高山チェル

山国生まれの野生の良い子。

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マガジン

  • 闘病生活

    2023年に胃がんがわかりました。

  • ライフワーク

    芝居やイトオテルミーについて。

  • フウフ生活

    夫婦ってなんだろうね、と思う。私は国際結婚です。

  • 海外生活

    2011年から十年ほど、南半球の小さな島に住んでいました。

最近の記事

胃がん、その後

2023年9月末に、ロボット支援手術で胃の2/3をとりました。取った胃は直接見ていないけど、びろんと広げられて、一部刺身のように薄くスライスしたモノクロ写真を術後1か月の検診で見ました。あぁ、私の胃。かつて私の一部だったもの。 私は、胃の真ん中あたりに約5センチのガンがあったので、胃の上の部分は残せたものの、下がまるっと無くなり、直接小腸に繋がっています。胃というのは、私もよく知らなかったんだけど、色々な働きをしていて、食べたものが適量適切に腸に行くように、下には「弁」があ

    • あやうい

      息子は中2。去年の担任は突如「世界一周旅行に行くので!」と宣言して辞めてしまった。息子曰く、今年夏の出発予定らしい。はて、今年の担任は? というわけで、先日懇親会ではじめて今年の担任の先生に会った。30代前半の女性の先生。線が細くて優しそう。 クラスの1/4程度の親が集まった懇親会で、先生が挨拶する。 「私は、このクラスを良いクラスにしたいんです。来年の3月に、生徒と『いいクラスだったね!』って話したくて。また、私だけがそう思うんじゃなくて、他の先生たちにも『いいクラスだ

      • 心にギャルを

        4月に入って、どんどん日が昇るのが早くなっている。家を出る早朝4時半、先月まで真っ暗の中出勤だったのに、今ではもうかなり空が明るい。4月になって、お偉いさんたちは移動したり、移動して来たりしてしばらくピリピリムードだったけど、私たちパートや下っぱ社員さんは相変わらず。増えてもいなければ、減ってもいない。いや、本当は65歳定年で辞めるはずの方々も、上に頼まれて人手不足で仕方なく居残りしてくれている。 一方私は時給が20円アップして、新たな仕事を任され、約2時間、隔離されたよう

        • 醜い人

          この反ルッキズム、多様性の時代に、なんとひどいタイトルだろうか。 しかしそのものスバリ、職場にいる醜い男性のはなし。 彼は背が低く訛りがきつく、目はトロンとしていて、小太り。歯並びの悪い口はいつも締まりなく開いている。年の頃は30代後半といったところか。しかし、20代から50代のどれと言われても「ふぅん」と思う。服は常に生乾きの匂いがして、生にんにくたっぷりのラーメンが好きなのか、しばしば強烈なニンニク臭を漂わせている。花粉症なのか、しばしば強烈なクシャミをする。そのくせマス

        胃がん、その後

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        記事

          ありがとう。

          アートインプログレス、無事終わりました。 告知してしばらく無反応で、一体どうなることやらと不安に思っていましたが、たくさんの方にお越しいただけました。ほっ 時間ちゃんと計っていなかったのですが、多分1時間くらい一人で朗読したんだろうな。前半、ふっと我にかえる瞬間があって、『何やってんだろう』『なんでこんなことしようと思ったんだっけ』などと頭をよぎりましたが、皆さんがあたたかく耳を向けてくださっているのがわかり、安心しました。伝わっている、ってダイレクトにわかるのは、いいな

          ありがとう。

          本の紹介「絶望名言」

          久々に良い本に出会ってしまった。 いや、世界には数多の良い本があるのだけど、ごつんといい感じにハマったというか。 その名を「絶望名言」という。2も出ているようなので、私がただ無知なだけなのだ。 その名の通り絶望そのものを切り取ったような言葉と、NHKラジオ深夜便の人気コーナーを視聴するかのような対話が並び、本は進んでいく。 例えばカフカのこんな言葉。 「無能、あらゆる点で、しかも完璧に。」 あるいは芥川龍之介の言葉。 「どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え

          本の紹介「絶望名言」

          イトオテルミー

          その不思議な名前の療術に出会ったのは、娘を産んだ助産院。検診のたびに助産師さんから足裏にテルミーをかけてもらい、産んだ翌日は、おばあちゃん療術師さんから全身テルミーを掛けてもらい、もうそれが気持ちいいのなんの!それからずっとテルミーに恋焦がれていたけれど、一式買うのが5万円くらいかかったり、外国で暮らしたりで躊躇していた。 それが、一昨年の12月、帰国したし、思いきって会員になることにした。器具の使い方を習うために、十数年ぶりに私より幾つか年下の資格者さんから掛けてもらった

          イトオテルミー

          彼女に学ぶ

          娘が高校を卒業する。海外に住んでいたので、二年間ほどしか在籍していなかったけど、全く勉強していなかった古典や日本史等の勉強もしっかり導いてくれ、第一志望の大学に合格した。本人の努力はあれど、学校には感謝してもしきれない。 というわけで、卒業式後に開催される卒業パーティー運営のボランティアを募っていたので、私も参加している。娘も成り手のいなかった一つの係の責任者となった。今まで日々のラインでなんとなく状況をわかっているつもりだったけれど、先日、初めて親たちと生徒によるミーティ

          Perfect Days

          今年初めて、映画館に行った。いつ行っても空いている映画館で、さて何を観ようか悩んで、やっぱりこれを観ようか。 監督のヴィム・ベンダースは元々好きだ。「パリテキサス」のざらりとした雰囲気。「ベルリン・天使の詩」のセンチメンタル。 なんとなく寝不足で体調もあまり良くなく観に行って、ただただじっと惹き込まれた。映画を観て、元気になる、そんな映画がごくたまにある。普通に生きることへの圧倒的な讃歌。日常の繰り返しの愛おしさ。遠くから見ると平坦な日々も、近づいてみるとなんと彩豊かでみ

          演劇おばさん

          久しぶりに「芝居」というものをしている。 私はもともと演劇少女で、両親に連れられて観たアングラ芝居でトラウマになるも、中学のクラブ活動でステージに立つことにハマり、高校の3年間は寝ても覚めても部活動をしていた。高校三年生の時は、オリジナル脚本も書いて発表した。その、高校の友達が昨年11月「元気ー?脚本書いて」とラインしてきて、速攻「OK」と返した。 当初の話では、彼女と旦那さんの2人芝居の予定が、なぜか気づくと出演者が4人に増えていた。女性3人と旦那さん1人。女性3人は皆

          演劇おばさん

          ハグをする

          昨年、夫が何も言わずに家を出て行って、今後、離婚になるのかな、上の子は高校生で大学行きたがっているしどうしよう、と思って家賃の安いところに越して、収入を増やすべく仕事を変えた。 新しい職場は、郵便局の早朝5時からの仕分けパート。つぶれない安定したところがいいな、と思った。人手不足なところなら、クビにならないかな。長く働けば、正社員になれるかもしれない、とも思った。早朝バイトなら、子供の行事や部活の送迎なども対応できるかな。でも、朝、子供は一人で起きれるのかな、と心配もした。

          ごめん、生きてる

           2023年秋、無事手術を終えそれから3ヶ月が過ぎ、生きてます。  手術前、無性に本が読みたくて、適当に選んだ本3冊の中で、胃がんで亡くなる人、胃がんがわかり怖くなって結局愛人と心中する人、何かのがんで亡くなった人が出てきて、モヤモヤするやらイライラするやら。つまり、それだけがんが馴染み深いんでしょうね。安易に病名書かなくても良いのにな、とも思った。最後まで読み終えた私を、誰か褒めて。  私の病院は、がん専門病院で、自ずと患者さんはがん患者ばかりだ。平日の早朝、外来受付に行

          ごめん、生きてる

          死ぬということ

           高校生の頃、母方の祖母が亡くなった。  我が家は核家族だから、車で片道2時間ほどかかる長野の片田舎に住む祖母の家には、お盆とお正月位しか行かなかった。祖母はパンチパーマのような強いパーマをあてていて、いつも困ったように笑っている人だった。笑うと金歯や銀歯が光る。それが恥ずかしいのか、口の前に手をあてて笑う。幼いわたしが、祖母の家の広い畳の部屋で横たわると、開け放した窓から巨大なオニヤンマやギンヤンマが入ってきて、寝転ぶわたしの上を悠々と通り過ぎた。冷たい水で冷やされたスイ

          死ぬということ

          初めての胃カメラ

           生まれて初めて胃カメラを飲んだ。なぜ飲んだのか今もわからない。ストレスが胃にきやすいタチだけど、その時は特に不調を感じていなかったから。 「まず胃カメラを鼻から通してみて、無理なようなら麻酔をしましょう」と先生に言われたが、苦しいながらも麻酔を使わず、なんとか鼻を通った。初めて自分の体内をカメラを通して見る。ピンクのぐにゃぐにゃ。胃液にカメラが入ると、画面にノイズのようにカラフルなラインが浮かび、おしゃれなPVのようだと思った。検査の終わりかけ、突如先生の手が止まる。「胃

          初めての胃カメラ

          愛について

           愛ってなんだろう。わたしは、夫のことを愛している、と、思う。同時に、憎らしくて憎らしくてたまらない。離婚すればいいじゃん、と何度も考えたし、友人にも言われる。でも、離婚して全て終わりでもない。いや、終わるんだろうか。あんなこと言われた、こんなことされた、あるいは何もしてくれなかった。嫌な思い出の一つ一つも、離婚すれば全て水に流せて、あとはキラキラとした思い出ばかり残るんだろうか。  そんなとき、たまたま仏教での愛の捉え方を知った。仏教で愛は「加虐性のある煩悩」。愛が深まれば

          静かなひと

           わたしたちは日本で出会った。フランス人の夫は出会った頃から静かだった。わたしは、うるさい人より静かな人の方が好きだから、まぁ良いかと思っていた。  自分の意見を言わないのも、思慮深いように見え、『まだ日本語が不自由だからかな』と思っていた。出会った時から、私たちは日本語で会話していた。  結婚して15年以上経った今も変わらず、夫は無口だ。  フランス人同士で話している時、おしゃべりで社交的な義理のお母さんがワーッと捲し立てている時も、彼はただ頷く。聞き役なのが好きなんだと