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冬に咲く花

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冬に咲く花 ep.6

 凍える手を擦り合わせながら、階段を一段一段、登った。廊下の大きめの窓から降り注ぐ陽光が、わずかに癒しを与えてくれる。窓側を歩いて、教室に向かった。
 教室に辿り着くと、同じクラスの人たちがあちこちに数人の集団を作って、他愛のない話に興じていた。その光景は、事件以前のそれ、そのものだった。
 圭佑が逮捕されて、二週間が経った。学校は、被害者と加害者が校内の生徒だということで色めき立ったが、それもす

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冬に咲く花 ep.5

冬に咲く花 ep.5

 その日も無味乾燥の一日を終え、裕里と学校からの帰り道を歩いた。最近、一緒に帰ることにしている。圭佑には悪いが(もしかしたら、二本君にも悪いが)、優先順位が裕里の方が圧倒的に上だ。今は、彼女の観察を怠ると、心配でたまらない。鏡に映る自分を叩き割るように、自分で自分を壊しかねない。
 私は、あくせくしている。
 そのくせ、何の成果もあがらない。
 いつも通り、表面上は何もないように話して、分かれ道で

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冬に咲く花 ep.4

     三章

 私は小さい頃から、落ち着いた子だったらしい。泣くことが少なくて、手のつかない子どもだった。かといって、いつもかわいく笑っていたわけではなかった。
 笑顔を手に入れたのは、小学校に入ってからだった。一緒に過ごす周りの人たちが奇妙な仮面を被ったように笑っているのを見て、私は彼らに同情した。かわいそうに、上手く生きるのには、あんな徒労を犯さなければならないことを知っているのだ。
 私

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冬に咲く花 ep.3

     二章

 私ほど現実をしっかりと見据えられている人は、他にいないのではないだろうか。少なくとも、この学校には。
 私は小さい頃、人に期待するのをやめた。この世に、本当に心が真っ白な人はいない。表向きでそう見える人も、裏が絶対にあるものだから。
 だから、私は誰も信用しない。適度な距離で上手に付き合って、誰の内面にも踏み込まず、かと言って、突き放さず、いわゆる「スクールライフ」を満喫してい

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冬に咲く花 ep.2

冬に咲く花 ep.2

 のんびり帰り支度をしていたら、二本君と稲田君が「明日の早朝に」と告げて、二人で帰っていった。
 顔を上げてドアの方を見ると、私を待っている雪絵がどこかを指差していた。少し離れた所で、淡路君と亜実が話していた。二人だけの世界に入っているようで、表情に周りを気にする色がなかった。声は潜めていて、話している内容は全く聞き取れなかった。
 私は急いで雪絵のもとに行って、二人に黙ってその場を後にした。
 

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冬に咲く花 ep.1

冬に咲く花 ep.1

     一章

 人は変わる。
 しばらく会わなかった友人を偶然、街で見かけたとき、別人のように見えた。注意して見なければ、あれが友人だと判別できなかったぐらいに。
 親戚もそうだ。私には五つ下の従兄弟がいる。最初は喋れない赤ちゃんだったのが、数年ごとに会う度に当然、背が伸びて、喋れるようになって、彼自身が持つ性質を現し始める。
 時間の経過とともに、人はそれまで認識していたその人自身の姿かたち

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