑み乗り続けるかが、役者の生き様であると思う。 初日にはなかった、様々な波が、見えた気がした。 東急歌舞伎町タワー内の劇場・THEATER MILANO-Zaにて、オープニングシリーズ第3弾として上演されている、作・唐十郎、演出・金守珍の舞台『少女都市からの呼び声』。 初日観劇時の感想を下記に残したが、二度目の観劇で印象が変わった

          【観劇記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za②/7月17日ソワレ公演 —舞台という海の波に挑む役者たち—

          【観劇記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za/初日公演 —個人的雑記—

          本記事は、あくまで個人的な雑記である、と断ったうえで、正直な感想を書いていきたい。 安田章大を、「憑依型」の役者であると思ったことは、ない。 彼は憑依型であるとよく評されるのだが、役を憑依させる・役になりきる、というより、「役を引き寄せる」役者であると筆者は思っている。 役者・安田章大が主演を務める舞台について記事を書くのは本記事で三度目になるが、前回の主演作の『閃光ばなし』に関する記事でも下記のように記述した。 彼は、自分自身の生命を軸として、役を引き寄せて生きる。

          【観劇記録】舞台『少女都市からの呼び声』THEATER MILANO-Za/初日公演 —個人的雑記—

          【観劇記録】新宿梁山泊 『テント版 少女都市からの呼び声』 紫テント/花園神社 —夏、呼び声に誘われて—

          花園神社にて行われるテント芝居は、唐組の紅テント、新宿梁山泊の紫テント、椿組のテントと、3つの劇団によって続けられている。 前回、唐十郎主宰の唐組による『透明人間』を紅テントにて観劇したが、今回は新宿梁山泊の『テント版 少女都市からの呼び声』を観劇すべく、新宿の花園神社へと足を運んだ。 2023年6月。 花園神社は、新宿駅や新宿三丁目駅からほど近い場所にある。熱気渦巻く人混みやその喧騒はすぐそこに蠢いている、はずなのだが、ここは静かでどこかひんやりとしている。 新宿梁

          【観劇記録】新宿梁山泊 『テント版 少女都市からの呼び声』 紫テント/花園神社 —夏、呼び声に誘われて—

          【観劇記録】唐組 第71回公演『透明人間』紅テント/鬼子母神 —はじめての紅テント観劇—

          野外演劇“紅テント”を創始した、劇作家の唐十郎が主宰である、劇団・唐組。 紅テントとは、名の如く赤い色の布地で張られたテントで、そこを劇場として演劇が行われる。 1967年に、唐組の前身である“状況劇場”にて、新宿の花園神社境内にて行われたのが最初だという。紅テント興行は現在に至るまで演劇界で唯一無二の存在感を放っており、アングラ演劇の代名詞にもなっている。日本国内のみならず海外でも公演が行われたこともあるという。 なお、花園神社にて行われるテント芝居は、唐組の紅テント、新

          【観劇記録】唐組 第71回公演『透明人間』紅テント/鬼子母神 —はじめての紅テント観劇—

          【観劇記録】爍綽と vol.1 舞台『デンジャラス・ドア』

          2010年9月に公開された映画作品『名前のない女たち』が、筆者が佐久間麻由氏の芝居を観た最初だったように記憶している。元ヤンキーの企画単体AV女優という役柄だった。黒髪のショートカットに黒いジャケット姿が思い出せる。実際の彼女自身にはヤンキーっぽさはないが、虚勢を張ってでも立ちあがろうともがくようなその役は、意志の強さと脆さが共存し、さらにそのどちらもに吸引力がある彼女の印象と繋がるようにも感じた。 話は変わり、コロナ禍の2020年。ひそやかに、眠るまでの夜の時間に、彼女が

          【観劇記録】爍綽と vol.1 舞台『デンジャラス・ドア』

          舞台『閃光ばなし』が放つもの。役者・安田章大という、生きる疾走感。

          役者・安田章大を、怪物と呼称したことがある。 【舞台『リボルバー〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜』に息衝くもの。役者・安田章大という怪物について。】 こちらの記事で観劇の記録を残した、舞台『リボルバー〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜』が幕を閉じてから約1年。 2022年秋、役者・安田章大が主演を務める舞台が、劇作家・福原充則が手掛ける『閃光ばなし』である。 9月26日、ロームシアター京都で迎えた公演初日。 あの怪物は、どんな眼で、どんな温度で、どんな匂いで、どん

          舞台『閃光ばなし』が放つもの。役者・安田章大という、生きる疾走感。