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読書レポ| 売上最小化、利益最大化の法則

最近ときどき見聞きする「北の達人コーポレーション」その社長の木下勝寿さんの本。
本を開くまで、北の達人コーポレーションが何の会社かさえ知らなかった。(居酒屋チェーンか?ぐらいに思っていたが、実際はeコマース企業)
ほとんど知られていない会社がなぜこんなにも話題になるのか。
読み終わったいま、「ほとんど知られていない」ことこそ、北の達人コーポレーションの利益の秘訣なのだと知った。

『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』木下勝寿著

企業にとって売上を上げることは使命であり、当然のことだ。
だから、売上を上げるために商品のラインナップを増やし、なるべく多くの人の目に触れるように広告をうつ。
しかし、著書は「利益が絶対の目的であり、売上はそのプロセス」と言い切る。

売上は「お役立ち度」の合計を数値化したもの
利益は自分自身が生み出した付加価値分を数値化したもの

企業は利益に応じて税金を納める。
つまり利益を上げて納税すること自体、社会貢献である。

北の達人コーポレーションでは、徹底的に利益を追求する。

利益をあげ、一定の手元に資金があれば、事業環境の変化によりたとえ売り上げがゼロになったとしても、事業を立て直すための時間(無収入寿命)を稼ぐことができる。

利益を上げる方法は、「商品ごとの5段階利益管理法」により、厳格に仕組み化されている。具体的な方法は、本書をよく読んでほしい。

利益の管理方法を仕組み化することにより、会社が大きくなって社員数が増えても、属人的な判断を排除し、誰でも同じ基準で判断できるようにしているのが特徴だ。

冒頭に述べた「会社名やそこで扱う商品がそれほど広く知られていなくても良い」理由も、利益を目的としているからである。

北の達人コーポレーションでは、広く知られることを目指しておらず、顧客となり得る人に絞り込んで集中的に販促予算をつぎ込む。
また、目立たないプロモーションをしていると、競合が生まれないので永続的に成長できるという狙いもある。

広告効果を見極めるための指標として、上限CPO(顧客一人を獲得するためにかける費用の上限値)を定めている。
ある広告のCPOが上限CPOを超えた場合には広告は打ち切り、逆に上限値よりはるかに少ない場合には、機会ロスの可能性が高いと判断し、広告量を増やす。

このように徹底した利益管理手法により、100億円の売上で、29億円もの利益を生み出すモンスターに企業になった。

さて、「あとがき」におもしろいことが書いてあった。

ある社長に「こんなことやったら面白いですよね」と話すと、次に会ったときはすでに実行している。
社長は忙しいのになぜできるのかと尋ねてみた。「ピッと思ったらパッとやるからだ。ピッと思ったらパッとやる癖をつけていくとキャパシティが増える。(中略)
それを真似したら仕事のキャパシティは4,5倍になった。(中略)
ピッパの法則は社内研修でも行う

5段階利益管理法を自社に当てはめるには、管理会計の方法をよく考えなければならない。
eコマースと介護事業や人材育成事業では、収益の構造や、経費の構成、販促費の効果測定方法など、違いが多い。
しかし、綿密に検討すれば、サービス産業でも5段階利益管理法を使って、利益を生み出す仕組みを作ることは可能だろう。

問題は、それをピッパとやるかどうかだ。


めでたしめでたし

立崎直樹

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