おとなの読書感想文2

今回は「中高生への推薦図書」です。
司書教諭の資格を持っており、図書委員の先生になるのが夢でした。図書だよりで生徒たちがそれぞれに本を紹介する場面に立ち会いたかった。叶わなかった夢をここで昇華します。教員になって生徒たちに「おすすめの本なんかある?」って聞かれたら紹介したかった本たち。

『カラフル』森絵都

ド定番ですが、これはマストですよ。僕も中3のときに生徒指導の先生に勧められて読みました。中学時代とても学校が嫌いで、保健室や図書室に逃げていたこともありました。成績は良かったし、生徒会もやっていたのですが、問題児でした。自分を押し殺して息をするのも苦しかった。他人の目、普通、常識、空気を読む。そういうのがとにかく苦痛だった。一番は「普通」かな。なんで普通にできないんだ!と言われるたびに、「どうせ普通じゃないよ!うるさい!」と言葉にすらできなくてモノに当たっていた。いつでも始められる、ということに気付けたのはこの本でした。やり直せるって言い方は好きじゃなくて、始めるって言いたい。本当の自分で生きることはいつでも始められて、そして意外と簡単みたいだ。

『ひとりずもう』さくらももこ

漫画版の上下巻で読みました。たまちゃんとのエピソードも好きですが、僕がこの本で一番好きなのは進路の話です。大学進学という意味でなく、ももこが自分の夢に向き合ったこと。そして夢に触れた瞬間。投稿を始めたももこが「今度こそ…」と本屋でりぼんを買って急いで帰宅し、入選者のページを開くとそこには…自分の名前を見つける。その瞬間を漫画を通して立ち会えたとき、鳥肌が立ちます。夢って掴みにいくんだ。なにがきっかけかなんて叶って初めてわかるのかもしれない。漫画版だと読書嫌いの生徒にも読みやすいのでおすすめです。

『僕は勉強ができない』山田詠美

スマートな生き方を知ったら楽に生きられるんじゃないかなと思える生徒におすすめしたい一冊。安易な言葉だと「勉強がすべてじゃない」ってことなんだけど、ちょっとそれは違う。勉強が得意なまま、もっとスマートな思考を手に入れたら最高じゃない?という提案です。秀美くんは父抜きの家庭で育ち、年上の彼女がいる。だから必然的に平均よりも大人びている。担任の先生とも男友達としてセックスの話も平気でしちゃう。理屈とかで頭が凝り固まったときに読むとふっと肩の力が抜けます。1章ずつが短いので隙間時間に読めます。学生も1日1章ずつ読めばそんなに気負わずに読めると思います。

『サラバ!』西加奈子

別記事で紹介済み(『サラバ!』とゲシュタルトの祈り)ですが、これは読む力がある人はできれば高校生~大学生のときに読めると良いです。少しずつ世界が広がるときに不安定な自分に気付きます。そのとき自己の確立ができていれば世界に向かって一歩を踏み出せます。他の本を読んでいても気づきますが、人生の一時期を日本以外で過ごした人は明らかに日本でしか生きたことがない日本人とは違うんですよね。自分から動かないと自分は見つけられない、ということをヒリヒリした実感を伴って知っているというか。僕は本を通してしかわからないけれど、海外で生活するチャンスがない人には読書という手段で世界で生きる体験ができるわけです。ハードカバーは上下巻、文庫は上中下巻となかなかボリューミーですが、引き込まれるので読書慣れしている人は問題なし。

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