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生活者と"支持者"の闘い

参院選が終わった。

20年前のぼくがこれを見たら、自分が政治の話というか選挙の話をこんなに書いているのを見て、驚くかもしれない。

興味がなかったわけではない。ぼくには90年代に社会党(のちの社民党)から衆議院議員になった伯父がいるし、父は公務員で、だから逆に政治とか行政とかというものに対して、距離をとろうとする妙な癖があった。過去形で書いたが、じつは現在でもどうか、と(自分に対して)思うところがある。

山下達郎と竹内まりや夫妻にはひとり娘がいて、でも音楽をやろうという気はサッパリなかったような話を聞いたことがある。その娘の心境に近いか、どうか(ただの思いつきです)。

今回の参院選、マスコミからは政府与党の勝利みたいな報道も流れてくるが、現実には、与党は選挙前よりも議席を減らし、野党は増やした。一人区でも野党統一候補がけっこう勝っていて、派手に入れ替わったわけではないが、まともな目をもったジャーナリストなら「変化は起きた」と見るだろう。

一番ショックなのは、やっぱり、投票率である。

まだ本当に困ってない…というより、困ったことになっていることに気づいていない人がこんなにもいる。

いや、どんな理由で投票にゆかなかったかには、いろいろあるだろう。知りたい。と思う。行政はもちろんある程度の調査を行いますよね。何も考えてない? それでは行政の存在意義がまた薄れる。

これだけ投票率が低くて、野党はよく頑張ったなぁ、という感想も浮かんでくる。安倍政権とテレビ局は必死で投票率を下げた。しかし、それでも結果はこうだった。という感じの冷めた目でぼくは見ている。

投票日の夜まで、テレビの地上波では殆ど取り上げられなかった「れいわ新選組」の山本太郎が開票速報でテレビに出る前、ウェブの中継で、「当選確実が出ても、バンザイはしませんから」と言って、「みなさん、終電の時間を気にしていてください」と話すのを、聞いていた。

彼はそんな感じで、変えようと思えばすぐに変えられることを変える人だ。すばらしいと思った。ぼくは「◯◯が社会を変える」といった言い方が好きではないが、そういうことをわれわれみんなが日々ちょこちょことやっていれば、たしかに「社会は変わる」だろうと思った。

ぼくは山本太郎が10年前にはTVタレントだったということを、もう、うまく思い出せなくなっている(TV、あまり見ないし、好きじゃないからというのもあるか)。それくらい今回の「れいわ新選組」の仕事は、画期的なことだ。

彼は今回の参院選で最高の得票数を得たにもかかわらず、「れいわ新選組」の候補者であるふたり(ALSの患者と脳性まひの患者でもあるふたり)を当選させて自分は落ちた。そして新生政党の党首になった。

昭和の歴史に、彼のやったことに並ぶ仕事をした政治家がいるだろうか。明治維新くらいまでゆけばいるだろうが…

自分の選挙区で、この人しかいない、と思っていたあさか由香さんは、落ちた。

まっすぐに「生活再建」を訴えた彼女は、神奈川で「江戸城再建」を訴え「カジノ推進」でもある元・知事の候補にまたしても破れた。

ただ、いまぼくは、「神奈川県内の有権者の気持ちがわからない…」と思っているわけではない。

どうしてこんなにたくさんの人が投票にゆかないのか? という疑問と、あと、組織票とはどうしてこんなに上手に機能するんだろう? という疑問に、いま、なんだかポカポカと包まれている。

神奈川では、私たち生活者の切実な思いは、今回も自民党支持者たちにいいように押さえ込まれた、という想像をしている。切実な思いを、切実さをもって聞いてもらえたら、はっきり言ってぼくはどこの政党でも構わない。しかし、現実はそういうふうではない。

自民党支持者も生活者ではないかという意見があれば、では、組織票とはなにか? と返したい。ぼくは自民党に入れた有権者の全員を自民党支持者とは思っていない(何となく投票した人もいるだろう、それはどの党だって一緒だ)。それに──自民党支持者の全員が自民党議員に投票するわけではないのである。

そういうことに、どうやれば抗えるか、と考える。その時、ぼくの頭に浮かぶのは、枝野幸男のような政治家ではない、志位和夫のような政治家でもない、それはどうしても、山本太郎のような政治家の顔だった。

(つづく)

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