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ローマ法王の休日

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2011年のイタリア/フランス映画。バチカンを舞台に、思いがけず次期「ローマ法王」* として選ばれてしまった無名の聖職者が、プレッシャーに耐え切れずローマの街へ逃亡を図る姿を描いた、ほのぼのと人間味あふれるコメディ・ドラマ作品です。原題 "Habemus Papam"。(英題 "We Have a Pope")

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監督は、『親愛なる日記』(1994年)でカンヌ国際映画祭・監督賞、『息子の部屋』(2001年)でパルム・ドールを受賞し、“イタリアのウディ・アレン” とも呼ばれる名匠、ナンニ・モレッティ

マメ知識: カトリック教会について

まずは、ちょっとしたマメ知識を♩

わたしは中高時代、キリスト教系(プロテスタント)の私学に通っていたので、聖書や讃美歌、礼拝などにもわりと親しんできたほうだと思います。

本作は、キリスト教に馴染みがない方でもコメディとして充分笑える作品ですが、次のことを知っていた方がより楽しめるかもしれません。

〇「カトリック」と「プロテスタント」

仏教で言うところの “宗派” のように、キリスト教にも、ざっくり大きく分けて「カトリック」と「プロテスタント」の二つがあります。

具体的な違いは、こちらのページがわかりやすいので、興味のある方はどうぞ♩
▼ ローマ・カトリックとプロテスタントの四つの違い

すご~く雑に説明するなら、カトリックの方がより「厳格」「歴史が長い」「儀式が多い」「華やか」「熱狂的な信者が多い」などの特徴があります。

「法王」から「教皇」へ

世界中のカトリック教会の最高指導者が「ローマ教皇」。
本作の邦題が『ローマ法王の休日』とあるように、これまで日本のマスコミなどでは「ローマ法王」という呼び方が一般的でした。
その後、実際のカトリック教会での呼称に合わせる方向で、2019年11月以降、日本政府やマスコミ等でも「教皇」と呼称が改められました。

(もちろん この邦題は、オードリー・ヘプバーン主演、あの『ローマの休日』と掛けているんですよね!)

コンクラーベ

ローマ教皇の逝去などに伴って行われる、次の教皇を決めるための選挙
何世紀にもわたるカトリック教会の歴史の中で、細かな手順による厳格な選出方法が出来上がりました。
コンクラーベ中の選挙状況は完全部外秘なため、バチカンのシスティーナ礼拝堂では、煙突から上がる煙の色で状況を外部に知らせる――という慣習が有名ですね。
本作でも、世界中から集まった枢機卿たちによって行われるコンクラーベの様子がコミカルに描かれています。

枢機卿(すうききょう)

カトリック教会において、教皇の次に位の高い聖職者。
世界中に数百名いて、緋色の礼服を着用します。それぞれが自国の教会で聖職者としてキャリアを積んだ方々なので、だいたいおじいちゃん。笑
コンクラーベでは、この枢機卿たちの中から次の教皇が選ばれます。

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カーディナル・レッド」という色の名前は、この枢機卿(Cardinal)の緋色の衣に由来しているのだとか。知らなかった!

海外版のヴィジュアルが素敵!

日本版のポスターなどでは、このカーディナル・レッドを基調としたヴィジュアル・デザイン(本記事の目次上部に掲載してある画像)をよく目にしますが、海外版と思われる別バージョンのヴィジュアルがとっても素敵なんです!

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こちらは、枢機卿の礼服を後ろ姿で捉えたもの。繊細なレースのディテールや、タッセルの美しさが際立ちますね♡

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こちらは、ミケランジェロの『アダムの創造』と主人公の横顔を組み合わせたデザイン。

『アダムの創造』は、ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井に描いたフレスコ画のひとつなのです! 

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本物の天井画では、左側にアダムが描かれています。
(右側は、最初の人類であるアダムに命を吹き込もうとしている神)

この “ひと捻り” が映画の内容ともリンクしていて、洒落ています~!

欧米の映画を観る時、キリスト教に関する知識が教養として少しでもあると、より深く作品を楽しめる気がします。(学生時代にそういう環境にいられて、ラッキーだったなぁ♩……と、今あらためて思います)

おじいちゃんを愛でる映画♡

さて、いつものごとく、前置きが長くなってしまいました。笑

本作の物語は、ローマ教皇が逝去するところから始まります。カトリック教会のしきたりに従い、バチカンのシスティーナ礼拝堂では、次の教皇を決めるための選挙「コンクラーベ」が始まります。

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世界中から集まった枢機卿たち。おじいちゃんがいっぱい♡笑

カトリック教会の信者は、世界で十数億人。その最高峰に立つ指導者がローマ教皇。そのとてつもない立場の重大さゆえ、次期教皇の有力候補と言われる3名の枢機卿をはじめ、集った聖職者たちが一心に祈るのは――

主よ、どうか私ではありませんように……」

ここからして、人間味たっぷりで面白いですよね。笑

・・・

なかなか満場一致では決まらず、二回、三回と投票を重ねるうち、ひとりの無名の枢機卿がダークホースとして挙がってきます。

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それがこちらの方、メルヴィル(ミシェル・ピッコリ)。真面目で、気が弱くて、信心深い、可愛いおじいちゃんです♩

ようやく新しい教皇様が決定して、祝福ムードの他のおじいちゃん(枢機卿)たち。

礼拝堂周辺に集まった熱心な信徒や、ニュースを見守る世界中の信者たちも、固唾を飲んで新教皇の発表を待っています。

いざ、大群衆を前に、就任挨拶のスピーチに臨もうとした直前――

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あら? メルヴィルの様子が……

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教皇なんて無理ぃぃー!!
できましぇーーーーん!!!

パニックに陥るメルヴィル。急遽、新教皇の発表は延期に。

・・・

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もともと真面目で誠実な人柄なので「教皇になることが神のご意思ならば、なんとかその務めを果たしたい――」という気持ちはあるものの、重圧から抑うつ状態になってしまうメルヴィル。

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精神科医の診察を受けますが、状況は改善せず。
この精神科医を、監督のナンニ・モレッティ自身が俳優として演じています。このあたりが “イタリアのウディ・アレン” と言われる所以でしょうか。

・・・

困り果てた教会の報道官たちは、「教皇の素性を知らないセラピストに診察してもらった方が良い」という精神科医のアドバイスに従い、ローマ市内の別のセラピストの診察を受けさせるため、メルヴィルを極秘裏にバチカンから連れ出すことに。

この後、メルヴィルはローマの街で逃走。笑

文字通り、ローマ法王の “休日” が始まるのですが、聖職者としての真面目さや誠実さも垣間見えながら、弱さや個人の願望を持ったひとりの人間として、揺れながら、苦悩しながら、みずからを振り返ります。

そんな純粋なメルヴィルの姿が、なんとも可愛い

また、教皇様が失踪してしまい、ただ帰りを “待つ” ことしかできない状況の中、することがなくなってしまったおじいちゃん(枢機卿)たちがキャッキャとバレーボールに興じるシーンも、ほのぼのとして平和で可愛い♩

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聖職者でいらっしゃるので、みなさん、清らかで良い人たちなのです。それがもう、可愛い!♡笑

・・・

果たして、メルヴィルは無事「ローマ法王」になれるのか?
結末は、ぜひ本編をご覧になってみてくださいね♩


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